「アスリートに引退はない!」アスリート特化型ビジネススクールABUが新年に打ち出した5つの戦略とは?
アスリートがスポーツだけに集中すればいい時代は、終わった
2024年1月、新年が始まった。国内のスポーツビジネス市場も新たな年の幕開けに、さまざまな動きを見せるなか、アスリートのセカンドキャリアを照らす朗報が届いた。
アスリートに特化したビジネススクール「Athletes Business United(以下、ABU)」が、アスリートのセカンドキャリアをさらに前に進めるべく、次の5つの戦略を打ち出した。
①大企業向け採用プランの始動
②部活動の地域移行支援のスタート
③社会人野球チームマネジメント研修
④体育会学生の就職対策
⑤なでしこケアと女性アスリート向け共同事業
ABUが目指すのは、アスリートのセカンドキャリアという言葉をなくし、競技を引退してからの人生をサポートすること。そんなビジョンを叶えるために、ABUは5つの戦略をどのように展開していくのだろうか。
2024年という多くの人にとって新たな飛躍の年となる一年、そのスタートの月でABU代表の中田仁之氏に伺った。
(*記事内の画像で特に記載のないものは(株)ABU及び中田氏からの提供)
優れたポテンシャルを持つアスリート人材を大企業へ繋ぐ
ー ABUが打ち出す5つの戦略について教えていただけますでしょうか。
中田 ABUはアスリートに特化したビジネススクールとして、2020年に設立しました。これまで、プロ野球選手やJリーガーなどのトップアスリートから、各競技の選手、アマチュアアスリートの選手、障害スポーツのパラアスリート、体育会学生などさまざまなアスリートたちに在籍していただき、すでに在籍者数は380人を超えています。
ABUが目指すのは、アスリートのセカンドキャリアを本気で支援し、彼らが夢を見つけ、新しい人生をスタートできるようサポートすることです。
そこで、今年はそんなアスリートのセカンドキャリアの可能性をさらに広げるべく、新たな戦略として、「大企業向け採用プラン」「部活動の地域移行支援」「社会人野球チームマネジメント研修」「体育会学生の就職対策」「なでしこケアとの女性アスリート向け共同事業」の5つを打ち出しました。
ー それぞれの戦略について、詳しく教えてください。まず、「大企業向け採用プラン」とはどのようなプロジェクトでしょうか。
中田 大企業からの人材ニーズに応えるべく、アスリート学生の採用を支援するというプランを立ち上げました。
大企業が設ける従来の採用基準では内定に至らないものの、スポーツを通じて高い人間力を培ってきたアスリートたちを、営業や接客などコミュニケーション能力が求められる職種で募集している企業様と提携し、新たな採用基準を構築し人材を紹介するプランです。
企業の採用活動に関しては、これまでの「広告出稿し応募を待つ」という受動型スタイルがいまだに一般的ですが、弊社は自らエージェントとして企業の求める要件に沿うアスリートを能動的に探し企業に提案するという特徴があります。
私自身が中小企業診断士であるというバックグラウンドもあり、これまでは中小企業を中心にアスリートの就職支援を行っていました。
しかし、近年アスリート出身の学生が大企業で活躍し、さらに離職率も低いという現状を目にしたことで、さらにアスリートの就職の間口を広げようと、この度新プランの立ち上げに乗り出しました。すでに、大手のIT企業、食品メーカーなどと契約が決まるほか、お問い合わせも多数いただいています。
ー 大企業において、アスリートはどのように活躍できるとお考えでしょうか。
中田 アスリートの強みのひとつは「やり抜く力」です。日ごろからハードなトレーニングに向き合い、厳しい勝敗の世界から逃げなかった彼らは、仕事においても簡単には離脱しない強さを持ち合わせている。そんなアスリートの強みは、大企業でも非常に有益な戦力になると考えています。また、「組織・チームのために自分がどう動くべきか」という視点を持っており、その中で自分の役割を見つけ実行する能力も強みのひとつです。
しかし、その一方でスポーツに打ち込んできたアスリートは就職活動に関する知識や繋がりが希薄であるという課題がありました。
