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「これからいっそうの精進が必要」藤井聡太新棋聖(17)棋聖戦五番勝負第4局終局後記者会見、全文まとめ

松本博文将棋ライター
写真撮影:悟訓

(7月16日夜、棋聖戦五番勝負第4局終了後、藤井聡太新棋聖に師匠の杉本昌隆八段から花束贈呈があり、フォトセッション後、記者会見)

司会「それではただ今より記者会見を始めさせていただきます。本日おこなわれました第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局で藤井七段が勝ち、3勝1敗で棋聖を奪取しました。17歳11か月、史上最年少で初のタイトルを獲得いたしました。それではまず主催の産経新聞社様より代表質問をお願いいたします」

田中「主催の産経新聞の田中です。藤井新棋聖、獲得おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

田中「終局後にもちょっとおうかがいしたんですけれども、改めて初タイトルを獲得した気持ち、さらに、今も紹介がありましたけれども、最年少の記録更新という形での獲得となりました。今のお気持ちを改めてお聞かせください」

藤井「獲得についてはまだあまり実感がないんですけど、やはりとてもうれしく思っていますし、また、これからタイトルホルダーとして、しっかりとした将棋をお見せしなければ、という思いもあります」

田中「ありがとうございます。藤井新棋聖にはあともう一点うかがいます。今シリーズ、91期の五番勝負、これを振り返っていただいて、いかがだったでしょうか?」

藤井「そうですね、うーん。(少し考えて)やはりそうですね、シリーズ通して渡辺先生の指し手で勉強になるところが非常に多かったなというふうに思いますし、シリーズ通して、自分自身成長することができたのかなというふうに思っています」

田中「わかりました、ありがとうございます。次に師匠の杉本先生にもお話を一つおうかがいしたいと思います。お弟子さんの藤井七段がタイトルホルダーになられて、初めてのタイトルで藤井棋聖となりました。師匠としての気持ちをお聞かせください」

杉本「タイトルというのは私たち棋士にとって夢の舞台ですし、すべての棋士の目標です。わが板谷一門では、私の師匠、板谷進九段、東海地方にタイトルを持ち帰るというのが長年の悲願でした。それを私の弟子、私の師匠から見ると孫弟子の藤井七段が今回実現してくれて、東海地方にタイトルをついに持ち帰ってくれるんだなと思うと、感慨深い。(笑顔で)ええ、感慨深いですね」

田中「わかりました、ありがとうございます。主催社からは以上です」

司会「続きまして関西囲碁将棋記者クラブ代表社様より代表質問をお願いします」

佐藤「朝日新聞の佐藤と申します。新棋聖、おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

佐藤「主催社さんの質問と少し重なるかもしれませんけれども、新記録についてどういうふうに思ってらっしゃるか、お尋ねします。タイトル挑戦の最年少記録。タイトル獲得の最年少記録。これを更新されました。この点はいかがでしょうか」

藤井「最年少記録という点に関しては、自分自身では、あまり意識することはなかったんですけど。獲得できたというのは非常にうれしい結果だな、というふうには感じています」

佐藤「今回、コロナの関係で対局ができない期間が約2か月ほどあったと思います。それが明けて対局再開されてからの成績が、日本将棋連盟からいただいた資料だと、18局指して16勝2敗と。非常に絶好調だと思うんですけれども、これはご本人は理由はどこらへんにあると思ってらっしゃいますか?」

藤井「4月、5月にかけてしばらく対局が空きましたけど、それで自分自身の将棋を見つめ直すことができたというのはよかったのかな、というふうには思っています」

佐藤「関連で、普段の研究でですね、AIをどういうふうに活用してらっしゃるか、差し支えない範囲で教えていただけたらと思います」

藤井「ソフトの読み筋や評価値を見て、自分の考えと照らし合わせるという使い方が多いです」

佐藤「終局して、こういう記者会見出られて、まだご家族に電話されてはいないと思うんですけれども、ご家族にはどういうふうにお伝えになりたいでしょうか?」

藤井「そうですね・・・。(笑顔で)いつも自分から結果を報告するということはないんですけど。対局はいつも見てくれていると思うので、こういう結果を出せてよかったなというふうに思っています」

