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5月16日以降大量失点試合が6割!エンジェルスは投手陣の崩壊を立て直すことができるのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
大谷翔平選手が先発陣を立て直す大黒柱になる?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【大谷選手の不敗神話が崩れ今季初の5連敗】

 5月後半からエンジェルスの勢いに陰りが見え始めている。それを象徴する試合だったのが、現地時間の5月29日に行われたブルージェイズ戦だった。

 まず予想外だったのが、先発を務めたパトリック・サンドバル投手の乱調だった。それまで防御率1.79と先発陣で最も安定感を発揮していたにもかかわらず、この日はブルージェイズ打線につかまり、5安打6失点されわずか3回で降板してしまった。

 それでも打線が奮起し、大谷翔平選手の2打席連続本塁打などですぐに追いつき、そのまま逆転に成功。試合の流れは明らかにエンジェルスに傾いていた。

 ところがサンドバル投手を引き継いだ中継ぎ陣も安定感を欠き、結局7回、8回で5失点を許してしまい逆転負けしている。

 この結果、この試合の前まで大谷選手が本塁打を放った試合は7戦全勝を誇っていた不敗神話が瓦解するとともに、今シーズン最長の5連敗を喫することになった。

【5月16日以降は5失点以上の試合が6割】

 5月16日に本欄で、アストルズと地区首位争いを演じているエンジェルスの好調の裏には、マイク・トラウト選手とアンソニー・レンドン選手が完全復帰した打線が好調であるのと同時に、若手投手の台頭で先発投手陣がMLBトップクラスの投球を続けることを指摘する記事を公開している。

 打線に関しては、今もある程度好調を維持し続けている。5月29日終了時点で今シーズンの得点数は235でMLB4位にランクし、1試合当たりの平均得点は4.79を誇っている。

 つまり理論上は、投手陣が5点未満に抑える試合を増やせば、それだけエンジェルスが勝つ確率が増すということになる。

 実は、この指摘は決して的外れではない。エンジェルスの負けが混み始めてきた5月16日以降(12試合で3勝9敗)だけを見ると、12試合中7試合で5失点以上を記録している、その割合は58.3%と6割近くになる。

 一方、5月15日までの37試合で見てみると、5失点以上を記録している試合は11試合に止まり、その割合は29.7%と3割だった。つまり5月16日以降はほぼ倍増しているのだ。

【先発陣より深刻そうな昨オフに補強したはずの中継ぎ陣】

 それを裏づけるかのように、前述の記事を公開した時の先発投手陣の防御率は2.97でMLB4位につけていたが、現在は3.44まで上がり同8位までダウンしている。

 先発投手陣より深刻なのが、中継ぎ投手陣だ。同じく記事公開時の防御率は3.45で同12位だったのに対し、現在は4.02で同20位まで落ち込んでいる。

 先発、中継ぎともに成績が落ち始めているのだから、もちろん全体の防御率も3.68に上がり、同11位になっている。これでは5失点未満の試合を作りにくくなったとしても仕方がないところだろう。

【カギを握るのは大谷選手をはじめとする先発陣?】

 これまで長年低迷を続けてきたエンジェルスが抱える最大の課題として、投手陣の整備が指摘されてきた。過去5年間のチーム防御率を見ても、4.20でMLB12位だった2017年をピークに、それ以降は4.15(同19位)→5.12(同25位)→5.09(同25位)→4.69(同22位)と低水準で推移している。

 エンジェルスが引き続き地区首位争いを続けるには、どうしても投手陣の奮起が必要になってくる。中でも先発投手陣の中で、大黒柱的存在が登場するかがカギを握ることになりそうだ。

 最低でも1人ないし2人の先発投手が好不調にかかわらず最低でも6イニング前後を投げてくれるサイクルが確立しないと、調子が落ちている中継ぎ投手陣を毎試合のようにフル回転させなくてはならない。そうなれば現在の悪循環から抜け出せなくなってしまうわけだ。

 果たしてこの窮地を救っている救世主は誰なのだろうか。それともこのまま以前のエンジェルスに戻ってしまうのか。チームにとって重要な局面を迎えている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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