人身売買に略奪…中国で対北感情が悪化する理由
中朝関係が悪化していることは、本欄でも繰り返し述べている。とりわけ今月3日、中国・北京で開催された「抗日戦争勝利70周年記念式典」における、中国の北朝鮮に対する冷遇ぶりを見る限り、両国の関係改善は当分の間は難しいようだが、政治レベルだけでなく、民間レベルでも悪化の一途を辿っているようだ。
中国には、外貨稼ぎのために多くの北朝鮮人が働いており、その労働者を管理するために外貨稼ぎ機関の幹部達も派遣されている。この幹部達が、レストランなどで「オンナを呼べ」などと、大騒ぎして追い出されるケースが後を絶たないという。しかも、彼らはあえて朝鮮族のレストランに行って羽目を外す。北朝鮮が経営するレストランでは、本国に報告されかねないからだ。
こうした酒の席での粗相のみならず、中朝国境地帯で朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士たちの略奪行為や脱北、そして殺傷事件は後を絶たない。4月には脱北兵士が国境を越えて中国人を殺害する事件が発生。この事件は、中朝外交関係にまで発展したことから、北朝鮮当局は多数の逮捕者ならびに兵士を銃殺刑に処した。
中国国内での対北感情悪化の原因の一つに、中国人犯罪組織と北朝鮮軍人らがグルになった犯罪が多発していることもある。中朝犯罪組織による悪名高き犯罪の一つが「人身売買」だ。
中国には、北朝鮮の生活苦から逃れるため脱北した女性が多数潜伏しているが、中国の人身売買組織と北朝鮮国内のブローカー、さらに北朝鮮軍人がグルになって、若い女性を中国の河北省や黒竜江省などに売り飛ばしている。
なかには、17歳で人身売買の被害にあった脱北女性もいるが、この女性によると、「まだまだ幼い北朝鮮の女性たちが中国で人身売買の被害にあっている」という。
筆者が中朝国境を取材で訪れた時、ある朝鮮族の男性から次のような言葉を聞いたことがある。
「以前は、食べられない北朝鮮住民が命がけで中国に渡ってきたことから、可哀想で助けたもんだ。同じ民族だからね。でも、悪いことをするヤツらが増えた。今では、中国の犯罪組織とグルになって中国のイメージを悪くしている厄介者だ」