佐藤「すぐそばにいらっしゃると思いますが、師匠にはどういうふうに言いたいですか?」

藤井「ははは(笑)。そうですね、やはり・・・。師匠にはやはり入門のときからずっとお世話になってきたので、一つ恩返しできたのかな、というふうには思っています」

佐藤「もう二つだけ。『将棋めし』ということですごく注目されていて。今日のお昼は味噌煮込みうどんでした。地元愛に満ちた選択だなあ、と思っていたんですが、どういうふうな選択の理由だったんでしょうか?」

藤井「ああ・・・(笑)。そうですね、あまり、えっと、深い理由はないんですけど(笑)。味噌煮込みうどんというのはやはり愛知県の名物でもあるので・・・。今日の対局ではそれで結果を残せたというのは、よかったのかなあ、とは思います」

佐藤「和服にも非常に注目が集まってるんですけども、今日の和服は、どのような和服なんでしょうか?」

藤井「ええっと・・・(笑)。すみません、自分があまり詳しくないんですけど・・・」

佐藤「どなたから贈られたとか」

杉本「私から答えてもいいですか?」

佐藤「お願いします」

杉本「今日の和服は羽織だけ、私がプレゼントしたもので。着物と・・・袴もかなあ。羽織と袴は私がプレゼントしたもので、中の白い着物は藤井七段が自分で作ったものですね」

佐藤「ありがとうございます。最後なんですけれども、杉本八段がですね、コメントを寄せてくれまして、『東海に持ち帰ったタイトルは、大切に、いつまでも保ち続けてください』と。『これからも将棋が指せる幸せと、すべての人への感謝を忘れずに』と。こういうようなメッセージを寄せてくれてるんですが、聞かれていかがでしょう?」

藤井「タイトルは獲得できましたけど、また、これからいっそうの精進が必要かなというふうに思っていますし、これからもファンの方に楽しんで見ていただけるような将棋を指せるように、がんばっていかなくてはいけないなというふうには思います」

佐藤「どうもありがとうございます。私からは以上です」

司会「他にご質問のある方、挙手をお願いします」

野島「毎日放送の野島と申します。おつかれのところ取材時間いただき、本当にありがとうございます。そしてタイトル獲得おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

野島「ここまでかなり過密なスケジュールで対局が続いていて、ファンの方々からも疲れが出ていないか心配する声が聞かれます。大きな対局を終えた今、お疲れ具合や体調などはいかがでしょうか?」

藤井「今日もその、先日の王位戦の対局があって、中1日という形ではありましたけど、前日に十分休息を取れて、今日もいい状態で対局に臨めたかなというふうに思いますし。これからも体調管理に気をつけて、いい将棋が指せるようにしていきたいなというふうに思います」

野島「今一番したいことってありますか?・・・ごめんなさい、質問一つだったので、ここで終わらせていただくんですが、明日も(翌々日の対局の移動で)東京に行かれると聞いています。がんばってください、ありがとうございました」

藤井「はい、ありがとうございます」

岡村「中日新聞の岡村と申します。新棋聖の誕生、おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

岡村「おつかれさまでした。先ほども東海地方ということが何度か出てきておるんですけれども、将棋のタイトルというのはこれまで、東西の将棋会館がある関東や関西の棋士が取っておって、地方に住む藤井さんがこのように頂点に立つというのは、とても画期的なことだと思います。特に東海地方でではですね、昭和に活躍した板谷進先生から、ずっと東海地方にタイトルを持ち帰るということを夢にしておりまして、それを合言葉に地元のアマチュアの方ですとか、子どもたちも一生懸命腕をみがいてきたわけです。そういう夢をですね、ご自身がかなえられたご感想というのはいかがでしょうか?」

藤井「自分もこれまで地元の多くの方に、本当に支えていただいたり、温かく見守っていただいたりしていただいて。だからこそ自分自身ここまで来れたのかなあというふうにも思いますし、これで地元の方にも一ついい報告ができるのかな、と思います」

