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日銀のマイナス金利解除でわたしたちの生活はどう変わる?

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
マイナス金利解除のイメージです(写真:ロイター/アフロ)

3月18日、3月19日は日本銀行の金融政策決定会合が開かれ、市場金利をどのように管理するかが議論されます。その中で最も注目を集めているテーマが、マイナス金利の解除です。遡ること2016年にマイナス金利の導入が決定されました。あれから8年。マイナス金利が解除されると、私たちの生活にどのような影響が出るのでしょうか。今回は、マイナス金利の解除だけでなく、金利のコントロールも同時に弱まるとの前提から、影響を考えます。

■マイナス金利解除によるプラスの影響

マイナス金利とは、銀行が日本銀行に預けているお金にマイナスの金利を付けることを指します。お金を預けているのに金利を支払わなければいけない状態です。

皆さんは、銀行に預金すると金利を支払わなければならないとしたら、わざわざ銀行にお金を預けますか?預けない場合は、他の選択肢として、タンス預金(現金)、消費、投資のいずれかに回されます。

マイナス金利は銀行側にとってコスト増となります。コストが増えれば預金の金利を上げることができません。その代わり、マイナス金利が解除されれば、銀行には普通預金や定期預金の金利を引き上げる原資が生まれます。

そのため、マイナス金利が解除されれば、銀行の金利は上昇する公算です。ただし、時期の早い遅いはあるはずです。マイナス金利が解除されると、しばらくは報道もこの話題で盛り上がるでしょう。他にも、金利のコントロールが緩まるため、個人向け国債の金利が上昇する可能性があります。

定期預金や個人向け国債の固定金利タイプを検討される際は、金利の上昇がひと段落してから購入の適否を検討しましょう。金利上昇局面では変動金利タイプの商品は問題ありませんが、固定金利タイプの商品を急いで買うと、低い状態の金利を長期固定することになり、機会損失が発生する可能性があります。金利上昇局面では投資は変動金利、借金は固定金利とするのが金融の世界でのセオリーとされています。

今後、金融機関が預金獲得キャンペーンを展開すると思われますので、キャンペーンを比較して、妥当と思える金利を提供する銀行を選ぶといいでしょう。

金利上昇によって、安くなる可能性があるのが生命保険です。生命保険は掛け捨てタイプ、貯蓄タイプに関わらず、安全に運用できる利率を市場金利に基づき国が定める「標準利率」に基づき保険会社ごとに「予定利率」を定め計算に用います。標準利率、予定利率が上昇すると掛け捨てタイプの保険料、つみたてタイプの保険料ともに引き下げられる可能性があります。予定利率は不定期に変更になるため、保険関係の情報にアンテナを立てておくといいでしょう。保険料が下がれば、生活にゆとりが生まれます。

金利の上昇幅によっては、住宅ローン金利が上がる代わりに、住宅ローンを借りる際の融資関連の手数料を下げる銀行も現れるかもしれません。これから家を買いたい人にとって、融資の際の手数料等が減ることは、諸費用が減ることになり家を買いやすくなると言えます。

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■マイナス金利解除によるマイナスの影響

金利上昇によるマイナスの影響の筆頭は、住宅ローンではないでしょうか。日本では多くの人が変動金利タイプの住宅ローンを借りています。

住宅ローンは金融機関が市場から調達する仕入れ金利に、利益を上乗せし貸し出すことで利ザヤを稼ぐ商品です。マイナス金利解除だけでは住宅ローン金利が上昇するとは言えません。ただ、金利自体の管理を緩める可能性が高いため、住宅ローンを貸すための原資である、市場金利が上昇すれば、仕入れ金利が上昇することになるため、貸出金利を引上げざるを得なくなります。

その場合は、長年低位安定してきた住宅ローン変動金利も上昇する可能性が出てきます。変動金利は借りたタイミングに金利が決まるのではなく、おおむね6か月ごとに金利が変化します。今回の金融政策決定会合でマイナス金利の解除とともに、金利のコントロールが緩まれば、9月から10月にかけて既に変動金利を借りている人の住宅ローン金利も上昇し、返済額が増える可能性があります。

また、金利が上昇すると、債券価格が下落する可能性が高いため、皆さんが国内債券や国内債券投資信託に投資をされている場合、価格が下落する可能性があります。

■マイナス金利の解除を好機ととらえるには

住宅ローン金利が引き上がれば、住宅ローンを貸し出す金融機関の利益が増えます。金融機関の株式は高配当で知られていますから、NISA口座での投資対象の選択肢として金融関連の株式を購入するのも一案です。※すでに金融株式の株価に織り込まれていると思いますが。

タンス預金やまとまった資金が銀行の普通預金口座に眠っている人は、個人向け国債や定期預金など元本の保全性が高い金融商品を改めて検討すると良さそうです。一般的に、普通預金金利よりも、定期預金や個人向け国債の利率の方が高くなります。

■金利の変化に踊らされないようにしよう

マイナス金利の解除に伴う、私たちの生活への影響を考えてみましたが、あなたならどう考えますか?人生に正解が無いように、資産設計にも正解はありません

20年ファイナンシャルプランナーとして働いている筆者から1つお伝えすることがあるとしたら、過剰なあおり広告などに踊らされないように注意してください、ということです。普通預金の金利も上昇するのであれば、今まで通り何もしない、というのも選択の1つです。

物価上昇の影響で、現金と預貯金が実質的に目減りしている状況ですが、慌てて資金を動かそうとして、皆さんの金融資産を狙っている事業者のカモにならないよう、注意が必要です。特に、最近は投資詐欺が増えているようですので、お金を動かす際は、実店舗に訪問し、怪しい業者と取引しないようにしましょう。家族に同席してもらうのも詐欺から逃れるためには有効です。

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お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「保険チョイス」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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