就職活動をするうえで踏むべきステップについて疎いため、なかなか一般市場に現れなかったのです。我々はそんなアスリートと大企業を繋ぐことで、新たなシナジーを生み出せると考えています。
多くのアスリートは引退後、まず最初に大学や高校の顧問の先生に引退の報告と相談に訪れます。その場で就職先を紹介されることもありますし、チームスポンサーに就職することも多いので、一般の就職市場にはなかなか現れません。
彼らのポテンシャルをABUの仕組みを使って企業にお繋ぎする、その思いで新たなプランを開発いたしました。
「学生、教員、スポーツ指導者」にとって三方よしの部活動の地域移行支援
ー次に「部活動の地域移行支援」について詳しく教えていただけますでしょうか。
中田 部活動の地域移行に関しては、近年さまざまな地域で取り組まれてきた課題ですが、まだまだ解決に時間がかかっている状況です。
地域のスポーツクラブに部活動が移行された場合も、教育の一環であるという学校の部活動について知見を持ったコーチや指導者が少なく、学校とクラブの双方が納得できるモデルの構築が簡単ではないという背景がありました。
さらに、学校で部活動を行う場合、顧問となる教員の負担となることが問題視されており、実際にスポーツ経験がほとんどないのにも関わらずスポーツ部の顧問を任されているというケースも散見します。
その一方で、世の中にはスポーツの指導がしたくて教員免許を取得した人もいるわけです。学生も教員も、スポーツ指導を志す方々にとっても本意ではない状況を改善するために、ABUでは部活動の地域移行支援を行うだけ出なく、地域スポーツマネジメント講座という講座を立ち上げました。
学生にはしっかりと実力を伸ばせる部活動の環境を、教員には負担の軽減を、スポーツ指導者にはより良い環境で学生たちに正しい指導をできる状態をもたらすことができるよう、長期的視点で戦略を立案しました。
ー 指導者の育成にも携わるのですね。
中田 スポーツ指導のレベルを底上げするために、指導者やマネージャーの教育や育成にも力を入れていきたいと考えています。
学生向けではないですが、3つ目の戦略である「社会人野球チームマネジメント研修」もその一貫です。このプロジェクトでは、社会人野球チームのマネージャーや指導者を対象に、チーム運営とマネジメントスキル習得のための研修を実施します。
社会人野球は選手の平均年齢が20代後半〜30代前半なのに対し、マネージャーは20代前半という年の差がある場合が多いため、マネジメントに苦戦しているケースが多いのです。
年上の選手をまとめるチーム運営のスキルやマネジメントスキルを学べる講座は、多種多様な社員を抱える企業の経営者や管理職にとっても有益で、マネージャーが引退後に社業に就く際にも役立つ内容になっていると思います。
体育会学生から女性アスリートまで幅広くキャリアをサポート
ー 続いて、「体育会学生の就職対策」について教えていただけますか。
中田 合宿や試合で忙しく就職活動ができない体育会学生向けに、夜間のオンライン講座でビジネススキル習得と併行した就職支援を行うプロジェクトです。
体育会学生は、物事に対してまっすぐ向き合う力が強い反面、スポーツに打ち込む日々の忙しさに、就職活動へ意識が向けられない方が多いのが現状でした。最も就職活動に注力すべき2月〜6月という期間は、合宿や春季リーグなどがあり、最上級生として集大成の時期でもありますので、一般の学生のような就職活動ができないという現状もあります。
私は以前から「アスリートに使われるセカンドキャリアという言葉をなくしたい」と発信していますが、それは体育会学生にも同じことが言えます。
これまでスポーツに取り組んできた学生たちが、そのことを後悔しないよう、忙しくても短期集中で学び内定獲得することができるよう、一般教養からビジネスマナーまで就職活動に必要なことを凝縮して一挙に学べるよう講座の設計にこだわりました。
ー 学生以外にも、キャリアの支援は行っていく予定はありますか。
中田 4つ目の「なでしこケアとの女性アスリート向け共同事業」は、まさに女性アスリートのキャリア形成の支援を行うプロジェクトです。
女子アスリートを支援をする「なでしこケア」と業務提携し、ABUが持つコンテンツと組み合わせ、「イベント運営」をテーマにプログラムを提供する予定です。