岡村「ありがとうございました」

北野「報知新聞の北野と申します。新棋聖、おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

北野「今タイトルホルダーになられたので、あえてうかがいます。今将棋界はAIとの共存期を迎えています。本シリーズでもAIについての多くの言及があったと思います。そのような時代においてですね、人間、あるいは棋士っていうものが持つ可能性について新棋聖はどのようにお考えでしょうか?」

藤井「数年前には棋士と将棋ソフトとの対局というのは非常に大きな話題になりましたけど、今ではやはり将棋ソフトとのそういう対決の時代を越えて、共存という時代に入ったのかなというふうに思いますし。自分自身、プレイヤーとしてはソフトを活用することでより自分自身成長できる可能性があるというふうに思っていますし、また見ていただく方にとっても、観戦の際の楽しみの一つにしていただければな、というふうには思っています」

北野「棋士として、人間としてというところをもう一声うかがえたらと思うんですが、難しいでしょうか?」

藤井「今の時代においても、将棋界の盤上の物語というのは不変のものだと思いますし、その価値というのを自分自身も伝えられたらな、というふうには思っています」

北野「ありがとうございます」

新土居「毎日新聞の新土居です。藤井棋聖、おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

新土居「先ほどですね、最近の好調ぶりについて、コロナで対局ができなかった間、自分の将棋を見つめ直すことができたとおっしゃられましたけれども、具体的に言うとですね、たとえば少年時代のことまで振り返って自分の将棋を見つめ直したのか、あるいはその、デビュー当時の棋譜とかを並べたとかですね、どのように見つめ直されたのかを少し具体的に教えてください」

藤井「現状の自分の将棋の課題というのを見つけて、それを改善するという感じでやっていました」

新土居「ありがとうございます」

角「東海テレビの角です。おめでとうございます。新棋聖、おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

角「藤井棋聖、これまでも公式戦29連勝だったり、今日も最年少タイトル獲得と、大きな記録を打ち立てていらっしゃいますが、もうすぐ18歳ということで、次は何で私たちを驚かせてくれますか?」

藤井「うーん(笑)。そうですね、自分としてはまずさらに実力を高めて、よりいい将棋をお見せできるようにしたいというふうに思っていますし、その結果としてさらなる活躍ができればな、というふうに思っています」

角「ありがとうございます」

藤崎「ABEMAの藤崎です。おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

藤崎「私がですね、藤井棋聖に初めて会ったのはですね、2017年4月にですね、今から3年前なんですけれど『炎の七番勝負』でですね。その時は学生服でお会いしてたんですね。まだ中学生でですね、すごく初々しかったことをすごく覚えてるんですけども、今日は和服でですね、棋聖とお会いしています。この間ですね、ABEMAはもちろんですが、主催されている新聞社様、放送してきた囲碁将棋チャンネル様、ドワンゴ様、記事や放送を見てこの日をずっと待ち望んでいた視聴者の皆様、たくさんいると思います。これからまだまだ、たくさん対局は予定されてますけれども、対局直後でお疲れのところ大変申し訳ございませんが、最後にですね、今田嶋(ディレクター)がですね、そこのカメラの前で手を振ってると思いますので、そちらに向かってですね、棋聖としてですね、満面の笑みで一言いただければと思いますので、ぜひともよろしくお願いします」

藤井(笑顔)(カメラのシャッター音が鳴り響く)「今日もご観戦いただきましてありがとうございました。今回、棋聖を獲得できて、これまで応援していただいた方にいい報告ができることをうれしく思っています。これからもいっそう精進して、よりよい将棋を指せるようにがんばっていきたいと思いますので、応援よろしくお願いいたします」

藤崎「ありがとうございました」

司会「それでは記者会見は以上とさせていただきます。ありがとうございました」

藤井(深く一礼。立った後、もう一度深く一礼)

(2020年7月16日夜、大阪・関西将棋会館)

木村義雄14世名人一門(画像作成:筆者)
木村義雄14世名人一門(画像作成:筆者)
将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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