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ミサイルが飛んできた時、生きるためにすべきこと 医師の視点(追記;防衛関係者からの情報)

中山祐次郎外科医師・医学博士・作家
29日、北朝鮮からミサイルが発射された。次はいつ来るのか(写真:ロイター/アフロ)

ミサイル発射を教えてくれる「Jアラート」、知ってますか?

「Jアラート」、名前を聞いたことはありますか?

Jアラートとは、簡単に言えば災害や武力攻撃の際に政府から私たち住民に「とんでもないことが起きますよ」と伝えるシステムのことです。

もっと簡単に言えば、ミサイルが日本に向けて発射された情報を政府が掴んだら、瞬時にJアラートで日本国中に知らせること。電話やインターネットではなく、無線を使って情報は送られています。

知らせ方は、町中にサイレンが鳴り響き、個人の携帯電話にも通知が来るシステムです。真夜中でもいつでも、大きな音で鳴り響くようです。

鳴る音はこちら(内閣官房国民保護ポータルサイトより)で聞くことが出来ます。クリックするとサイレンが流れます。ぜひ一度は聞いてみて下さい。

また、個人の携帯電話にも通知が来るとのですが、果たして自分の携帯電話に通知は来るのでしょうか。これは会社によって異なりますが、基本的にau、ソフトバンク、NTTドコモの携帯電話を使っている人には、スマホでも従来の携帯電話でもほとんどの機種で通知が来ます。念のため、各社のリンク先で設定を確認してください。auはこちらソフトバンクはこちらNTTドコモはこちらから確認する事ができます。また、通知音は3社で同じであり、この音です。一度聞いておくといいでしょう。それ以外の方は、通知が来るかどうか本記事執筆現在では確認が取れていません。

このJアラートは基本的に日本全国すべての市町村で整備されています。整備されているがうまく働かなかった例として、昨年度(28年度)に訓練を行った結果、情報を伝達出来なかった市町村がこちらに示されています。この中には東京都杉並区などの大きな自治体も含まれています。当たってしまっていた市町村にお住まいの方は、ぜひ自分の市町村へ修正がされたかどうか確認してください。なお、杉並区は不具合の原因をつきとめ、接続されるように再設定されたと区からお知らせがありました。

Jアラートから着弾まで8分、何をすべき?

さて、このJアラートはわかったとして、この警報に気付いたら私たちは何をすれば良いのでしょうか。

まずはミサイルが到着するまで、どれくらいの時間の余裕があるのでしょう。それを考える際に、去年発射されたミサイルの情報から考えてみます。

平成28年2月7日に北朝鮮西岸の東倉里(トンチャンリ)付近から発射された弾道ミサイルは、約10分後に、発射場所から 約1,600km離れた沖縄県先島諸島上空を通過しています。

出典:内閣官房国民保護ポータルサイト

この東倉里というところから東京までの距離は、この引用とほぼ同じ1,500kmです。つまり東倉里から東京を標的としたミサイルを発射した場合、10分でミサイルは東京に到着するという事になります。Jアラートが発射から2分で出されたとしても、残り時間は8分しかありません。

さてこの短時間で、何をすべきでしょうか。つい先日発表された内閣官房国民保護ポータルサイトの資料には、こう書かれています。

【屋外にいる場合】

○近くのできるだけ頑丈な建物や地下街などに避難する。

○近くに適当な建物がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守る。

【屋内にいる場合】

○できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動する。

屋外・屋内のどちらにいる場合も、ミサイルが着弾すると凄まじい衝撃波と爆風が吹きます。それによりガラスなどが割れ、破片がまるで銃弾のようにとてつもない速さで飛び散ります。まずはこれを避けなければ、生命の危険があります。そんな理由で、窓のない部屋へ移動したり、建物の中へ入る必要があるのです。ですから、もし建物の中にすぐ入れなければ、硬い大きな物の陰に隠れて下さい。とにかく時間がなく、Jアラートが発されてから着弾まで数分だと思っておきましょう。

私なら、まず地下に行きます。ビルの地下でも、地下鉄の駅でも、です。もちろん崩落して潰されるリスクはありますが。

その理由は、ミサイルの弾頭に化学兵器か核爆弾が積まれている可能性があるからです。どちらの場合も、毒物(サリンの可能性があります)や大量の放射性物質にさらされると、やはり死亡する危険があるのです。

29日早朝の北朝鮮ミサイル発射で地下鉄が止まったことを考えても、地下鉄はおそらくJアラートや政府からのミサイル情報で運行が止まり、駅構内には人が大挙して避難するでしょう。なおJアラートが出た場合、おそらく全ての鉄道も止まるでしょう。

(追記 4月30日11時)

防衛関係の関係者から頂いた情報をによると、「通常弾頭の場合はそこまで甚大な被害はない。ちゃんとした建物の中であれば、死ぬ可能性は低い」とのこと。このサイトによると、

