対人口比で主要国軍事費の動向をながめ見る(2024年公開版)
国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)の公開資料を基に、主要国の軍事費をそれぞれの国の人口比の視点から確認する。各国の軍事費の実情を推し量ることができよう。
SIPRIの調査の限りでは、2023年における各国軍事費(米ドル換算)でトップはアメリカ合衆国、次いで中国、そしてロシアの順となっている。
このグラフは単純に米ドル換算での額の多い少ないを比較したもの。他方、国家間比較の話でよく持ち上がる意見の一つが「人口が多ければ国の規模も大きくなるから、大国の数字が大きくなるのも当然」とするもの。そこでそれぞれの国の軍事費を、各国の人口で除算し、国民1人あたりの軍事費を算出したのが次のグラフ。
対政府支出総額が大きめなサウジアラビア(24.0%、2023年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国の中ではウクライナの58.2%に次いで第2位)が、対人口額でも大きな値を示している。他方アメリカ合衆国がそれ以上の値を示しており、あの人口をもってしてもこれだけの高額になるほど、アメリカ合衆国の軍事費が大きいことがうかがえる。
絶対額では大きな伸びを示す中国やインドだが、人口比では少額にとどまっている。日本は1人あたり406.8ドル。そしてロシアとウクライナが、2022年以降大きな伸びを示しているのが分かる。特にウクライナは同一グラフ内にある他国の値を大きく引き離す状態になっている。軍事費上位10か国内では、アメリカ合衆国、サウジアラビアに続いて第3位のポジション。
経年推移を見ると、円安の影響を受けた日本で一時的な下落の動きがあったものの、それ以外の国では概して増加傾向にあることが確認できる。人口が急激に増減する事象は生じていないことから、軍事費はおおよそ増加傾向にあると見てよいだろう。また、アメリカ合衆国は2012年以降は減少傾向を示していたが、2018年以降は増加に転じている。
インドや中国のように多くの人口を抱える国の動向が分かりにくいこともあることから、対人口比の額面がどのような変化を示したのか、該当国すべてで値を取得できる最古の1993年当時と直近の2023年の値を比較し、その増加ぶりを倍数で示したのが次のグラフ。例えば日本は1.2とあるので、1993年から2023年にかけて、国民1人あたりの軍事費は1.2倍に増加(2割増し)したことになる。
アメリカ合衆国、サウジアラビア、イギリス、ドイツ、フランス、日本は2倍台までの増加にとどまっている。インドはやや大きめで6.6倍、そしてロシアは14.5倍、さらに中国は実に20.1倍となっている。ウクライナは約600倍と、言葉通りけた違いの値。これもまた、各国の軍事費動向を推し量る上での指針となるに違いない。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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