徳島県で秋田犬が相次いで遺棄。その背景と飼い主を見つける方法は?
JRT 四国放送は、4月26日に徳島県阿南市橘町小勝島のゴミ処理施設の中にある公園の女子トイレで秋田犬1頭が保護されたと伝えています。
実は、このメスの秋田犬だけではなく、この辺りでは相次いで秋田犬が遺棄されているそうです。具体的には、去年から今年にかけて、徳島市のマリンピア沖洲で2頭、阿南市内で3頭と分かっているだけで5頭の秋田犬が保護されています。
なぜ、このようなことが起こるのか、そして、飼い主の手掛かりはないのかを見ていきましょう。
【秋田犬】捨てられる事例が相次ぐ…子どもを産んだばかり…出血していた犬も 徳島県
4月に保護された秋田犬は、推定2、3歳のメスです。膣から悪露が出ていて、お乳が張っていることから、出産して1カ月ぐらいだと診察した獣医師は推測しています。
つまり、子犬の離乳が済んで遺棄されたのでしょう。
秋田犬は、大型犬です。体重はオスでは27kgから41kg、メスでは23kgから36kgです。チワワの体重が平均で2kgから3kgなので、秋田犬はどれだけ大きな犬か分かると思います。
このような大型犬で出産したばかりの犬ということは、どういうことが考えられるのでしょうか?
産後の秋田犬の遺棄から見えてくるものは?
秋田犬は、日本で公開された映画『ハチ公物語』やそれをリメイクしたリチャード・ギア主演のハリウッド映画『HACHI 約束の犬』があり、その存在はよく知られている犬です。その他にも、少し前にはロシアのフィギュアスケート選手・ザギトワさんに秋田犬が贈られたことが話題になっていました。
その一方で、秋田犬は、日本国内における飼育頭数が激減し、存続が危ぶまれているというぐらい数が少ない犬なのです。
ある統計では、ピーク時は約4万6,000頭もの秋田犬が犬籍登録されていましたが、現在、国内の犬籍登録数は約2,500頭にまで減っています。
この遺棄された秋田犬は繁殖のために出産させられた可能性が高いので、徳島県かその周辺の秋田犬のブリーダーが遺棄したかもしれません。
ブリーダーは、動物の販売を仕事として、それで利益を得ています。その場合は、登録をしなくてはならないのです。
ブリーダーは第一種動物取扱業を営む者ものなので、都道府県知事または政令指定都市の長の登録を受けなければなりません。第一種動物取扱業をしていない人が、犬を売ると法律違反になる可能性があります。
つまり、秋田犬のブリーダーは行政から第一種動物取扱業の登録を受けているはずなので、この辺りを調べると遺棄した人が分かるのではないでしょうか。
日本には、動物愛護管理法があり、動物を遺棄することは犯罪です。
遺棄や虐待をした場合は動物愛護法で1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
このようなことから、警察が協力すれば、遺棄した人を見つけ出す可能性が高くなります。
秋田犬は、なぜ帰らないの?
秋田犬ではないですが、以前、柴犬の迷子を保護した飼い主が来院したことがありました。
「道でウロウロしていたので、保護しました。何か悪いところがないか見てください」と保護主は話しました。その柴犬は、絵に描いたような綺麗な犬でした。「近所の犬ではないのですかね?」と筆者が尋ねると、「柴犬を散歩させているのを見たことがない」と保護主は答えました。
保護主は警察や保健所に連絡し、自宅で飼い始めました。ある日、その柴犬を散歩していると、知らない人に「自分の家の繁殖犬なので、返してほしい」と言われたそうです。
保護主は、その家は近所にあるにもかかわらず、犬に散歩の機会を与えない飼い方をしていたため、言い値を支払い、飼い主に戻さず自分の犬にしました。このように、犬もよく理解しており、楽しい環境ではないと分かれば、一度脱走したらいくら近い距離でも戻ることはないのです。
徳島県で保護された5頭の秋田犬の中には、公園を放浪していた子も含まれています。しかし、彼らが戻らないというのは飼育環境が適切でなかった可能性があります。今回、秋田犬を遺棄した人を見つけ出してもらいたいです。
犬を飼うということは終生飼養が基本です。秋田犬はひとりでは生きていけないので、遺棄することは交通事故の可能性もあり命にかかわることになるのです。