赤福の朔日餅。魅力あふれる全種類をご紹介。関西での購入方法も
三重や愛知、関西などの販売地域では馴染みのある伊勢名物の和菓子「赤福」。関西では身近な和菓子ですが、実は関東では、期間限定の出店以外でほとんど見かけることのない和菓子です。
今回は、その販売元の和菓子屋、赤福さんが販売する朔日餅(ついたちもち)を全種ご紹介します。
そもそも朔日餅(ついたちもち)とは
朔日餅は1月1日を除く毎月1日に提供される赤福の季節限定和菓子。季節に合わせた縁起の良さそうな和菓子が人気で、購入する際に行列ができることでも知られています。
伊勢では毎月1日の早朝、伊勢神宮にお参りする「朔日参り」があり、一か月を無事に過ごせたことに感謝し、新しい月の無事を祈願します。その朔日参りに来た参拝客をおもてなしするため作られ始めたというのが、赤福さんの「朔日餅」。
朔日餅の持ち帰り用は3種類。小箱、大箱、化粧箱になっています。お菓子の内容はどれも同じで、小箱と大箱はシンプルな箱に入った和菓子です。化粧箱はその月のお菓子に合った菓子箱などが楽しめる、朔日餅ならではの品。
関西での朔日餅の購入方法
関西では大阪府、京都府、兵庫県の一部百貨店で予約をし、購入することが出来ます。予約できる百貨店は以下の通り。
関西での販売地域
大阪 近鉄あべのハルカス店、高島屋大阪店、阪急うめだ本店、阪神梅田本店
京都 ジェイアール京都伊勢丹店
兵庫 神戸阪急店
赤福公式サイト出典
一か月前に直接店舗へ赴いて予約をしなくとも、近鉄あべのハルカス店と高島屋大阪店以外では百貨店のウェブサイトで予約をすることが出来ます。
店舗での予約の方法ですが、百貨店内にある赤福の店舗で来月の朔日餅の予約をする旨を伝え、予約の際に必要な引換券を受け取ります。2回目以降も店頭で予約ができますが、朔日餅を受け取る際に、翌月の予約を行うことが出来ます。
予約期間は販売月の前月1日から。予約数に達し次第終了となるため、早めに予約することをお勧めします。ただし2月の立春大吉餅のみ、前々月の12月1日からの予約になるとのこと。
受け取りは朔日餅が販売される毎月1日のみ。お餅の賞味期限も当日中です。
それでは朔日餅の化粧箱、全部お見せします。実食した感想も。
それでは、前置きが長くなりましたが、朔日餅の全種類を(2月から12月まで)ご紹介します。
2月の立春大吉餅
まずは2月の立春大吉餅の化粧箱 9個入 1,600円(税込)から。
箱を開けると華やかな焼き物が現れます。こちらは焙烙(ほうろく)といいます。
焙烙は茶葉やゴマ、塩、豆などを炒ったり、宝楽焼の鍋としても使われますが、赤福さんの説明によると「節分には”ほうろく”でイマメの薪を燃やしてパチパチ音をさせながら悪鬼退散の福豆を作った」のだそう。
柔らかいお餅の豆大福は2種類。きなこの方が大豆とこしあん入り。白が黒大豆と粒あん入りです。
原材料は下のようになっています。
大豆: 砂糖(国内製造)、もち米、小豆、大豆、きな粉(大豆を含む)、糖類加工品(大豆を含む)、食塩
黒豆: 砂糖(国内製造)、もち米、小豆、黒大豆、馬鈴薯澱粉、糖類加工品(大豆を含む)、食塩
節分で鬼を払って身を清め、翌日の立春でまた新たな年を健やかに過ごせるよう祈る「立春大吉餅」。年初めにぴったりの縁起の良い和菓子です。
三月 よもぎ餅
続いて3月の朔日餅、よもぎ餅の化粧箱(9個入)1,600円(税込)。
包装紙に使われているのは伊勢千代紙。説明には「京の宮中や江戸の大奥ではじまった千代紙は、やがて伊勢型紙によって友禅や小紋のうつくしい紋様を刷るまでに成熟しました」とあります。絵は版画家、徳力富吉郎氏によるもので、殆どの月が氏のデザインです。ひな祭りの月にちなんで、女児の健やかな成長を願っています。
