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米どころ東北 夏の天候不順の可能性は?

平野貴久気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属
曇り空の水田(2017年8月 筆者撮影)

 2月もきょうで終わり、気象の世界でいう「冬」も終わろうとしています。

 この冬は、上空の寒気が弱く、低気圧の影響を受けにくかったために、東北地方でも雪の少なさが目立ちました。仙台では2月の降雪量はゼロ(1センチ未満)となる見込みです。これは過去にもあまり例がありません。

 そうした中、今週月曜日、春の3か月間の予報と、早くも夏の予報が発表されました。

春も高温傾向続く

 東北地方の3か月(3月~5月)の平均気温は、高い確率が50%。偏西風が日本付近で北に蛇行し、南から暖かい空気が流れ込みやすいためです。特に3月は高い確率が60%と、春の前半ほどその傾向が顕著に表れています。

 この冬、雪は少なかったとはいえ、東北地方の山間部ではある程度の雪は積もっています。雪崩には十分な注意が必要です。

3か月予報  平均気温(気象庁ホームページより)
3か月予報 平均気温(気象庁ホームページより)

エルニーニョの夏は気温が低め

エルニーニョ現象発生時の夏の気温(気象庁ホームページより)
エルニーニョ現象発生時の夏の気温(気象庁ホームページより)

 ただ、このまま夏まで高温傾向が続くかというと、そのような見通しにはなっていません。

 気象庁によれば、現在エルニーニョ現象が発生していて、2月12日発表のエルニーニョ監視速報では「今後夏にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い(70%)」としています。

 エルニーニョ現象が発生している時、東北地方を含む北日本は、気温が平年並みか低い傾向で、これは統計的にも有意です。

 今回発表された夏の予報でもその傾向が表れていて、東北地方の夏の平均気温はほぼ平年並みながら、若干低めに出ています。

 現在、太平洋赤道域の海面水温は、西部から東部の広い範囲で高く、典型的なエルニーニョ現象とは少し違うと見ることもできますが、これが今後どう影響してくるのか、注目したいところです。

天候不順の可能性は?

 去年の夏は猛暑となりました。太平洋高気圧と上層のチベット高気圧の日本付近への張り出しが強く、背の高い高気圧に覆われたためです。

 しかしながら今年の夏は、両高気圧ともに日本付近への張り出しが弱いと予想されています。そのため、東北地方は雨も多めの予想となっています。

 また、資料を詳しく見ると、オホーツク海高気圧の出現を示唆する記述もあります。一昨年の夏は、このオホーツク海高気圧の出現により、東北地方太平洋側には冷たく湿った空気が流れ込み続け、天候不順となりました。

 オホーツク海高気圧がいつ頃出現するのか、本当に出現するのかの長期的な予測は難しく、近々になってこないと精度は上がってきませんが、一つの可能性としては考えておきたいところです。

6月~8月の海洋と大気の特徴(気象庁ホームページより)
6月~8月の海洋と大気の特徴(気象庁ホームページより)

 今年の夏がどうなるか、当然ながらまだ断定はできません。

 しかし、米どころ東北では、夏の天候不順は死活問題となりえるだけに、今回の夏の予報は少し気がかりな部分があります。

気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

1980年愛知県生まれ。大学では気象学を専攻。卒業後は番組制作会社でリサーチャーとして活動。メディアを通じて自ら気象情報を発信したいという思いから、2009年に気象予報士の資格を取得。2012年から宮城県の仙台放送にて気象キャスターを務める。現在「仙台放送 Live News it!」出演中。予報はもちろんのこと、これまで宮城県内さまざまな場所を取材した経験から見えてくることなども発信できたらと思います。

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