イラン・イラク戦争では実数及び負傷者は明らかではないが、弾道弾1基当たりの被害は2~18人程。

イスラエルでは38発で直接の死者2人、間接的な死者は5.5倍の11人。

出典:現代戦戦闘被害(一部)

との情報があります。

また、「問題は北朝鮮のミサイルの数です。日本を射程に入れているノドンやスカッドは数百発あると言われています」(防衛関係者)との情報もあります。

(追記終わり)

着弾したら

そしてミサイルが近くに着弾したら。自分がいるところのごく近くに着弾した場合は、地下深くにでもいない限り着弾の爆発や衝撃で死亡します。これは残念ながら避けようがありません。

幸いにして、少し離れたところに着弾した場合はどうでしょう。あなたが地下に避難し、着弾の衝撃で被害を受けなかったと仮定します。

出口が崩れ、地下に取り残されてしまうかもしれません。また、地上に出たら街が壊滅状態になっている可能性もあります。全ての交通はマヒし、もちろん携帯電話も使えません。情報も何もありません。もし怪我をしていても、おそらく病院の機能は無くなっているでしょう。東日本大震災のときにも、病院が優先して物資の補給を受けるという事はなかったと聞きます。

ですから、ミサイルで街が破壊されてしまっても、基本的には自力で生き延びねばなりません。72時間くらいは救助がこない可能性も十分にありますし、建物の中などに閉じ込められたらもっと長くなるでしょう。

(追記 4月30日11時)

前出の防衛関係者のコメントです。

「この記述は核を念頭に置いているとすれば、そんなに間違っていないと思いますが、核の被害半径も一発ではそこまで広くはありません。都市機能が全部マヒしてしまうところまではいかないと思います。また、昨日のニュースでは北朝鮮は核弾頭を30発保有していると報じられました。」

このコメントをもらいましたが、筆者は核弾頭が来る最悪の事態を想定して以下に続けます。(追記おわり)

さて、ここからどう生き延びるか。非常に予測の難しいところですが、やっていれば生存率が上がる可能性があることがあります。

今やっておくべきこと

今すぐにやるべきことーーーそれは、水、食料の備蓄です。3日分の食料や水を家に人数分置いておきましょう。

さらには、食べられるものを携帯しておきましょう。カバンの中には常に500mlの水のペットボトルを予備として持ち歩き、例えばブロックタイプのカロリーメイトを2箱入れておく。どちらもコンビニで売っていますし、かさばらないので現実的に可能ですよね。他のものでも良いですが、カロリーメイトはカロリーが高くビタミンなども含まれるため、おすすめです。特にカロリーメイトロングライフというものは、賞味期限が3年と、備蓄用食品として優れています。現に企業や自治体の備蓄用食品として使われているようです。

私は普段家で寝る時、枕元に水や食料、ラジオなどを入れたリュックサックを置いています。いざという時、真夜中でもそれをすぐ担いでいれば建物に閉じ込められても5日間くらいは生き延びることが出来そうだからです。何も飲まず食わずだと、人間は72時間で生存率が急激に下がるというデータがあります。

赤線が生存率。4日目以降は5.4%と低下している
赤線が生存率。4日目以降は5.4%と低下している

(引用国土交通省 阪神・淡路大震災に学ぶ)

このグラフは阪神・淡路大震災からのものです。日に日に生存率が落ちていくのがわかります。

そして、家族とは落ち合う場所を決めておきましょう。そこまで徒歩で行けるようにしておきましょう。ハイヒールを履いて出勤する方は、10キロくらい歩けるランニングシューズやスニーカーなどを職場に置いておきましょう。

終わりに

残念ながら今、やれることはそれほど多くありません。もちろんこの記事だけでは不十分でしょうし、色んな憶測に基づき記事を書いています。ですから情報が入ってきたら、本記事はどんどん追加・修正して行く予定です。

本記事には不安を煽る意図はありません。今一度備えを確認し追加し、もしもの時に備えて欲しいという意図で書きました。

有事の際にこれをお読みの方が生き延びることを祈り、終わります。

※文中にカロリーメイトについて書きましたが、筆者は大塚製薬と何ら利害関係にはありません。

外科医師・医学博士・作家

外科医・作家。湘南医療大学保健医療学部臨床教授。公衆衛生学修士、医学博士。1980年生。聖光学院中・高卒後2浪を経て、鹿児島大学医学部卒。都立駒込病院で研修後、大腸外科医師として計10年勤務。2017年2月から福島県高野病院院長、総合南東北病院外科医長、2021年10月から神奈川県茅ヶ崎市の湘南東部総合病院で手術の日々を送る。資格は消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医など。モットーは「いつ死んでも後悔するように生きる」。著書は「医者の本音」、小説「泣くな研修医」シリーズなど。Yahoo!ニュース個人では計4回のMost Valuable Article賞を受賞。

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