化粧箱の形は菱型でしたが、ひな祭りで飾られる菱餅が、なぜこの形をしているのかには諸説あり、宮中でお正月に食べられていた菱葩餅(ひしはなびらもち/花びら餅のこと)から来ているという説や、菱の実を食べ長生きした仙人にあやかったという説、足利家で食べられていたひし形の餅が宮中で取り入れられたという説、そして心臓をかたどっているのではという説もあります。
お餅は香りのよい蓬を練りこんだ餅生地で粒あんを包んだ、春らしい和菓子です。
赤福さんによると、古来、よもぎは「魔除草」と呼ばれて、久しく食されてきたことと、昔、子孫繁栄、無病息災を祈る為に3月3日によもぎ餅をお雛様にお供えしたことから、3月の朔日餅はよもぎ餅にしているのだそう。
原材料は下の通り
砂糖(国内製造)、もち米、小豆、よもぎ、食塩、馬鈴薯澱粉、よもぎ粉/重曹、リン酸塩(Na)
上巳の節句(桃の節句)のある月らしい3月の朔日餅です。
四月 さくら餅
4月は華やかな雰囲気のさくら餅の化粧箱(9個入)1,600円(税込)。
包装紙の絵柄は、徳力富吉郎氏が描く伊勢に咲く桜でした。
道明寺桜餅に使用される道明寺粉は、もち米からできていて、もち米を水洗いしたのち浸水し、蒸して乾燥させたもの。
一般的に使われるのは粉砕したタイプで、その粉砕した粒子の大きさにより、丸粒、二ツ割、四ツ割、頭道明寺などの種類に分かれ、それぞれ食感の違いがあることから、和菓子屋さんの好みによって米の大きさが異なります。
赤福さんの桜餅は、米の粒がそのまま残っているタイプ。おこわのような食感です。桜葉の塩漬けは香りが強く、しっかりとしたもち米の食感と、少し甘めのこしあんによく合いました。
原材料は下の通り
砂糖(国内製造)、もち米、小豆、桜葉塩漬け、食塩 / トレハロース、クエン酸、焼ミョウバン、コチニール色素
お花見に持ってゆきたくなるような華やかな朔日餅です。
五月 かしわ餅
5月の朔日餅、化粧箱(9個入)1,600円(税込)は、端午の節句らしいかしわ餅。
5月は端午の節句にちなんだ、かしわ餅。包装紙のデザインは花菖蒲。デザインは写真のものと変更があり、現在の絵は同じ花菖蒲でも淡い色合いのものになります。三重の県花である花菖蒲は、六月に伊勢神宮の外宮勾玉池でも楽しむことができます。
袋を開けると、柏葉の清々しい香りが広がります。柏は新葉が育つまで古い葉が落ちることがないことから、子孫繁栄の縁起物として食べられるのだそう。
おもちは餅粉ではなく米粉を使っているため、さっぱりと適度な歯ごたえのある食感。あんこは少し甘めのこしあんでした。
原材料は下の通り
砂糖(国内製造)、米粉、小豆、米油、食塩 / トレハロース、増粘多糖類、クエン酸(Ca)
竹製の網代編みのお弁当箱を思わせる箱は、柏餅を食べたのち、おにぎりを入れてお弁当箱としても使ったり、小物入れにも使えそうでした。
六月 麦手餅
6月の朔日餅の化粧箱は麦手餅(9個入)1,600円(税込)。
6月は麦秋(ばくしゅう)と呼ばれ、農家さんが、麦刈や田植えなどで忙しいなか、豊作感謝のお祝いにつくったというのが「麦手餅」。
同封されていた小袋には麦粉が入っており、お餅にかけて食べると香ばしさが増すとのことですが、最初からしっかりと麦粉が掛かっており、掛けなくても十分な香ばしさがあります。
赤福さんの麦手餅は、もち麦粉が入った餅生地で黒糖味のあんこを包み、麦粉をまぶしたもの。
化粧箱入りのものは、木の爽やかな香りがお餅につき、麦こがしの香ばしさと相まって特に美味しいです。
普段は、化粧箱入りでなくても良いという方も、麦手餅に限っては、この香りを楽しむために化粧箱入りを選んでみても良いかもしれませんよ。
原材料は下の通り
麦手餅の内容 砂糖(国内製造)、もち米粉、小豆、加工黒糖、麦こがし、もち麦粉、米油、食塩 / トレハロース
麦こがし小袋の内容 裸麦(国産)
黒糖と麦の香りが絶妙な6月の朔日餅、麦手餅でした。
七月 笹わらび餅
