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TUBE 39回目の夏を駆け抜ける――ハマスタと甲子園で40周年の“前夜祭”。「本当に幸せなバンド」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
7月13日阪神甲子園球場

通算35回目のハマスタライヴと9年振りの甲子園球場ライヴをファンと共に楽しむ

TUBEが今年も夏を全速力で駆け抜けた――8月24日に通算35回目となる恒例の横浜スタジアム公演『TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2024 SUN CUE 4 OAR(サンキューフォーオール)』を行ない、3万4千人を動員。さらに7月13日には9年振りに阪神甲子園球場でもライヴを開催、3万人を動員。両公演ともゲストとのコラボが実現し、来たるべき40周年の“前夜祭”をファンと共に思い切り楽しんだ。

横浜スタジアム
横浜スタジアム

8月24日、この日も横浜地方は厳しい暑さで、陽が落ちても気温は30度を超え、蒸し暑さがスタジアムを包む。しかしTUBEのライヴを観なければ夏が始まらないし終わらないという、全国から集結したTUBER(ファン)のTUBEコールと手拍子が、開演前から横浜スタジアム全体に響き渡っていた。

ホームグラウンドともいうべきハマスタでの通算35回目のライヴの注目のオープニングナンバーは「海の家」だ。前田亘輝(Vo)、春畑道哉(G)、角野秀行(B)、松本玲二(Dr)が、せり上がりからダンスをしながらステージに登場すると大歓声が起こり、祭りの始まりだ。2コーラス目からバンドサウンドになり、そしてサンバホイッスルが鳴り響き「恋してムーチョ」へ。全員が腕を振りスタジアムの温度はますます上昇していく。

「39年目で35回目のハマスタ、たくさんの人に囲まれて本当に幸せなバンドです」

横浜スタジアム
横浜スタジアム

「デビューして39年で35回目のハマスタ、こんなにたくさんの人に囲まれて本当に幸せなバンドです」と前田がファンに感謝し、39年間音楽活動を続けられていること、そして応援してくれるファンや関わってくれた全ての人への感謝の気持ちを表現した「サンキュー」を披露した。サビ始まりのキャッチーなメロディは、これまでだけではなく未来に向けた思いが込められている。

そして風が少し吹いてきて「Beach Time」を投下すると、開放感のあるメロディが気持ちを上げてくれる。「PERFECT SMILE」(9月15日配信)は、BBT富山テレビ放送の開局55周年を記念したアニバーサリーソングとして制作した、人懐っこいメロディと爽快なサウンドが印象的だ(9月15日「富山音楽花火フェス」にも出演し、披露)。「夏だね」では客席も大合唱。前田も「最高だね」と笑顔だ。

2025年6月1日のデビュー日に第二の故郷・ハワイでライヴを開催

そして、40周年を迎える2025年6月1日にハワイでライヴを行なうため「今年1月に場所を押さえてきた」と、改めて前田がファンに報告。1993年から毎年レコーディングをハワイで行ない、2000年のデビュー日にオアフ島・アロハスタジアムで日本人として初めてライヴを開催。当時のハワイ州知事から6月1日を「TUBE DAY」(TUBEの日)に認定された。また20周年の2005年にも米軍の軍事基地内施設「フォート・デ・ルッシー」でライヴを行なうなど、ハワイはTUBEにとって第2の故郷といってもいい特別な場所だ。

横浜スタジアム
横浜スタジアム

前田は「当時我々は知名度がそんなになかったにもかかわらず、将来性に期待してアロハスタジアム公演実現を後押ししてくれた、プロモーター(故人)の記念碑が建つ場所でライヴを行いたい」と構想を明らかにした。そして「TUBEとハワイの初めての接点」と、初めてハワイでミュージックビデオを撮影した「SUMMER DREAM」を、ハワイアンアレンジで披露した(『TUBEst』(2000年)に収録されている“リメイクバージョン”)。ムーヴィングステージの上で楽しそうに演奏するメンバーがスクリーンに映し出される。

2024年はセッションイヤー。「色々な人とコラボしてみて、4人では見えていなかったことが見えて勉強になった」

北山たけし(横浜スタジアム)
北山たけし(横浜スタジアム)

TUBEは2024年をセッションイヤーと位置づけ、様々なアーティストとコラボ。「色々な人とやってみて、4人では見えていなかったことが見えて勉強になった」(前田)と語り、この日最初のゲスト、北山たけしとTUBEが楽曲提供した「夏の終わりが来る前に」(1月17日発売)を披露。TUBEが温めていた楽曲を、北山の北島音楽事務所から独立後初となるシングルとしてこの応援ソングでエールを贈った。歌い終わった北山を前田は「与作」の替え歌で見送るという粋な演出に、客席は笑顔だ。

横浜スタジアム
横浜スタジアム

前田が噴水を浴びながらバラードを歌う、ハマスタライヴには欠かせない演出は、今年は「明日への道」だ。ずぶ濡れになりながら懸命に伝える前田の歌が感動を連れてくる。水の後は炎だ。「JAGUAR」では特効の火柱が上がる中、時に骨太で時に繊細な春畑のギターが炸裂する。TUBEバンドの圧倒的な演奏力、テクニックが堪能できるインスト曲だ。

