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中国で羽生結弦さんのこだわり「1」に共感と納得が広がるワケ

中島恵ジャーナリスト
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

プロフィギュアスケーターで冬季五輪2連覇を成し遂げた羽生結弦さんが8月4日、結婚を発表した。このビッグニュースに、日本のみならず、熱狂的なファンが非常に多いことで知られる中国でも、報道後、たちまちウェイボー(中国のSNS)でトレンドランキング第1位に躍り出るなど注目を集めた。

結婚発表は午後11時11分

中国でも「お相手は誰?」「失恋した……」「おめでとう」「まさか、ビックリした」など日本人と同様のコメントが飛び交ったが、とくに注目されたのが羽生さんの「1」へのこだわりだった。

結婚発表時刻は日本時間の午後11時11分。これまでの選手生活でも「1位」(トップ)になるために努力を積み重ね、「1」への思い入れが強い羽生さんだったが、プロ転向後も、午前1時11分に公式X(前のツイッター)を初更新するなど、時刻に対しても細かいこだわりを見せていた。また、この日(8月4日)はめったにない「一粒万倍日」「天赦日」「大安」が重なるという、特別な日でもあった。

そうした日であったことから、中国のSNSでもそこに着目した人が少なくなく「柚子(羽生さんの中国での愛称)らしいこだわりが見えた」「さすがだ」「中国人も数字にこだわる人がいるので理解できる」といった反応があった。

中国人の数字への強いこだわり

むろん、日本でもラッキーセブンの「7」や末広がりの「8」などを好む傾向があり、車のナンバープレートなどに使用する人もいるが、中国人のこだわりは格別で、日本以上だ。

とくに日本にはないものとして挙げられるのは結婚式(披露宴)の開始時間だ。招待状に「午前11時58分開始」などと書いているものが少なくない。ピッタリの開始時刻ではなく、わざわざ「8」など中国でも縁起がいいとされている数字を入れるのだ。

これは結婚式に限らず、お店の新規オープンなどにも使用する。大都市では最近はあまり見かけなくなった風習だが、両親や祖父母などが気にして、このような時間を設定することもある。

また、日本でもマンションの4階や、404号室などをなくしたりすることもあるが、中国でも「4」は「死」と同じ発音であるため縁起が悪いとされており、使用しない。

気にする人はホテルに宿泊する際、わざわざ「8階」を指定するし、在日中国人の中には居酒屋の靴箱で必ず「8」「6」「9」(中国でよい数字)を選ぶ人もいるほどだ。

中国で有名な企業、アリババが運営しているサイトのひとつ「1688.com」なども、中国人が見れば、縁起のいい数字を並べていることに気づく。2008年に開催された北京オリンピックの開幕時間は8月8日、午後8時08分だった。

こうした縁起担ぎをずっとしてきた中国人から見ると、羽生さんの「1」への強いこだわりは共感できるし、羽生さんがこれまですばらしい成績を収めてきたことにも納得できる。そんなところも羽生さんが中国で高い人気を誇っている理由のひとつだろう。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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