裸芸人も脱毛が当たり前、汚らしいと笑えない時代に 小島よしお、令和ロマンらお笑い芸人の美容意識が向上
「脱毛したりしたんで」「結構、(毛が)ボーボーだったんですけど。めっちゃ生えてました。子どもが似顔絵で足に毛を描くくらい」
1月21日放送のドキュメンタリー番組『情熱大陸』(TBS系)で密着を受けたピン芸人、小島よしおはカメラの前でお馴染みの海パン一丁姿になり、ツルツルになった肌を見せた。清潔感を意識して全身脱毛したそうで、およそ40万円の施術費をかけたという。
小島よしおは2017年9月1日放送の『スッキリ!!』(日本テレビ系)へ出演した際にも、子ども向けにネタを披露することが増えたため、その配慮として永久脱毛をしていると明かしていた。
あえて汚らしく見せて笑わせる時代から、汚らしいと笑えない時代に
かつてのお笑い芸人は、笑われるためにあえて「手入れ」がされていない体をさらけだす風潮があった。分かりやすいのは、たるんだ体を披露することではないか。ムダ毛がたくさん生えた体もその“一環”。腕、足、胸、腹などにワサッと生えた毛を見せれば、周囲から「モジャモジャやんけ!」みたいなツッコミを入れてもらいやすい。その毛を見て顔をしかめる共演者のリアクションでも、笑いがひとつ生まれる。そういった“ムダ毛笑い”のためもあってか、未処理の芸人は少なくなかった(もちろん単純に脱毛への意識が働いていなかったこともあるだろうが)。
2021年4月3日掲載のWEBメディア『週プレNEWS』のハリウッドザコシショウ、とにかく明るい安村、アキラ100%の裸芸人3名による対談記事のなかでも、アキラ100%が医療脱毛をしていることを話すと、とにかく明るい安村が「え!」と驚きの声をあげ、ハリウッドザコシショウも「自分でそればええやん」とコメントするなど、裸芸人のなかでも脱毛がまだそれほど浸透していなかった様子がうかがえた。ちなみにアキラ100%は医療脱毛だけではなく、体型についても「なんとなく自分的にきれいなほうがいいなと……」と取材前に腕立て伏せをして少しでも見栄えが良くなるよう努めたという。
ただ現在は「まつ毛より下の毛は不要」とまで言われる時代。性別、年齢、職業など関係なく脱毛がエチケット化しつつある。そういった時代の流れはお笑い芸人にも当てはまるようになった。かつては笑われるためにあえて自分を汚らしく見せることもあったが、今は汚らしいと笑えない時代がやってきたのだ。
『情熱大陸』小島よしおの出演回の“ウラ”『ガキ使』でも裸芸が続出していたが……
2022年9月1日放送『アメトーーク!』(テレビ朝日系)では「脱毛しました芸人」が特集され、高橋茂雄(サバンナ)、川島明(麒麟)、山崎弘也(アンタッチャブル)、柴田英嗣(アンタッチャブル)、小木博明(おぎやはぎ)、吉村崇(平成ノブシコブシ)が出演。脱毛のメリットなどについてトークした。脱毛芸人は「女性が男性の短パンを嫌がる理由は、足から出ている毛への嫌悪感である」といった持論を展開し、ファッション面などさまざまな点でプラス材料が多いことを強調した。
『情熱大陸』の小島よしお出演回に映り込んでいたレイザーラモンHG(レイザーラモン)も脱毛経験者だ。脱毛サロンなどを運営する福田麻理さんが2015年7月17日に投稿したInstagramには、施術後とみられるレイザーラモンHGの写真が掲載され、「メンズも脱毛する時代」とのコメントが添えられていた。レイザーラモンHG自身も2018年3月27日に投稿したInstagramの写真のなかで、「スムーズスキン」などのハッシュタグを付けてその肉体を誇示。早い段階から「見られ方」を意識していたことがうかがえる。
『情熱大陸』の同放送回でエレベーターに同乗した小島よしおに声をかけていたハリウッドザコシショウも、前述の裸芸人の対談時から変化があったように思える。かつてのハリウッドザコシショウは腹の毛がはっきり確認できたが、近年の出演番組を鑑賞するとそれが気にならないようになっていた。今やテレビ番組などで見ない日はないほど“露出”が多いハリウッドザコシショウだけに、なんらかの手入れをしたと思われる。
一方、『情熱大陸』の小島よしおの出演回と同日同時間帯に放送されていた『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)では、前週に引き続いて「ハイテンション・ザ・紅白対抗戦!」と題され、芸人たちがハイテンション芸で競う企画がおこなわれていた。出演した男性芸人は肌を過度に露出する芸ばかりだったが、パッと見て、手足、腹、胸にムダ毛が目立つ者はいなかった。
田中直樹(ココリコ)は少量のわきの毛が目視できたが、相方の遠藤章造は2023年6月4日に自身のYouTubeチャンネルで「【初体験】ココリコ遠藤人生初の脱毛に挑戦」という企画を投稿しているように、ツルツルの身体だった。同じくハイテンション芸を披露した空気階段の鈴木もぐらも、美容系のCMにコンビで出演していることもあってか、ムダ毛が気になることはなかった。ある意味、ヨゴレ芸的なものが多かった同回。しかし、各芸人のムダ毛への気配りが感じられた。これは一昔前では考えられないことだったのではないか。
世界進出のとにかく明るい安村、『M-1』優勝の令和ロマンらも美容意識向上が笑いに結びついた?
ほかにも千鳥のノブ、大悟も脱毛をしていることを明かしている。その上で以前、ノブは自分のわき毛の多さをネタにする「大わき毛」の持ちギャグのために同部位だけは未処理だと語っていた。千原ジュニア(千原兄弟)は、小峠英二(バイきんぐ)の影響で、2024年は全身脱毛をすると宣言していた。千原ジュニアは「我々の年齢になると老後のエチケットになってくる。介護していただいたりして」と今後の生き方を考えてのことだと話す。オズワルドの畠中はお尻以外の部位を自宅で脱毛していると発表している。
アキラ100%の「医療脱毛」の話を聞いて驚きの声をあげていた、とにかく明るい安村もムダ毛は目立たない。『ブリテンズ・ゴッド・タレント』などで好結果を出すなど、海外でもその裸芸がウケているとにかく明るい安村。2020年の「海外男性に関する脱毛レポート」(株式会社ヴィエリス)によると、2018年の時点でイギリスの男性の46パーセントが脱毛をしているそうで、わき脱毛は42パーセント、胸毛脱毛は30パーセントだと伝えられた。アメリカでも、男性のアンダーヘアの処理は以前から特に根付いている。とにかく明るい安村の裸芸が嫌悪感を持たれず受け入れられた要因のひとつには、ムダ毛が見当たらない“清潔感”もあるのではないだろうか。
『M-1グランプリ2023』で優勝した令和ロマンは、髙比良くるまが自分の見られ方を研究した上でヒアルロン酸を注入するなど美容整形をし、眉アートを施したことも話題に。脱毛に関しても、YouTubeチャンネル『売れたら垢抜けるってホント?』で脱毛企画に取り組んでいる。
現在のお笑い界は、笑わせるためにビジュアル面で不快感を持たせないことが必要とされる傾向になっている。美しくなるために努力をしたり、清潔感を身につけたりすることに積極的だ。裸芸のように好き嫌いがはっきり分かれるジャンルでは特に、そういった気遣いはマストになるのではないだろうか。