FRBは5月にも量的引き締め(QT)開始か。ところでQTとは何か
6日に公表された3月のFOMC議事要旨では、FRBの大規模な保有資産を月額最大950億ドル(約11兆7600億円)のペースで縮小することが示唆された。米国債を月600億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)は月350億ドルをそれぞれ上限に削減することでおおむね合意。早ければ5月3~4日の次回会合で縮小開始を決定する。
資産縮小はQT(Quantitative Tightening)とも呼ばれる。これはQEと呼ばれた量的緩和策(Quantitative Easing)の反対の動きとなる。
中央銀行の金融緩和策として、政策金利の引き下げではなく、国債などの資産を大量に買い入れて緩和効果を出すのが量的緩和策である。それに対して量的緩和策からの出口政策としてQTと呼ばれる資産縮小がある。
国債などは償還したものを乗り換えず自然に減少させる手段があるが、資産縮小を急ぐには保有資産を市場に売却するという手段もある。今回、FRBは前回の2017年から2019年にかけて行ったQTのほぼ倍のペースを想定しているようである。
3月のFOMCでは政策金利を0.25%引き上げることを決定した。多くの参加者が3月は0.5%の利上げが望ましいと考えたが、ロシアのウクライナ侵攻に伴う不確実性の高まりを踏まえて見送ったためだ。
これにより5月のFOMCでは、0.25%ではなく0.5%の利上げが決定される可能性も強まった。
FRBは予想以上のペースで正常化か金融引き締めを進める姿勢であることが、あらためてFOMC議事要旨で示された。
QTは米国債券市場では需給バランスからみれば当然売り材料となり、いわゆる過剰流動性相場の終焉が意識されれば株式市場にとっても売り要因となる。
ECBは3月の理事会で、資産買い入れ策を第3四半期に終了する方針を決定したが、利上げは見送られた。
3月のECB理事会の議事要旨によると、かなりの数の当局者が一段の措置を取る必要があると主張したことが判明。「多くの当局者が、インフレが高水準にあり、かつ根強いことを踏まえると、金融政策の正常化に向けた一段の措置を直ちに講じる必要があるとの見解を示した」ほか、利上げに向けたフォワードガイダンスの条件は「すでに満たされたか、もしくは極めて近く満たされる」との考えが示された(7日付ブルームバーグ)。
ECBも今後、年内にも利上げを決定することが予想され、マイナス金利政策を解除するとみられる。
イングランド銀行は3度の利上げを実施したが、ここでいったん追加利上げの必要性については表現をトーンダウンさせた。しかし、物価上昇圧力がさらに強まることも予想され、利上げをいったん停止するかどうかは不透明である。