スマホに夢中な若者たち、でも本当にスマホだけが原因なのか
3/4は「暇さえあればとりあえず触る」
まずは総務省の情報通信政策研究所が今年7月に発表した、「青少年のインターネット利用と依存傾向に関する調査」から。若年層を対象としたもので、今項目は一般携帯電話(フィーチャーフォン)とスマートフォン保有者それぞれにおいて、各携帯電話との接し方を尋ねたもの。一番左の「することが無い時にとりあえず触れる」の項目では、スマートフォン保有者は72.6%もの人が同意を示している。
次項目の「家に置き忘れると不安」でも高い値を示していることからも分かるように、スマートフォンを持つ若年層は、それが手元にないと不安を覚えるため、年中操作している状況といえる。子供の縫いぐるみ、「ザ・ピーナッツ」に登場するライナスのタオルのような存在だろう。
「持っている」だけではなく、「アクセス対象」が重要
もちろん単に持っているだけではなく、具体的に操作をして、各種サービスを利用することで初めて心の安寧を得られることは言うまでもない。博報堂DYホールディングスが2013年7月に発表した、スマートフォンユーザーを対象にした調査結果では、若年層ほどスマートフォンでSNS(Facebook、mixi、ツイッター)の利用度、さらにはアクセス頻度も高いことが判明している。自前のパソコンを持っていない人の割合が多いのも一因だが、むしろ若年層のライフスタイル・インターネット生活がスマートフォンを中心に回っており、その中にSNSが含まれているだけと考えた方が、道理は通る。
昨今のSNSが多分にスマートフォンで利用しやすい専用デザインを用意しているのも、この結果を見れば納得できるというものだ。また先日四半期決算短信を発表したミクシィの資料を見ると、主要事業であるmixiにおいて、スマートフォンに経営リソースを重点配置していることが明らかになっているが、これらのデータを見れば納得がいく。
熱中度が過度なものになると、歩いている最中でもスマートフォンを操作したくなる。いわゆる「歩きスマホ」というものだが、これについてリビジェンが調査をした結果が興味深い。「歩きスマホ」経験者(スマートフォン利用者の86.8%)に、「歩きスマホ」では主に何をしているかを聞いたものだが、「SNS」と「メール」でほぼ2/3を占めていた。
ゲームに夢中なのでは、と思う人も多いだろうが、実際としては「もっとも利用している」ものとしては順位は4番目となる。
スマートフォンは後押ししているだけ、問題は過度のコミュニケーションへの欲求にあるのでは
SNS、そしてメール。いずれもコミュニケーションの手段に他ならない。そしてスマートフォンを活用することで、それらはよりスピーディーに、多方向性・多次元性へと進歩していき、当然面白み、熱中度もこれまでのとはケタ違いのものとなる。
かつて一般携帯電話(フィーチャーフォン)が主流だったころは、メールやSMSのやり取りに夢中になり、暇さえあればやり取りをする人が、特に若年層に多かった(携帯でメールの返事が無い場合、四人に一人は「とても不安」に)。スマートフォンでもメールの送受信によるコミュニケーションそのものに変わりはないが、操作性は向上している。つまりより迅速に、より的確に、より多くの「気持ち」を伝えることが可能となる。写真や動画の添付も思うがまま。依存性が高くなるのも当然。
そしてスマートフォンの高性能を存分に活用でき、不特定多数が参加して更新頻度もより高いSNSが使えるようになったことで、SNSがやり取りの主流となり、一層熱中・依存する対象として注目されている。
メールならば相手からの返事が来なければ、状況に変化はない(無論、自分から出す場合もある)。だがSNSでは、自分がリアクションをしなくとも、数分のうちに状況は変わりうる。
メールがそのまま手紙によるやり取りならば、SNSは井戸端会議のようなもの。ほんの数分席を外していた間に、話があっという間に進展してしまうかもしれない。その変化が気になり、内容を確認すべく、つい「歩きスマホ」をしてしまう……という次第である。少しでも話に乗り遅れると、自分が置いて行かれた、仲間外れにされた感すら覚えてしまう。それがとても怖いに違いない。前日のテレビ番組に関する話題を話のネタにしている中で、その番組を観損ねていたばかりに、話に乗れず、孤独感を覚えるようなものだ。
また上記グラフには無いが、「LINE」に代表されるオンラインチャットは、メールとSNSの中間的な立場にあり、やはり夢中になる対象として多くの人に利用されている。
そして今の若年層は、多種多彩な、そして大量の情報にさらされ、判断を求められていることもあり、コミュニケーションが出来ない状態を過度に嫌い、恐れる傾向がある。いつでも、どこででも何らかの形でつながっていないと、それこそ無人島にいるかのような孤独感を覚えてしまう。見方を変えれば、リアルな対面でのコミュニケーションでないために、一つ一つの交流の濃度が薄く、だからこそ大量のやり取りを求めるようになるともいえる。
その孤独感を避けたいがため、仕切りなしにスマートフォンを操作し、メールをやりとりしたり、SNSで更新内容を確認していく。彼ら・彼女らにとって、スマートフォンは心の支えとなる「コミュニケーション」の窓口に他ならない。
若年層のスマートフォン依存症候群的な傾向は、スマートフォンそのものにあるというよりは、スマートフォンの高機能に後押しされる形で増幅した、コミュニケーションへの過度の傾注、コミュニケーション症候群として見るべきではないだろうか。単純にスマートフォン周辺の縛りを強化しても、根本的な問題に視線を向けなければ、解決は難しいものと思われる。
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