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アトピー性皮膚炎の最新治療法!従来の治療との違いは?

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【アトピー性皮膚炎ってどんな病気?】

アトピー性皮膚炎は、世界中の大人の7%、子供の20%がかかっている皮膚の病気です。湿疹、かゆみ、乾燥、赤みなどが特徴的な症状で、かきむしることでかさぶたやひどい傷跡ができてしまいます。アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が弱くなったり、アレルギーを起こしやすい体質が関係していると考えられています。

皮膚のバリア機能が弱いと、アレルゲンや刺激物質が皮膚に入り込みやすくなり、炎症を引き起こします。また、アレルギー反応により、炎症を引き起こす物質が増えて、長く続く炎症状態になります。この炎症反応は、皮膚のかゆみを引き起こし、かきむしる行動を誘発します。かきむしることで皮膚のバリアがさらに壊れ、炎症がひどくなるという悪循環ができてしまいます。

これまでのアトピー性皮膚炎の治療は、保湿剤で皮膚を潤すことや、乾燥や刺激物質を避けるなどのスキンケアに加え、ステロイドや免疫抑制作用のある塗り薬が使われてきました。これらの治療は症状の改善に役立ちますが、長期間使用すると副作用が心配されました。また、中等症から重症のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、塗り薬だけでは十分な効果が得られないことも多く、ステロイドの飲み薬や免疫抑制剤が使われることもありました。しかし、ステロイドの飲み薬は長期間使用に適さず、免疫抑制剤も感染症やがんのリスクが心配されました。

【新時代の治療法 - 注射薬と飲み薬の登場】

近年、アトピー性皮膚炎の原因が明らかになり、新しい治療法が開発されました。注射薬のデュピルマブ、トラロキヌマブ、レブリキズマブ、飲み薬のアブロシチニブ、ウパダシチニブ、バリシチニブは、中等症から重症のアトピー性皮膚炎の患者さんに対する新たな治療選択肢として注目されています。

デュピルマブは、炎症を引き起こす物質(IL-4とIL-13)の働きを抑える注射薬で、6ヶ月以上の赤ちゃんから大人まで幅広く使用できます。トラロキヌマブとレブリキズマブは、炎症を引き起こす別の物質(IL-13)の働きを抑える注射薬です。これらの注射薬は、炎症を抑えることで、症状を改善します。

アブロシチニブ、ウパダシチニブ、バリシチニブは、JAK阻害薬と呼ばれる飲み薬です。JAK阻害薬は、炎症を引き起こす物質の働きを抑えることで、炎症反応を抑制します。アブロシチニブとウパダシチニブは、速やかにかゆみを改善し、長期的な症状コントロールにも効果があることが示されています。

これらの新しい治療法は、従来の治療と比べて、皮疹の改善、かゆみの軽減、生活の質の向上において優れた効果を示しています。副作用としては、注射部位の反応、目の充血、上気道感染、ニキビ、帯状疱疹などが報告されていますが、多くは軽度から中等度で、対症療法で管理可能です。

【アトピー性皮膚炎の患者さんの生活の質向上と今後の展望】

アトピー性皮膚炎は、単なる皮膚の問題ではなく、患者さんの心理面や社会生活にも大きな影響を与える病気です。慢性的なかゆみや皮疹は、睡眠障害やうつ病、社会的な孤立を引き起こし、患者さんの生活の質を著しく損ねます。新しい治療法の登場により、より多くの患者さんが症状をコントロールし、充実した日常生活を送れるようになることが期待されます。

新薬は、従来の治療と比べて高い効果と安全性が示されており、多くの患者さんの生活の質向上に役立つことが期待されます。また、注射薬と飲み薬という異なる種類の薬があるため、患者さんの好みや生活スタイルに合わせた治療が可能です。

今後も、アトピー性皮膚炎の原因解明と新たな治療法の開発が進むことが期待されます。注射薬や飲み薬の長期的な安全性や効果の検証、新たな治療ターゲットの探索、一人一人に合った治療の実現など、様々な研究が進められています。

アトピー性皮膚炎は、患者さんの生活の質に大きな影響を与える病気ですが、新しい治療法の登場により、より効果的で安全な治療が期待できるようになりました。注射薬や飲み薬は、従来の治療では十分な効果が得られなかった患者さんに新たな希望をもたらしています。今後も、アトピー性皮膚炎の原因解明と新たな治療法の開発が進み、より多くの患者さんが症状をコントロールし、充実した生活を送れるようになることを期待したいと思います。

参考文献:

Curr Allergy Asthma Rep.2024 Apr 18. doi: 10.1007/s11882-024-01145-x.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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