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【板倉滉】 オランダリーグ35戦フル出場で得た自信。「それを日本代表でも発揮したい」

中田徹サッカーライター
プレーオフのユトレヒト戦で今季のオランダリーグ全日程を終えた板倉滉 【中田徹】

■「信用して使ってもらっていることに感謝しかない」

 今季の板倉滉(フローニンゲン)はオランダリーグ・レギュラーシーズンで34試合、プレーオフで1試合、合計35試合にフル出場した。

「やっぱり嬉しいですよね。振り返ってみると、充実したシーズンになったと思います」

 2019年1月、マンチェスター・シティからのレンタルでフローニンゲンに加入した板倉だったが、当初はデニー・バイス監督から見向きもされず、出場機会ゼロでシーズンを終えた。

 2季目の19−20シーズンは開幕から主力のメミセビッチが長期離脱したことからレギュラーの座を掴み、16試合連続フル出場を果たした。当時、私は「本当に板倉はいい選手だ」という声を何度も現場で聞いた。しかし、17節から23節まで、なんの前触れもなく板倉はポジションを失ってしまった。この不可解な出来事にクラブの番記者たちは「今季いっぱいでレンタル契約が切れることが影響しているのだろう」と分析していた。

 昨季終盤戦の一時期、不遇な時期を過ごした板倉だったが、実力面では申し分なく、今季も乞われてフローニンゲンでプレーした。時にチームの守備が乱れても、次の試合で外されるCBはファン・ヒントゥム、ダマース、テ・ウィーリクのうち誰か。オランダに来てからの2年半で、板倉はバイス監督にとって決して欠かせぬディフェンスリーダーになった。

「最初フローニンゲンに来た時、僕は6ヶ月で1分も出なかった。別に監督が代わったわけでもなく、同じ監督が今もやってる。そこに自分が積み上げてきたものもある。こうやって今、信用して使ってもらっていることに感謝しかないです」

■ この1年で一番伸びたのは自信

 オランダで試合に出始めた頃の板倉は、相手のロングボールに対して味方のMFに競らせ、自身はこぼれ球を拾う準備をしていた。また、DFラインの調整はテ・ウィーリクを軸に行っていた。しかし、今季の板倉は違った。ロングボールに対して自ら競り合いに行くようになり、DFラインのコントロールも主体となって行った。冬の移籍市場でテ・ウィーリクが古巣に戻ってきたが、序列は完全に逆転して板倉がDFリーダーとして振る舞っていた。そんな板倉がこの1年で伸びた点はなんだろうか?

「まだまだ全然足りないところもあるけれど、個人としては試合にこれだけ出させてもらって自信がついたなというのはありますね。去年も結構出させてもらいましたが、ともかく一生懸命個人にフォーカスしてプレーしてました。しかし、今季はキャプテンマークをつけたこともあったし、長くフローニンゲンでプレーしていることもあって『どうやったらチームがいい方向へ進むかな』というのをすごく考えるようになりました。そこが伸びたところ。

 サッカーはやっぱりメンタルスポーツだと思います。自信をもってるだけでプレーって変わってくるんです。それでも自分の一個のミスで失点したゲームもあり、メンタルのブレで難しいこともありましたが、試合をこなしながら最後まで来ることができました」

 今季は板倉滉が『フローニンゲンのローカルスター』から『オランダリーグ屈指のCBの一人』になった年だった。フローニンゲンのチーム最優秀選手に選ばれたことに納得だ。また、オランダの公共放送NOSの『ストゥディオ・フットボール』ではテオ・ヤンセン氏(フィテッセ、トゥエンテ、アヤックス)が板倉をベストイレブンに選出した。

■ 「欲しい」と言ってくれるチームに行きたい

 来季の去就は不明だ。昨年冬にはフローニンゲンのテクニカル・ダイレクターが「板倉をもう一年、マンチェスター・シティから借り受けるのは不可能」と表明したが、今年に入ってから「来季も残ってほしい」と言い出し始めた。その都度、チームメートから「お前、まだフローニンゲンの選手なんだから集中しろよ」とか「あれ、来季も残る気になったのか」など板倉はいじられているという。

「フローニンゲンに残るか移籍するかもわかりませんが、ステップアップをしたいですよね。『欲しい』と言ってくれるチームに行きたいです。日本代表で頑張ればいい話が来るかもしれませんが、先のことはわかりません。今季1年はともかく目の前の試合だけを考えてずっとやってきました。その姿勢を変えること無くいやり続けた結果、いい話をいただけたらなという思いです」

 オランダで、板倉は代表戦に向けてこう誓っていた。

「オランダでこれだけ試合に出たという自信を代表でも発揮するだけ。やれる自信はあります。これからオリンピックがありますが、自分はA 代表でもプレーできるようにならないといけないと思ってます。スタメンを奪いに行って、がむしゃらにやるだけです」

 日本代表は5月28日、ミャンマーとワールドカップ予選を戦う。

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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