「ゴジラ-1.0」「PERFECT DAYS」関係者、明日のオスカーにかける思いを語る
アカデミー賞授賞式が、24時間以内に迫った。今年、日本からノミネートされたのは、「ゴジラ-1.0」、「PERFECT DAYS」、「君たちはどう生きるか」の3本。明日の授賞式に出席する「ゴジラ-1.0」と「PERFECT DAYS」の関係者が、ロサンゼルスで会見を行った。
「ゴジラ-1.0」は、視覚効果部門に候補入り。日本映画がこの部門にノミネートされるのは、史上初めてのことだ。山﨑貴監督が「前日となった今は、(自分たちに)やれることは何もなく、完全にまな板の上の鯉の状態。明日は楽しんできたいと思います」と語ると、VFXディレクターの渋谷紀世子氏も、「投票も済んでしまっていて、どうしようもないので、ただ楽しみたいです」と同意する。3DCGディレクターの高橋正紀氏は「去年は(アカデミー賞に)応募することすら気にしていなかったので、実感が湧かないですけど」、エフェクトアーティスト/コンポジターの野島達司氏は「僕はすべてのことが初めてで、楽しむのにも頑張らないといけない感じ」と、同様に華やかなイベントを純粋に楽しみたいとの気持ちを語った。
有名なアワードエキスパートには、「ゴジラ-1.0」の受賞を予測する人も少なくない。その事実を指摘されると、山﨑監督は「(そういった予測は)これまでどれくらい当たっているんですかね?わからないですよね。ただ、期待しても良いんだなという状況にはなってきている。逆に、明日、取れなかったらショックがでかいじゃないですか。ですので、できるだけ浮かれないようにしています」と笑った。
ほかの授賞式やオスカー候補者を集めたランチ会など、この映画で多くのイベントに参加してきた山﨑監督にとって一番の思い出は、スティーブン・スピルバーグに会い、作品を褒めてもらって、監督が持っていたゴジラのフィギュアを欲しいと言われたこと。「(フィギュアをあげたら)すごく嬉しそうで。スピルバーグの中にまだ子供のような気持ちが残っているのも、すごく嬉しかったです。この人、こういう感じの人なんだなと、そこもひっくるめて。極端なことを言うと、オスカーにノミネートされたことよりも嬉しい瞬間でした」。
国際長編映画部門に候補入りした「PERFECT DAYS」からは、ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司氏、柄本時生氏、麻生祐未氏が授賞式に出席する。ヴェンダース監督にとっては4度目のノミネーションとなるが、日本を舞台に、日本語で撮影したこの映画で高い評価を受けたことには、特別な思いがあるようだ。
「私はドイツのパスポートを持っていますけれども、日本の文化、映画には親しみを感じてきました。小津安二郎は私にとって先生のような存在ですし、この映画で日本アカデミー賞(監督賞)をいただけたことも、とても光栄に思っています。明日、もし何かが起きるとしたら、それはいわばケーキの上のクリーム(icing on a cake:すでに美味しいものの中でとくに美味しい部分という意味)、ボーナスのようなものです」(ヴェンダース監督)。
俳優陣にとっては、今回が初のオスカー体験となる。「これまでテレビで見ていたアカデミー賞授賞式、レッドカーペットに自分が行くというのは、なかなか想像しにくくて、ちょっと緊張しています」と言う役所氏は、「でも、カンヌ映画祭(でのプレミア)で始まった(ヴェンダース)監督との長い旅が明日で最後かなと思うと、少し寂しいですね。やっぱり最後、あの、なんて言いましたっけ、ケーキでしたっけ?美味しく食べたいな」と、ヴェンダース監督の言葉を引用しつつ、受賞への期待も滲ませた。
ヴェンダース監督や麻生氏も、その思いは同じだ。
「アメリカ人は、アカデミー賞をレースと呼びます。明日、私たちは、私たちの馬に競争力があるのかどうかを見ることになります。私たちはフロントランナーではありません。ほかの馬に賭ける人はずっと多いです。ですが、私たちの馬は、とても良い馬だと思っています。私はこの馬が好きです。もし勝たなかったとしても、私はこの馬をもっと好きになるでしょう」(ヴェンダース監督)。
「私はこの映画を何度も見たのですけれど、本当に素晴らしい映画だと思います。人とのつながりだったり、足るを知るという文化だったり、それは本当に世界的に、普遍的に受け入れられるものだと思います。もっともっとたくさんの人に見ていただきたい気持ちもあるので、ぜひ、その素晴らしい瞬間が起きると良いなと思っています」(麻生氏)。
授賞式は西海岸時間10日午後4時、日本時間11日午前8時より。