7月の朔日餅の化粧箱は笹わらび餅(9個入)1,800円(税込)。
今年から内容が変更になった7月の朔日餅。前回までは竹筒羊羹の「竹流し」でしたが、使用している生竹が、昨今の社会情勢により入手が困難となった為変更になったのだそう。
一方今年から始まった笹わらび餅ですが、涼しげな籠に竹舟の掛紙と夏らしい雰囲気。
籠の中のわらび餅はビニールで覆われており、開けると笹の葉の香りがあたりに広がります。季節らしい七夕の短冊も一枚、入っていました。
わらび餅は瑞々しく、笹の葉の香りがほんのり移って清涼感があります。中は口当たりの良いこしあん。冷やして頂くと夏の暑さも和らぎそうです。竹筒の羊羹も良かったですが、変更後の笹わらび餅もとても美味しかったです。
原材料は下の通り。
砂糖(国内製造)、小豆、でん粉(蓮粉、本蕨粉)、こめ油、寒天 / トレハロース、加工でん粉、増粘多糖類、クエン酸(Ca)
八月 八朔粟餅(はっさくあわもち)
8月の朔日餅の化粧箱は八朔粟餅(9個入)1,600円(税込)。
八朔とは旧暦八月一日のこと。暑さも落ち着き、稲が実り始める頃です。昔、農家では八朔の日に豊穣を祈り、新穀(その年に取れた穀物の事)を恩人などに贈る風習があり、田の実(たのみ)の節句(または、たのもの節句)と呼ばれていました。
八朔と言えば、熊本県の八朔祭が有名ですが、こちらも旧暦八月一日に近い日程で行われる豊穣の祭りです。
また、果物の「ハッサク」も、漢字で書くと八朔。現在の収穫時期や旬とは大きく異なり、旧暦八月一日頃から食べられていたからと言われています。
赤福さんによると、伊勢では五穀のうち米や粟のお初穂を神前にお供えし、豊穣を祈るのですが、毎月一日に伊勢で行われる朔日参りの中でも、八月一日に行われるものを「八朔参宮」と呼び、粟餅を食べる習わしがあるとのこと。
包装紙は夏の風物詩「麦わら」を表現しています。
麦わらと言えば、麦わら帽子が浮かびますが、昔は、虫送り(農村における豊作祈願の呪術的行事)や、お盆の迎え火と送り火にも、麦わらを用いたのだそう。
粟餅は、つぶつぶがしっかりと残った食感が黒糖風味のこしあんとよく合い、とても美味しいです。
原材料は下の通り
砂糖(国内製造)、小豆、加工黒糖、もち米、もち粟
暑い時期に疲れた体が喜びそうな8月の朔日餅でした。
九月 萩の餅
9月の朔日餅の化粧箱は萩の餅(9個入)1,600円(税込)。9月は実りの秋らしいおはぎです。
草冠に秋と書く萩は秋の七草のひとつであり、お萩は小豆を萩の花に見立てた、秋のなじみ深い和菓子です。
一般的に、牡丹の花の咲く春のおはぎを「ぼたもち」、萩の花の咲く秋に食べるおはぎが「おはぎ」と言われていますが、花自体に見立てたという話、きなこをつけたものをおはぎ、小豆をつけたものをぼたもちと呼ぶ地域もあるのだそう。
赤福さんの萩の餅は、ほんのり塩味をきかせた、甘さ控えめの粒あん。中のもち米はつぶし過ぎず、適度な米の食感が残っていて、そのもち米をすっぽり、あんこが覆っていました。
小ぶりであっさりしているので、あっという間に食べられてしまいます。化粧箱入りのものは重箱に入り、豪華な印象を受けます。
不織布で出来た風呂敷には、萩の花の絵が描かれていましたが、化粧箱入り以外のものは、「実りの秋」「収穫の秋」を表した絵柄の包装紙に包まれていました。
原材料は下の通り
砂糖(国内製造)、もち米、小豆、食塩/トレハロース、リン酸塩(Na)
温かいお茶と共に、塩の効いた素朴な味のおはぎをいただくと、和菓子ならではの優しい甘さに心も体も緩みます。秋のお彼岸がある9月らしい朔日餅でした。
十月 栗餅
10月の朔日餅の化粧箱は栗餅(9個入)1,800円(税込)。
包装紙の絵柄は、秋の山の実りを表す遊び心のあるデザイン。
お餅は、もち米の粒と食感が残っているタイプ。中の栗あんは甘めでたっぷり入っており、もち米の間から顔をのぞかせています。