DA PUMPとコラボ。前田が「夏、空いてる?」とオファー

DA PUMP(横浜スタジアム)
DA PUMP(横浜スタジアム)

この日もう一組のゲストは、8月7日にリリースされたTUBEの最新シングル「真夏のじゅもん」でコラボしているDA PUMPだ。前田が、以前から親交の深いISSAに4月に「夏、空いてる?」とコラボを持ちかけたところ、スケジュールが合わず一度は断られたものの、「いい曲ができた」と再度オファー。DA PUMPがその熱意に押され、振り付けまで考案してくれたというエピソードを紹介し「真夏のじゅもん」を披露。続けてTUBEの楽曲「ジラされて熱帯」でも、ISSAのハイトーンボーカルと前田の声が交差し、気持ちがいいハーモニーが生まれていた。DA PUMPのメンバーのダンスソロも披露され、大きな拍手が起こる。

ラストスパートは「Only You 君と夏の日を」「Miracle Game」「You’ll be the Champion」、そして本編最後に「Hot Night」を投下するとグラウンドもスタンドも飛び跳ね、手を振り上げてスタジアムが一体となって盛り上がる。

アンコールは、西海岸風の爽やかなサウンドが心地いい「裸足のラッキーガール」から。前田は「おめでとうございます」と「傘回し」を披露し、40周年を自ら前祝い。「-花火-」を歌い終わると、近年の酷暑を憂いながら、自身とお客さんの体力を考え「来年くらいまでは夏の野外をやろうかな」と語っていた。そして改めて色々なアーティストとのコラボに刺激を受けたことを明かし「本当は今日ここで松山千春さんと『長い夜』を歌うはずだった」と語ると、客席から驚きの声が上がり、前田は病気療養中の松山にエールを送った。

横浜スタジアム
横浜スタジアム

ラストは「シーズン・イン・ザ・サン」と「あー夏休み」でクライマックスを迎えた。客席全員がゆく夏を惜しむように<あー夏休み>と大合唱し、大団円だ。バンドもファンも夏をしめくくり、「2025年、みんなと迎える40回目の夏 一緒に思い出をつくりましょう! See you next Summer」というメッセージがスクリーンに映し出された。

9年振りに甲子園球場に凱旋

ハマスタの約40日前には、9年振りとなった阪神甲子園球場でのライヴで熱狂を生み出していた。1991年から2015年まで25年連続で開催してきた夏恒例の甲子園球場でのライヴ。今年甲子園球場が開場100周年を迎え、その記念事業の一環として9年ぶりの凱旋ライヴになった。

寿君と4年越しのコラボ披露

寿君(甲子園球場)
寿君(甲子園球場)

「1週間前の天気予報では100%雨、豪雨という予報でした。見てください!皆さんの魂が伝わりました」と、月も顔を出している絶好のコンディションでライヴを行なうことができる歓びを、ファンと分かち合った。

この日は2020年にFM大阪開局50周年アニバーサリーソング「知らんけど feat.寿君」を一緒に制作した、レゲエシーンで活躍する寿君も登場し、本来は2020年の甲子園公演で披露する予定だった同曲を満を持して4年越しに披露。

GACKTが駆け付ける

さらに2月にリリースした「サヨナラのかわりに」ではGACKTとのコラボが実現。GACKTが登場すると球場が大歓声で包まれ、2組が共作した、誰にでも必ず訪れる大切な人との「別れ」をテーマにした、切なくて壮大なバラードを披露した。

GACKT(甲子園球場)
GACKT(甲子園球場)

そしてGACKTが「この曲を振られた時はどうやって断ろうか考えた」という、ノリノリのTUBEナンバー「ジラされて熱帯」を振り付きで歌うと、大きな拍手が沸く。前田とGACKTは美しいハーモニーでも魅せる。

「甲子園100周年と阪神タイガースの“アレ”アゲインを願ってジャンプしようぜー!」とジャンプ締め

甲子園球場
甲子園球場

アンコールでは、前田がタイガースのユニホーム(背番号39 MAEDA)を着て登場し、「シーズン・イン・ザ・サン」を披露。そして最後の曲の「あー夏休み」を歌い終わると「26回目の甲子園、本当にありがとう。甲子園100周年と阪神タイガースの“アレ”アゲインを願ってジャンプしようぜー!」と、ジャンプ締めだ。

来年の40周年を盛大にお祝いする準備はできている――そんな全TUBEファンの思いを強く感じることができた夏

甲子園球場
甲子園球場

タイトかつ包容力のある角野と松本のリズム隊が支え、春畑の情熱的なギターが曲全体を彩り、そして前田の突き抜ける、でもどこまでも温かなボーカルがTUBEの変わらない世界を作り上げている。39年の活動でシングル63枚、オリジナルアルバム34枚を発表しているTUBE。変わらないために柔軟な姿勢で更新し続ける強さを持っているバンドだからこそ、40年間第一線で続けることができるということを、甲子園球場と横浜スタジアムで改めて感じた。

同時に、来年の40周年を盛大にお祝いする準備はできている――そんな全TUBEファンの思いを強く感じることができた夏だった。

TUBE ソニーミュージックオフィシャルサイト

TUBEハワイ公演オフィシャルツアー

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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