米国フロリダホロコースト博物館、サウスフロリダ大学と連携して展示品デジタル化:進む記憶のデジタル化
米国のフロリダにあるフロリダホロコースト博物館はサウスフロリダ大学の歴史学のデジタル研究を行う機関(Institute for Digital Exploration)と連携して、展示物のデジタル化を進めていくことを明らかにした。新型コロナウィルス感染拡大防止のため、フロリダホロコースト博物館は閉鎖しており、バーチャルによる展示を積極的に推進している。同博物館ではアンネ・フランク博物館よりも早くからデジタル化を進めてきていた。
サウスフロリダ大学のデビッド・タナシ氏は「ホロコースト博物館の展示物をデジタル化していくことは、とても重要なことです。多くの人がホロコーストの歴史を忘れていってしまい、また博物館も新型コロナの影響で入館できないことから、デジタルでバーチャル化することによって多くの人に観てもらうことができるようになります。博物館でのバーチャルツアーがだんだん人気になってきていると思います。新型コロナウィルスの感染拡大に伴って、ますます博物館のデジタル化は進んでいくでしょう」と語っていた。博物館とサウスフロリダ大学では、当時のユダヤ人の子供たちの靴や黄色のダビデの星などの展示物を3Dで表現しようとしている。
「デジタル化されたバーチャルでの展示は、博物館に来なくともどこからでも見ることができます。でも見るだけでなく、ホロコースト犠牲者や生存者らのデジタル化された展示物の背後にある歴史や、彼らの生活、想いを感じ取ってもらうことが重要です。バーチャルツアーや検索可能なデータベースも活用してほしいです」とフロリダホロコースト博物館の展示マネージャーは語っている。
第二次世界大戦時にナチスドイツによって約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らが殺害された、いわゆるホロコースト。戦後70年以上が経ち、ホロコーストの生存者の高齢化が進み体力と記憶が衰えている。そのため生存者が健在のうちに彼らの証言を集めて動画で撮影したり、ホログラムでリアルタイムにホロコースト生存者と対話ができるようにしたり、遺品などをデジタル化して継承していこうとする「ホロコーストの記憶のデジタル化」が欧米やイスラエルなどで積極的に進められている。
また今まではホロコースト生存者が地元の学生らに博物館において当時の体験を語っていたが、現在ではZoomを活用してオンラインで当時の経験を語っている。フロリダホロコースト博物館でも現在はZoomで生存者の経験を聞くことができる。老齢化が進んだ生存者にとっては、今までのように博物館まで足を運んで学生の前に立って講演をするのは、体力的に大変だったが、自宅からパソコンの前でゆっくりと自分のペースで話せるので、オンライン講演の方が良いと評判も良いようだ。
▼フロリダホロコースト博物館では、バーチャルツアーのチュートリアルを動画で公開している。