Yahoo!ニュース

使いにくい「指定席券売機」が話題に なぜ鉄道では「みどりの窓口」がいまだ求められるのか?

小林拓矢フリーライター
結局、窓口がないとということになってしまうのか(写真:イメージマート)

 最近、JRの指定席券売機の使いにくさを訴えたツイートが話題になっている。また、オペレーターと対話できる「話せる指定席券売機」「みどりの券売機プラス」「話せる券売機」などの待ち時間が長いことはよく問題になっている。

「みどりの窓口」を廃止し、指定席券売機を増やし、対面のものについても「話せる指定席券売機」タイプのもので代用していくというのが、現在のJR各社の方針である。会社により異なるが、最盛期の5割より多く閉鎖しようとしている。

 JR各社のこういった方針は、鉄道利用者からはよく思われていない。ふだんから鉄道に乗らない人は、指定席券売機の使いにくさに頭を抱えている。この現状を見ると、ふだんから鉄道に乗っていない人に指定席を取って鉄道を利用して何かをしてもらう、というのは極めてハードルが高いというしかない。自動化で「一見さんお断り」の交通機関になってしまったのだ。

 JR各社は、特急のネット予約システムをご利用くださいと利用者に声をかけている。確かにネットでパソコンから、またはスマートフォンから予約することもできる。チケットレス乗車も場合によっては可能だ。だがこれで便利になるのは、ふだんから鉄道を乗りこなしている人だけではないか?

 そのネット予約が使いにくいとしたら?

使いにくい「えきねっと」の問題

 よく、JR東日本の予約サイト「えきねっと」が使いにくいと言われる。理由にはいろいろとある。JRのオンライン切符発券システム「マルス」の入力画面をほぼそのまま利用者に提供しているというのもあれば、JRのきっぷのルールが複雑すぎてそれを理解していないと使いこなせないというのもある。もちろん、「えきねっと」のシステムそのものに難があるともいえるだろう。

 JRのネット予約で比較的うまくいっているものといえばJR東海などの「エクスプレス予約」「スマートEX」があるものの、これは新幹線の予約に特化しており、幅広くさまざまな列車でも使いやすいものである、というものではない。

 新幹線の予約に特化し、それに合わせて予約システムから運賃・料金まで整えることによって、使いやすいものになったのだ。

 JR西日本ほかの「e5489」は、JR東日本の「えきねっと」よりも使いやすいと言われている。これはきっぷのルールを利用者に合わせて読み替えているからだろう。

 利用者の多いJR東日本エリアでは、「えきねっと」一択であり、その「えきねっと」が使いにくいという状況になっている。

 新幹線・在来線特急にかかわらず、JR東日本はさまざまな割引プランを提供している。それは、「えきねっと」だからこそ利用できるものが多い。安くて便利な特急用回数券は消滅していった。もちろん、特急用回数券のばら売りを駅近くの金券ショップで買って、ということもできない。

 昔ならば窓口にちょっと並んでひと言で買えた指定席が、なぜこんなに面倒なことになったのかということもいえるだろう。

 窓口に並ばないでも指定席を買えるようにした指定席券売機にも、問題はあるのだ。

マルス端末そのままの指定席券売機

 指定席券売機の使いにくさ、というのも問題がある。よく購入されるその日の特急などは、タッチひとつでショートカットできるように設定しているものの、そうではない事前の予約、それも乗り継ぎを含むような予約は、いちいち日時から何から指定して、というしくみになっている。しかも、指定席の予約をしたのち、乗車券を別に買わなくてはならない。

 そもそも、特急券と乗車券を別に買う必要があることを、多くの人はわかっているのか?

 さらにいえば、特急券と乗車券の区間が一致しない場合、買うのが面倒になるというしくみになっていないだろうか。

 これだと、きっぷのルールをちゃんと理解していない限り、使いにくいシステムということになる。

「みどりの窓口」担当駅員がやっていたことは何なのか?

「みどりの窓口」には、駅員がいる。この窓口担当の駅員は、きっぷのルールを把握しており(たまに間違う)、マルス端末の操作ができる。

 窓口担当駅員は単に、マルス端末を操作しているだけではない。きっぷを購入する乗客の要望に基づいて、それをマルス端末の入力の仕方に置き換え、ちゃんと発券するという役割を果たしている。乗客の考えを、きっぷのルールとマルスの端末の操作に反映し、要望に応えるという頭を使った作業をしている。ただ座っているわけではないのだ。

 特急などの指定席の販売だけではなく、定期券の販売でも同じである。通勤定期券がモバイル化されてから長いものの、通学定期券(とくに中高生)はつい最近まで窓口が必要だったのは、学生証などの認証が目視で必要だったからである。

 その他、複雑なきっぷや、こまごまとしたお願いなどは、どうしても窓口であることが必要なのだ。

 それゆえに、鉄道の窓口廃止への反発は大きい。

 窓口があって、そこに人がいないとわからないほど、きっぷのルールは細かいのだ。

 まだ飛行機の予約のほうが、細かくないから早期にネットに移行できたといえる。

 きっぷのルールは長年の積み重ねで変えにくい部分はあるが、指定席券売機のインターフェースや、「話せる指定席券売機」のオペレーターの増員、ネット予約の使いやすさの向上が必要であり、そうでないと「みどりの窓口」の削減は単なる「合理化」で、乗客には不便になるとしか言えないだろう。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

小林拓矢の最近の記事