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年末年始、ANA・JAL国内線は回復傾向。第6波前の旅行や2年ぶりの帰省が加速、ピークは29日と3日

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
昨年の年末年始初日の2020年12月26日朝の羽田空港第2ターミナル(筆者撮影)

 年末年始、2年ぶりに羽田空港のチェックインカウンターに多くの人で賑わう光景が見られそうだ。年末年始期間の国内線の空の便は日を追うごとに予約数が増えている。オミクロン株の様子を見ていた人も多かったが、日本国内での感染者数は現時点では抑えられていることで、昨年の感染拡大による直前キャンセルとは逆に、年末年始まで2週間を切った段階での直前予約も増えている。

海外では感染拡大しているオミクロン株。日本では感染が最小限に抑えられていることで年末年始の旅行・帰省の動きが活発化

 オミクロン株が日本国内で大きく報道されたのが11月26日の夕方だった。そして11月29日から入国制限の強化が発表され、岸田政権は海外からの水際対策に力を入れた。その効果があったかどうかは定かではないが、諸外国に比べるとオミクロン株の感染者数は少なく、新型コロナウイルスの新規感染者自体も若干の増加傾向は見られるものの、今年夏の状況考えると、約3カ月間にわたって感染者数が抑えられている状況にある。

 しかしながら、直近の感染者数が増加傾向にあり、オミクロン株の今後も含めて、いつ第6波がやってくるのかはわからない状況の中で、比較的感染者が少ない今、国内旅行や帰省などで国内線や新幹線を使って遠くに出かけたいという動きが多く見られている。

 2年ぶりに帰省して、年末年始を家族や友人と過ごしたい人の国内線線利用が特に予約数を押し上げている。

昨年は11月後半から12月にかけて急速に新規感染者数が拡大したことで直前キャンセルした人が多かった

 昨年の今頃は、新型コロナウィルスの新規感染者数が急増で、Go Toトラベルの全国一時停止が決まり、既に予約を済ませていた国内線や新幹線の予約を直前でキャンセルといった動きが見られた。東京都の小池百合子知事も県外への移動自粛を呼びかけるなど、飛行機・新幹線で遠くへ出かけることが難しい社会情勢だった。

 各航空会社は12月中旬に毎年発表する年末年始の予約状況、更に年末年始が終わった直後に発表する年末年始の利用実績をそれぞれ発表しているが、この両データを比較してみると、通常は12月中旬の予約状況よりも直前での予約が加味されることで、年始に発表される利用実績で上積みされるが、1年前の年末年始は大量キャンセルで最終的に大きく利用者を落とすことになった。

昨年12月26日の朝のJAL便が出発する羽田空港第1ターミナルのチェックインカウンター。直前でのキャンセルが増えたこともあり、ある程度の人出はあったが大きな混雑はしていなかった(筆者撮影)
昨年12月26日の朝のJAL便が出発する羽田空港第1ターミナルのチェックインカウンター。直前でのキャンセルが増えたこともあり、ある程度の人出はあったが大きな混雑はしていなかった(筆者撮影)

昨年の年末年始初日の羽田空港のJAL出発案内版。全便に空席があった(2020年12月26日、筆者撮影)
昨年の年末年始初日の羽田空港のJAL出発案内版。全便に空席があった(2020年12月26日、筆者撮影)

ANAでは昨年は27%が直前キャンセルだった

 ANAの場合で見てみよう。今回の年末年始についてANAでは、2021年12月17日発表の国内線における年末年始期間(2021年12月25日~2022年1月4日)の予約数について、108万1252人を記録している。

 ちなみに1年前の2020年12月17日時点での2020年12月25日~2021年1月4日の予約数は96万2631人であったが、新型コロナウイルス感染拡大、更にGo Toトラベルの全国一時停止の影響で直前キャンセルが目立ち、最終的な利用者は約70万人になった。計算上は、約27%の人が12月17日以降の直前キャンセルとなった。

 コロナ前の2年前の年末年始は、2019年12月17日時点で2019年12月25日~2020年1月4日までの予約数は152万1999人で、最終的に約167万人が利用した。

ANAの出発案内版。昨年の年末年始初日の12月26日(土)は午前中も満席便はなかった(筆者撮影)
ANAの出発案内版。昨年の年末年始初日の12月26日(土)は午前中も満席便はなかった(筆者撮影)

昨年の年末年始は行列はなかったが、今年は12月29日~31日を中心に羽田空港では混雑が予想される(2020年12月26日、筆者撮影)
昨年の年末年始は行列はなかったが、今年は12月29日~31日を中心に羽田空港では混雑が予想される(2020年12月26日、筆者撮影)

昨年比で6~7割増、2年前と比べて70~80%程度に回復する可能性大

 今年は政府や自治体などから移動自粛の要請は一切なく、12月17日以降も国内線の予約は堅調に推移している。オミクロン株の影響は現状ほとんどないとのことで、約108万人の予約数から更なる上増しが期待できそうとのことだ。

 2年前においては、直前予約(2週間切ってから)で1割程度の上増しがあったこと、更にオミクロン株及び新規感染者数の様子を見ていた人でこのタイミングで旅行や帰省へ出かけることを決めた人も増えていることを考慮すると、最終的に120万人に届くことも十分に考えられる。ANAで見ると、国内線の利用者は1年前に比べて6割~7割増となる公算が高く、コロナ前の2年前と比べても70%程度の回復になりそうだ。

 JALも、2021年12月17日発表の国内線における年末年始期間(2021年12月25日~2022年1月4日)の予約数は88万9990人と堅調だ。1年前は12月17日時点で2020年12月25日~2021年1月4日の予約数は51万9956人であったが、最終的には 47万6000人となった。2年前の年末年始は、2019年12月17日時点で2019年12月25日~2020年1月4日までの予約数は104万9801人で、最終的に125万5000人が利用した。JALではコロナ前の2年前と比べて80%程度の回復になりそうだが、国内線全体で見ると70%~80%の回復になりそうだ。

12月10日(土)の大阪・道頓堀、日中は多くの人で賑わっていた(筆者撮影)
12月10日(土)の大阪・道頓堀、日中は多くの人で賑わっていた(筆者撮影)

ラッシュのピークは下り便が12月29日、上り便が1月3日

 年末年始のスタートまで約1週間。新規感染者数が大幅に増加しない限りは、海外旅行へ出かけることは厳しい状況であるが、国内旅行や帰省で羽田空港のチェックインカウンターや保安検査場の混雑が予想される。ピーク日は地方へ向かう下り便が予約率が高い順に12月29日(水)、30日(木)、31日(金)、東京や大阪などへ戻る上り便は1月3日(月)、1月4日(火)、1月2日(日)の順となっている。空港へは早めに向かって欲しいと各航空会社では呼びかけている。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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