PTAは活動の参加さえ無理強いしなければ、強制加入のままでもいい?
「PTAで嫌われるのは『必ずやってください』という活動の強制であって、加入そのものをいやがっている人は、そんなに多くない。だから加入はこれまで通り強制でもいいのでは?」そんなふうに思っている人も、多いかもしれません。PTAの加入が強制だと、なぜいけないのでしょうか?
たしかに過去数十年、母親たちを最も悩ませてきたのは「活動の強制」です(*1)。4月の保護者会のクラス役員(委員)決めや、年度末に行われる本部役員決めにおける、クジ引きやジャンケンによる仕事の押し付け合い。活動は仕事や病気でも休めない、等々。
こういった「活動の強制」はなくしてほしいものの、加入のことまではそれほど気にしていない、という保護者が多いのは事実だと思います。
しかし「活動強制」が起きる背景には、必ず「加入の強制」があります。本人がPTAに入りたいかどうかに関係なく会員にしてしまうから、「PTA=義務」という誤解が保護者の間に蔓延し、活動の強制が起きやすくなるのです。ですから活動強制を防ぐために、加入強制をやめることはやはり重要です。
それに「加入の強制」は、すなわち「会費の強制」でもあります。
PTAには「加入の強制」「会費(金銭供出)の強制」「活動(労働力供出)の強制」という3要素がありますが、現状の日本のPTAにおいては「加入」と「会費の支払い」がイコールのことが多いため(加入したら必ず会費を払う)、するとつまり「意思確認なく加入させること」は、「意思確認なく会費を徴収すること」を意味します。
これは言うまでもなく、大問題です。PTAでは見慣れ過ぎた光景ですが、もしほかの団体が同じことをしたら、大騒ぎになるでしょう。たとえば「おやじの会」が全保護者を勝手に会員にして、給食費などといっしょに「おやじの会」の会費を勝手に銀行から引き落としたら、どうなるか? 当然みんな怒って「金返せ」と言うはずです。
PTAも「おやじの会」と同様、加入や会費徴収、活動について、保護者に強制できるような法的根拠を一切もちません。つまりこれらを強制することは違法なわけです。本人の意思にかかわらず勝手に金銭を徴収すれば、一般には詐欺と呼ばれます。PTA会費の強制徴収については訴訟も起きていますが、訴訟で矢面に立つのはPTA会長です。
また「活動よりも、会費の強制のほうがもっと困る」という家庭があることも忘れないでほしいところです。
そういった家庭には「会費免除」の仕組みがあるからいいのだ、という一見親切そうな弁解を聞きますが、これも本当は間違っていると言わざるを得ません。「免除」は「義務」を前提とした概念です。PTAは本来「義務」ではなく、入る・入らないを選べる任意のものですから、それなら「免除」などという恩着せがましい制度は要らないのです。
もし「会費は払いたくない、または払えないけれど、活動はしたい、あるいは会員になりたい」という保護者がいるなら、「免除」という上から目線の名称・仕組みではなく、「無料会員」の枠をつくってはどうでしょうか。現役保護者だけでなく、地域住民や教職員の人たちも、「無料会員」の枠を選べるようにしてもいいかもしれません(ただし議決権なし、などとしてもいいのでは)。
そしてもちろん「無料会員」を選択する人に、理由(家庭の経済状況等)を尋ねてはなりません。PTAに限らず一般の団体は、要配慮個人情報の取得を禁じられています。「免除」についても同様であることは、言うまでもありません。
*少しでもいやな思いをする人を減らすために
昨年度途中(2017年5月)から改正個人情報保護法が施行されたため、2018年度からは自動強制加入をやめ(PTAが違法行為を犯すことになるため)、加入届を配布するPTAも全国的に増えてきました。
しかし一方ではまだ従来の自動強制加入を継続しているPTAも多く、対応が進んでいるところと、遅れているところの差が開いています。
まだ自動強制加入を行っているPTAは、2019年度からはぜひ加入届等を整備して、意思確認を行ったうえで会員を獲得する“ふつうの団体”になってもらえたらと願います。
状況的に「まだどうしても難しい」という場合は、先に「活動強制をやめる」ところから始めてもいいと思います。いやな思いをする人が少しでも減れば、それは貴重な前進です。
- *1 活動強制はほぼ母親のみに働きます。父親は「働いているから」という理由で除外されますが、母親はたとえ仕事を3つ掛け持ちしていても除外されません