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山田哲人だけじゃない! MLBで6年ぶりのトリプル3達成が確実に

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLBで6年ぶりにトリプル3達成確実なムーキー・ベッツ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 NPBではヤクルトの山田哲人選手が2年ぶり自身3度目のトリプル3達成が確実になってきたが、MLBでも6年ぶりに大記録達成確実な選手が登場した。レッドソックスの切り込み隊長、ムーキー・ベッツ選手だ。

 ベッツ選手は現地26日に行われたオリオールズとのダブルヘッダー第1試合に「1番・中堅」で出場し、2回に迎えた第2打席で四球を選ぶとすぐさま二盗に成功。今シーズンの盗塁数を30に乗せた。すでに本塁打数は32に到達し、打率に至ってはこの試合で2打数2安打と.346まで伸ばしア・リーグの首位打者を独走しており、トリプル3達成を確実にしている。

 MLBでのトリプル3達成は2012年シーズンにマイク・トラウト選手とライアン・ブラウン選手が達成して以来、実に6年ぶりの快挙だ。レッドソックスとしても2011年にジャコビー・エルズブリー選手(現ヤンキース)以来、史上2人目の達成者となった。

 今シーズンのベッツ選手は、レッドソックスが106年ぶりにチームの年間勝利数を塗り替えるほどの快進撃を続けた中心的存在であり、各選手の勝利への貢献度を数値化した「WAR(Win Above Replacement)」でも現在両リーグ通じてトップにランクしており、ア・リーグMVPの最有力候補といわれている。

 ところでトリプル3というのはあくまで日本的な捉え方で、実はMLBではあまり親しまれていない。米国では本塁打と盗塁の2つに注目し、「30-30 Club」として称して長打と俊足を兼ね備えた選手として称えるのが一般的だ。MLB公式サイトにも、過去の達成者の全リストを掲載しているほどだ。

 このリストをチェックしてみると、山田選手に期待されていたNPB初の「3割&40本塁打&40盗塁」を達成している選手がすでにMLBには存在しているということだ。しかも3人もだ。

 達成順に紹介していくと、1988年のホゼ・カンセコ選手(.307&42本塁打&40盗塁)、1996年のバリー・ボンズ選手(.308&42本塁打&40盗塁)、1998年のアレックス・ロドリゲス選手(.310&42本塁打&48盗塁)──の3選手。2006年に元広島のアルフォンゾ・ソリアーノ選手が46本塁打、41盗塁を記録しているのだが、残念ながら打率が.277に留まっており仲間入りすることができなかった。

 ちなみにMLBで「30-30 Club」の最多達成者は、ボンズ選手の5回(1990年、1992年、1995年、1996年、1997年)。トリプル3としても計3度達成している。ただ注目されるのは、1993年、1995年が打率3割、30本塁打はクリアしているものの、いずれも盗塁数が29で未達成に終わっているシーズンがあるということだ。全盛期のボンズ選手がどれほど凄かったのかが理解できる。

 ボンズ選手に関しての凄さはそれだけではない。実は父のボビー・ボンズ選手も「30-30 Club」を4度達成しているのだ。もちろん息子に続く史上2位の達成回数だ。ただ父の場合はいずれも打率が3割に到達しておらず、トリプル3達成には至っていない。それでもMLB界ではとんでもない親子だったことだけは間違いだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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