FA藤井にオファーなし、「落合GMは誠意に欠ける」は間違い
国内FA権を獲得した中日の藤井淳志に、今のところ球団からの引き止めの提案は無いらしい。本件に関し、「藤井は可哀想だ」「落合博満GMは冷たい」という論調の報道も目にする。ちょっとそれは違うかな、とも思う。それについて記したい。
34歳の藤井は今季自己最多の118試合に出場し、打率.295、6本塁打、45打点だった。出場数は114試合ながら、自己最多の401打数で.299の高打率と10本塁打49打点を記録したキャリアイヤーの2009年以来の成績だった。レフトの定位置を守って来た和田一浩が今季限りで引退したこともあり、藤井の重要度は相対的に向上したと思うのだが、中日球団の評価は必ずしもそうではないようだ。今季年俸はわずか3000万円だ。年齢的にのびしろがあるかどうかは疑問だが、FA市場に打って出ればそれなりに争奪戦になるだろう。しかし、このまま藤井がFA宣言をしなければ、単に例年通り球団と契約更改の交渉をするだけだ。
それでも、「球団は誠意に欠ける」という見方はやや視点がずれていると思う。確かに10年間も在籍した地元(愛知県豊橋市)出身選手に対し、引き止める気があるやなしやの意思を伝達する配慮はあって欲しいと思うが、それはNice to have(そうであった方が良い)でありMust(必須)ではない。
事の本質は、「中日は無慈悲」ということではなく「中日にとって藤井はそれほど重要な存在ではなかった」という事実だ。これを見落としてはいけないと思う。藤井本人にとってはショックだったかもしれないが、ある選手に対する評価は相対的なもので絶対的ではない。中日以外の球団にとっては、来季の編成上重要なピースである可能性は十分ある。悲観することはないと思う。また、中日も(その判断が結果的に正しいかどうかはともかく)実力と予測されるコストの関係から「無理して引き止めるに値しない」と考えるなら、それは少しも恥じ入ることではない。
ただし、藤井の動向に関する報道を目にするに付け思うところがある。そもそも「FA宣言」というプロセスは必要なのかということだ。FA権を取得した日から、またはそのオフからすべからくFAとなるということではダメなのか。選手に「宣言」をさせるということは、所属球団への忠誠心に関する「踏み絵」をさせているようで、どうも感心しない。