年金だけで生活費は足りるかな? 年金に対する考え方をさぐる
・単身世帯では6割近く、二人以上世帯では4割強が、年金だけでは生活費はまかなえないと考えている。
・年金受給額に関する不安感は、最近になって顕著化した問題では無い。
・「いくらもらえるか」「いつからもらえるか」が、年金への主な不安。
単身世帯では6割近くが「年金だけでは日常生活もつらい」
受給時期にまで年を重ねた際、果たして年金で日常生活を過ごせるのか否か、足りないと考えている場合、その理由はどこにあるのか。その思いを金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。
まずは年金支給額について、その額(公的年金に加えて企業年金も含め、個人年金は除く。以下同)だけで老後の生活を営めるか否かを尋ねた結果が次のグラフ。単身世帯と二人以上世帯でそれぞれ区分して集計してある。
二人以上世帯で2001年に大きな変化が生じているが、これは同年から「日常生活費程度もまかなうのが難しい」の選択肢の文面を変更したため。元々はより緩やかな生活をイメージさせる「年金だけではゆとりが無い」だった。表現の変更により回答率に変化が生じたのだろう。
経年動向を見ると、意外にも昔から直近まで、年金と老後生活の金銭的な関係において、考え方に大きな差は生じていない。あえていえば二人以上世帯では「不自由なく暮らせる」が微減、単身世帯では微増しているぐらいが中長期的な変化。少なくとも今調査に限れば、公的年金受給額に関する心境は、最近になって顕著化した問題ではない。
なぜ年金だけではゆとりが無いと考えているのか
年金だけで老後の生活をまかなえるか否かについて、「ゆとりは無いが、日常生活費程度はまかなえる」「日常生活費程度もまかなうのが難しい」、要は「ゆとりが無い」とする回答者に、なぜ「ゆとりが無い」と考えているのか、その理由を選択肢の中から2つまで選んでもらった。その結果の直近年分及び推移が次のグラフ。
まず直近年分。いずれの具体的項目でも二人以上世帯の方が回答値が高い。「2つまでの複数回答」で単純な複数回答では無い以上、すべての回答者が2つの回答をしていれば、どちらかの種類世帯のみが多いことは生じ得ないのだが、実際にはこのような形になった。
回答数平均値を見ても、二人以上世帯では1.76個なのに対し、単身世帯では1.48個に留まっている。それだけ二人以上世帯の方が、ゆとりが無い世帯における不安要素が多岐に渡っていることが分かる。一方で両種類世帯とも、最大の要因は「年金が支給される金額が引き下げられる」とするもの。
経年変化でも、単身・二人以上世帯ともに支給金額の減額を懸念する声がもっとも大きいことに違いは無い(二人以上世帯で一時「高齢者への医療費用の個人負担が増える」の方が高い時代はあったが)。また、以前は「高齢者への医療費用の個人負担が増える」ことを心配する人が多かったが、少しずつ減少している。
このグラフ、状況の推移動向からは、「いくらもらえるか」「いつからもらえるか」が、年金生活における不安の主要因である現状がつかみ取れる。現実問題として支給金額の減額や、支給開始年齢の引き上げが起きていることから、それらへの心配が増すのも道理ではある。
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※家計の金融行動に関する世論調査
直近分となる2017年分は二人以上世帯においては、層化二段無作為抽出法で選ばれた、世帯主が20歳以上でかつ世帯員が2名以上の世帯に対し訪問と郵送の複合・選択式で、2017年6月16日から7月25日にかけて行われたもので、対象世帯数は8000世帯、有効回答率は47.1%。単身世帯においてはインターネットモニター調査で、世帯主が20歳以上70歳未満・単身で世帯を構成する者に対し、2017年6月23日から7月5日にかけて行われたもので、対象世帯数は2000世帯。過去の調査も同様の方式で行われている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。