「マンバ」から8つのアドバイス
悲しみに暮れるニューヨーク
世界中が悲しみにくれたコービー・ブライアント氏の飛行機事故死から一夜明け、悲しみは癒えるどころか、お店に並ぶ新聞の1面にずらりと並んだ優しい笑顔の写真を見ると、スーパースターがいない現実がさらに重くのしかかる。
1月27日付の「ニューヨーク・タイムズ」「ニューヨーク・ポスト」「デイリー・ニュース」は1面でブライアント氏の事故死を掲載。「ニューヨーク・ポスト」紙は、父とともに命を落とした娘ジアーナさんがバスケットボールをプレーする写真を載せ、みんなに愛され、WNBAでプレーすることを夢見た13歳を追悼している。
2人の尊い命を奪った事故は、ブライアント氏が立ち上げた「マンバ・スポーツ・アカデミー」でのバスケットボールの試合に向かう途中で起きた。ブライアント氏は引退後はジュニア育成にも力を入れており、「スポーツペアレンツ へのアドバイス」を語っている。
アメリカジュニアスポーツの弊害
ジュニアスポーツが盛んなイメージのあるアメリカだが、弊害もある。
アメリカの大学入試では、勉強だけでなくスポーツやボランティア活動などの「実績」も求められるだけに、小さい頃から1つのスポーツに専念させて結果を出そうと躍起になる親も。そのため、子供は燃え尽きたり、怪我をして競技の道が絶たれるなど、現実は厳しい。子供の競技に熱が入るあまり、暴走するスポーツペアレンツ の愚行は度々ニュースに取り上げられるほどだ。
「スポーツは人生にも通じる色々なレッスンを学ぶことができる。不安とどう向き合うかや、人とのコミュニケーションやリーダーシップ、プレッシャーの中でどうパフォーマンスするか、全て人生にとっても価値ある学びなんだ。昔はスポーツはただ楽しいものだったのに・・・」(ブライアント氏)
状況を変えたい。そのために何ができるのか。2019年8月、すでにジュニアスポーツの環境改善に動いていた「The Aspen Institute」とブライアント氏が組んで「Don't Retire, Kid」というプロジェクトを立ち上げる。(ウエブサイト https://www.aspenprojectplay.org/remembering-kobe)。リタイヤ(引退)しないで、と少しショックなフレーズだが、2018年にはアメリカの子供の62パーセントが、何もスポーツをしていないというデータもあり(The Aspen Institute発表)、子供が楽しくスポーツを続けられるための啓蒙活動の1つが、大人に向けた8つのアドバイスだ。
スポーツペアレンツ へ8つのアドバイス
1)Ask Kids What They Want
(子供が何をしたいのか聞こう。親にとって1番大切なのは、子供の「楽しい」と思う気持ちを育んであげること。小さいときは特に)
2)Reintroduce Free Play
(子供に自由にプレーさせて。「これだけシュートしなさい」とか指示するのではなくて)
3)Encourage Sports Sampling
(子供の頃にいろんなスポーツを経験させてください。怪我の予防にもなりますし、子供の想像力を刺激します。子供は何に惹かれるかわかりません。子供同士で遊ぶ時間を大切にしてください)
4)Revitelize In-Town League
(どんなチームにいるか。いつもストレスやプレッシャーに晒されているのか、失敗してもいいとチャレンジさせてもらえるのか。本当の競争とは、勝つことだけではなく、負けたことからも学ぶことができるということ)
5)Think Small
(いきなりステープルズセンターのような大きな場所は必要ない。もっと想像力を使うんだ。フィラデルフィアにいた頃、小さな地下が僕の練習場所さ。冬は雪が多くて出られないからね)
6)Design For Development
(子供は2か月で上手くなる子もいれば、2、3年かけて上手になる子もいる。親やコーチが早く上手くなってと思っても、思うようにはならないから、それぞれ自分のペースで上達していければいい)
7)Train All Coaches
(コーチは感情が落ち着いていて、自分のエゴのために勝とうとするのではなく、子供達がどう試合に臨んでいくか、どう考えたらいいかを助けることができる人であるべき。そして人生とスポーツのつながりをよく理解していないといけない)
8)Emphasize Prevention
(コーチも子供がどんな感情と向き合っていくのか、よく勉強するべきだ。若いアスリートにはメンタルはとても大きなことだから)
良かれと思って、大人が意見を押し付けていないだろうか?
子供がのびのびと挑戦できる環境だろうか?
失敗したとしても、責めるのではなく、そこから何かを学べるようにヘルプできているだろうか?
マンバからの8つのアドバイスを、子供に関わる大人として是非胸に留めておきたい。