バカンス集団と満席の機内で「ついてない!」襲った出来事とは?
オランダ在住のひかさん夫婦。夫がイタリア出張からの帰りの機内、バカンスシーズンでの帰りの人達とでくわしました。
旅の帰り道、空港の雰囲気は行きとはまるで別物。特にオランダの人々の帰りの飛行機は、それ自体がバカンスの延長線上。機内には、太陽の下で過ごした日々の名残を肌に刻んだ家族やグループが「また来年もここに行こう!」と盛り上がる声が響きます。
ところが、その賑やかな雰囲気の中に紛れ込んでしまった一人の男性。彼の旅は「バカンス」ではなく「出張」だったのです。そう、それは私の夫――仕事の疲れを抱え、なんとか機内で休息を取ろうとしていたのでした。
ところが、運命は彼を甘やかしてはくれませんでした。
隣に座ったのは、見事に機内で一番テンションが高いバカンス帰りのグループの中心人物。すでに席に着くや否や、自撮りや思い出話に大忙しで、夫が密かに期待していた「静寂」なんて微塵もない状況です。「これは眠れないな」と諦めた夫は、タブレットで動画でも観ようとしたのですが、ここでも不運が続きます。
ポケットの底、破れてるじゃないか!
タブレットは予想外の重力に従い、ストンと床に落下。夫は疲れた肩を落としながら、「まあ、これも人生だ」と微かに苦笑いを浮かべるのでした。
このような光景を目の当たりにしながら、「オランダの人々はどうしてこんなにも元気でバカンスを満喫できるのだろう」とふと思うのです。答えは、彼らの素晴らしいバカンス制度にあります。
オランダでは、法律に基づき、労働者には最低年間20日の有給休暇が保証されています。しかも、この休暇は給与100%支給という心強いもの。多くの企業ではさらに余裕を持たせて、25日程度の休暇を提供していることが一般的です。働いた分だけしっかり休む、という考え方が根付いています。
さらに注目すべきは、年に一度支給されるバカンス手当(Vakantiegeld)。これがまた嬉しい仕組みで、基本給の8%が、夏前の5月や6月に「さあ、遊ぼう!」という形で振り込まれるのです。この手当は「バカンスのためだけのお金」というのが暗黙の了解。オランダ人たちが「休暇を存分に楽しむ文化」を持つのも頷けます。
夏休みには、オランダ人の多くが2~3週間の長期休暇を取り、心身ともにリフレッシュして帰ってきます。帰りの飛行機でのテンションの高さを見ると、その充実ぶりが伺えます。家族や友人との絆を深め、笑顔で仕事に戻れるからこそ、オランダの労働生産性は高いのです。
さて、そんなバカンステンション全開の隣席のオランダ人たちを横目に、夫は少し疲れた顔をしてつぶやきます。「次こそは、出張じゃなくてバカンスで来たいな」。