上に乗った栗の甘露煮は、コロンと可愛らしくつやつやしています。
原材料は下の通り
栗あん(国内製造(栗、砂糖))、もち米、栗甘露煮(栗、砂糖)、砂糖、食塩、寒天 / トレハロース、酸化防止剤(ビタミンC)、クチナシ色素
秋の実りを思わせる10月の朔日餅、栗餅でした。
十一月 ゑびす餅
11月の朔日餅の化粧箱はゑびす餅(9個入)1,600円(税込)。ゑびす講にちなんだゑびす餅です。
ゑびす講は旧暦10月(新暦の11月頃)に行われる、恵比須様に感謝をする行事のこと。神無月である旧暦の10月は、全国の神様方が出雲に向かわれると言われています。
その際に残って留守番をしてくださっているのが恵比須様。その恵比須様に感謝を捧げ、豊穣と商売繁盛をお祈りするというもの。
ゑびす講はゑびす祭、十日ゑびすとも呼ばれ、旧暦または新暦で行ったり、年に2度行ったり1月に行うなど、地域によって異なります。
菓子箱はゑびす講で販売される福箕(ふくみ)を表し、絵葉書等も入っています。
お餅は2種。白の餅は、黄金の小判印が押された柚子風味。黒は打出の小槌印の押された黒糖風味。どちらも温かいお茶によく合います。
豊年万作をイメージした包装紙だけでなく、大きな鯛を持った勇ましくも飄々とした姿の恵比須様の中絵、そして絵葉書に描いてある、少し力の抜けた雰囲気の大黒天と恵比須様の絵柄、楽し気に踊る「叶」の文字などが、箱を開けるたびに現れ、驚きと共に楽しませてくれます。
原材料は下の通り
黒糖の内容 砂糖(国内製造)、米粉、加工黒糖、小豆、米油、きな粉(大豆を含む)、食塩 / トレハロース
柚子の内容 砂糖(国内製造)、米粉、小豆、柚子、米油、食塩 / トレハロース、クチナシ色素
自分で楽しむだけでなく、大切な人に見せたり贈りたくなる、福の詰まった11月の朔日餅でした。
十二月 雪餅
最後は12月の朔日餅の化粧箱、雪餅(9個入)1,600円(税込)。可愛らしいまんまるの雪餅です。
火の用心の千社札風貼紙が描かれた包装紙。その燃えさかる炎や慌ただしい年末の雰囲気の包みを開けると、一転して静寂な雪景色を思わせる演出がされていました。
雪餅の外側を覆うのは、もち米で出来た氷餅を粉砕したもの。オブラートのような独特の食感が楽しめる、冬によく和菓子で使用されるまぶし粉です。
中の餅生地には、もろこし粉が入っています。茶色がかかった色合いは、大地を表しているのだそう。大地がほんのり雪化粧された様子を、雪餅としているようです。
中はこしあん。氷餅の独特の食感がくせになりそうです。
原材料は下の通り
砂糖(国内製造)、小豆、もち米粉、もろこし粉、もち米粉加工品(もち米粉、馬鈴薯澱粉、とうもろこし澱粉)、米油
一年を締めくくるにふさわしい、年の瀬らしい12月の朔日餅でした。
さて、今回は伊勢赤福さんの朔日餅を全種ご紹介させていただきましたがいかがでしたか。
旬の食材や、文化、歴史的な背景などが織り込まれた朔日餅は、その月に行われる行事などを意識し、季節の移り変わりを感じることができる、とても面白い和菓子です。
最後に、どれも美味しい朔日餅でしたが、筆者のお気に入りは、立春大吉餅(二月)麦手餅(六月)、笹わらび餅(七月)、八朔粟餅(八月)、萩の餅(九月)、十一月(えびす餅)でした。一番のおすすめを決めたかったのですが甲乙つけがたく、一番を決める事は難しかったです。
縁起の良い和菓子ばかりですので、月はじめに召し上がってみてはいかがでしょうか。
下の動画でも実際に朔日餅を開封する様子、お餅を割っている様などを公開しています。ご購入の際の参考に、よろしければご利用くださいね。
赤福の朔日餅(化粧箱)全種をご紹介 今回変更になった笹わらび餅と前回までの竹流しもあります。
※朔日餅の内容は変更される場合もあります。最新の情報は赤福さんの公式ホームページに掲載されますので、ご購入前にご確認ください。