アンネ・フランクと日記の中のキティを描いた創作アニメ映画「Where is Anne Frank?」
第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスの標的となり迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版し、現在でも世界中で多くの人に読まれている。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われることが多く、小学生の必読書にもなっている。
そしてアンネ・フランクの生涯は「アンネの日記」を基にした映画、ドラマ、演劇、アニメ、マンガなどで世界中で作品の題材として取り上げられ、演じられている。アンネの生涯を忠実に描いたノンフィクションである。
そして2021年7月からフランスのカンヌ映画祭でアンネ・フランクの話をもとにした創作アニメ映画「Where is Anne Frank?」が公開されている。日本での公開は未定。イスラエルの映画監督でホロコーストを生き延びた両親を持つアリ・フォルマン氏が監督を務めている。フォルマン監督は2008年に公開された「戦場でワルツを(Waltz with Bachir)」も制作していた。
「Where is Anne Frank?」では、アンネが迫害されていたホロコーストの時代と、「アンネの日記」に登場して、アンネが日記の中で語りかけている架空の人物のキティが出てきて、それぞれの物語が繰り広げられる創作アニメ映画。アンネの生涯を基にしたノンフィクションの部分と完全に創作のフィクションが入り混じっている。
フォルマン監督はアンネ・フランク財団にこの映画の制作を当初持ちかけたところ、拒否されたが、教育用としても若い人たちにも見てもらいたい、「アンネの日記」を読んだことがない人にもアンネ・フランクの存在を知ってもらいたいという意向を伝えたところ、アンネ・フランク財団からも承認された。
戦後75年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。デジタル化された証言や動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても活用されている。ホロコースト映画をクラスで視聴して議論やディベートなどを行ったり、レポートを書いている。
「Where is Anne Frank?」はフィクションだが、当時のアンネやユダヤ人の置かれた立場も描かれており、ホロコーストの時代の様子や、その時期を過ごしたユダヤ人の少女の心境を垣間見ることができる。
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