マイアミ現地リポ1:事前の準備を充実のテニスにつなげ、奈良くるみ2回戦へ
奈良くるみ 64 63 A・トムヤノビッチ
「私は準備がしっかりできていると、良い結果が出せる」
奈良くるみは昨年末、躍進のシーズンを振り返って、そのような所感を口にしました。トップ100選手で最も小さな身体で勝つために、対戦相手を想定し、心身を整え臨戦態勢に入ることで、昨年の奈良は世界の32位まで到達したのです。
2週間前のインディアンウェルズでは、マレーシアからの飛行機がキャンセルになったため現地入りが遅れ、その「準備」をすることができませんでした。そして、敗戦から約2週間。米国でのトレーニングと練習を重ねてきた奈良は、心身両面において充実感を覚え実践のコートに向かっていたようです。
初戦の対戦相手のトムヤノビッチは、180センチの長身を利したパワフルな攻めが身上。一発で試合の流れを決める武器を持っていますが、一方で荒さも目立ちます。
「今週は、練習でもパワーのある選手とやっても反応が良かったり、速いボールも跳ね返して次のボールを待つ余裕があった」
パワープレーヤー相手にも自信を持っていた奈良は、その言葉通り時速110マイル(約176キロ)を計測するサービスをも軽々と返し、ラリーへと持ち込みます。ひとたび打ち合いに持ち込めば、フットワークとコース打ち分けの能力で勝る、奈良に分があるのは間違いありません。相手のダブルフォールトにも乗じて最初のゲームをブレークした奈良は、1度ブレークされるも2度ブレークして第1セットを先取します。
第2セットでも、奈良が常にブレークで先行するも、そのたびブレークバックされる精神的に苦しい展開。しかし「サービスゲームではナーバスになったけれど、今日はリターンが良かった。リターンゲームを取るのが“キープ”だと思い、サービスゲームはやるべきことをやってダメだったらしかたない、くらいの気持ちでした」と振り返ります。その意味では、ゲームカウント3-3からのゲームをラブゲームでブレークし、続くゲームではセカンドサービスでもボディなどコースを工夫してキープしたのが大きかったでしょう。最後もブレークして試合を決め、昨年に続きマイアミ大会の初戦を突破しました。
ところで余談ではありますが、この試合の第1セット第8ゲーム、奈良は3つのダブルフォールトを犯しながらも際どくキープ。そのことがWTAのメディア担当者との間で話題にのぼった時、メディア担当者氏は「ダブルフォールトが3つもあって、どうやってキープしたんだろう? まるでマジックだね。マジッくるみだ」と笑っていました。
もちろん実際には、魔法ではなく、この試合に向け調整してきた準備の賜物であることは言うまでもありません。
※テニス専門誌『スマッシュ』facebookより転載。連日レポートを掲載しています。