イベント運営を主軸にしている理由は、イベント運営には集客やマーケティング、イベントの企画や設計など、ビジネスに必要なスキルセットがすべて詰め込まれているからです。
ライフステージの変化によって、キャリアに影響の出やすい女性アスリートだからこそ、自分のやりたいことを自分の力で実現できるようになってほしい。そのために、まずはABUを通じてイベント運営について学んでいただくことで、今後ご自身のやりたいことができたときに、そのスキルを活かして夢の実現につなげてもらいたいと考えています。
「引退」後の新たな人生のスタートを支援するABU
ー 最後にABUの受講を考えている方にメッセージをお願いします。
中田 アスリートが、スポーツだけに集中すればいい時代はもう終わりに近づいていると感じています。
例えば、大谷翔平選手のように成功して、巨額の収入を得たアスリートであっても、その背後には資産運用や経営チームが存在しており、単なるスポーツだけではなくビジネスや社会にも深く関わっているのです。
これからのアスリートに必要なのは、自分の将来を見据え、周囲を見極める能力。スポーツだけに固執せず、自分を知り、興味を広げていくことが求められていると思います。
苦手なことや知らないことを周りに任せてしまうだけでなく、リスキリングや新たな分野にも興味を持つことが将来につながります。本を読むことや人と会うことを通じて、スポーツ以外の分野にも興味をもつことがとても重要。
学びや興味を広げることは、学校の勉強とは違いますが、社会の勉強ともいえるABUでの経験は、人生を必ず好転させてくれるはずです。
そして、そんな社会について学び、引退後の新たな人生をより良いものにするには、指導してくれるメンターの存在が必要です。ABUはそんな素晴らしいメンターが見つかる場所でもあります。みなさんが、より確かな道に進むことができるサポートをさせていただけると嬉しいです。
◯中田仁之氏
株式会社S.K.Y.代表取締役/中小企業診断士
株式会社A.B.United代表取締役
内閣府「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」会員
2025大阪・関西万博共創パートナー
1969年大阪生まれ。
幼少期より野球一筋、関西大学在学時には体育会準硬式野球部に所属、大学選抜メンバーに選出され海外遠征を経験。「JAPAN」のユニフォームに袖を通し海外で君が代を歌うという経験を持つ。
卒業後、大日本印刷株式会社に入社、コンサルティング営業として20年間活躍した後、2012年2月に株式会社S.K.Y.を設立。
「大好きな人に本気の応援を提供する」という企業理念を掲げ、上場企業から個人事業主まで幅広い顧客層を持つ。主な事業は販売促進に関するプロデュース業及び営業力強化・人材育成等のコンサルティング、さらに経営者やリーダー向けのビジネス講座を東京・大阪で主宰、企業からの講演依頼やリーダー育成プロジェクトの開発などの依頼が殺到している。
2018年に上梓した著書「困った部下が最高の戦力に化ける すごい共感マネジメント(ユサブル刊)」が発売直後に重版となりロングセラーに。台湾、中国でも翻訳される。
2020年5月、アスリートのネクストキャリアを支援する「日本営業大学(現Athletes Business United)」という日本初のアスリートに特化したビジネススクールを設立、元プロ野球選手やJリーガーほか様々な競技に取り組む現役選手や、引退した元アスリートから大学生まで、のべ380名のアスリートに対しビジネス教育を提供、就職や起業、地方創生や就農など一人ひとりに合ったネクストキャリアをプロデュースしている。
2023年にはラジオ関西にて冠番組『アスカツ!』をスタート、さらに『非認知能力〜トップアスリートに学ぶ活躍できる人の条件(クローバー出版)』を上梓するなど活躍の幅を広げている。
◯主な書籍
『困った部下が最高の戦力に化けるすごい共感マネジメント』(2018年株式会社ユサブル)
『非認知能力〜トップアスリートに学ぶ活躍できる人の条件』(2023年クローバー出版株式会社)
(了)