“謝罪イヤー”となった2016年、一番うまく謝ったのは…?
“ゲス不倫”や事件、トラブルが相次いだ2016年の芸能界。同時に、多くの謝罪会見も行われました。何かあれば、会見で謝る。そして、謝罪の良し悪しがその後の活動を左右する。この流れが一気に加速した年でもありました。実際に、筆者が足を運んだ会見の中からとりわけ印象的なものを挙げると同時に、果たして、良い謝罪とは何なのか。今一度、検証してみたいと思います。
印象に残った2つの会見
今年、実際に取材した謝罪系の会見は、主なところで桂文枝、ファンキー加藤、ベッキー、三遊亭円楽、高島礼子、高畑淳子、中村芝翫(当時は中村橋之助)など。もちろん、それぞれ謝る事柄の種類も大きさも違う。並列に語ること自体、ナンセンスなことは承知で綴るならば、特に印象に残ったのは、奇しくも同じ日に行われ2つの会見だった。
1つは、6月10日午後1時から都内のスタジオで行われたベッキーの仕事復帰会見。1月6日の会見での対応に加え、その後に「週刊文春」に掲載されたLINEでのやりとりが騒動をより大きなものにしたという意識が強かったのか、この日のベッキーの様子は快活で達者なテレビのイメージとは全く違うものだった。
あらかじめ床に貼られていた立ち位置を示すテープから微動だにすることなく、物言いも、実に、実に、慎重。そして、この日、ベッキーの写真を約60枚撮影したが、驚くべきことにどの写真の顔もほぼ同じ表情だった。文言や表情は激しいものではなかったが、逆に、絶対に会見でしくじれない、この会見をしっかりと終えて本格復帰をするんだという気持ちが見て取れた。
もう1つは、同日午後2時から都内のホテルで行われた三遊亭円楽の不倫騒動謝罪会見。まず、会見冒頭10分ほどかけて、謝るべきことはしっかりと謝る。そこからは自身の不倫記事を出した雑誌記者が会見場にいることを確認し、その記者をいじる。馴染みのリポーターも巻き込んで、男女問題に関する持論を展開する。高座さながらに笑い、そして、拍手までもが沸き起こる会見となった。そして、会見後は報道陣一人一人を、丁寧にお辞儀して見送る。不倫謝罪会見の一つの完成型とも言えるもので、個人的には、今年一番感心したのがこの会見だった。
最後の“カード”は被害者が持つ
今年はさまざまな事件、騒動が芸能界に頻発した。それに伴い、謝罪会見も次々と行われ「何かあったら、会見で謝るのが当たり前」という意識が根付いた“謝罪イヤー”とも言える。
昨年、退社するまで吉本興業で35年間広報担当を務め、島田紳助氏の引退会見などの会見を仕切って、著書「よい謝罪」を上梓した竹中功さん(57)は「誰に何を謝っているのかを見誤ると、余計に火の手が大きくなる」と言葉に力を込める。
所属芸人の事件、事故、あらゆるトラブルを担当してきたが、「一番は正確に、細かいところまで状況を把握すること。そうすれば、おのずと謝らなければならないことが見えてきます。そして、肝に銘じておかなければならないのは、謝罪の結果、『もうこの話は終わり』という最後の“カード”は被害を受けた方だけが持っているということ。謝る側が『もうこれだけ謝ったんだから、いいだろう』というのはあり得ない」と話す。
シュミレーションを本気でやる
さらに「究極の考え方は“未病”だと思っているんです。謝るような事態を起こさないということ。ただ、それでも起こる時はある。そのために、何もない時、平和な時、余裕がある時に、いざ謝ることになったら、どうすべきか。謝るアタマの柔軟体操というか、シミュレーションを本気でやっておく。これは企業でも、あるいは個人でも、思い立った瞬間からできることですから」と経験をもとに呼びかける。
改めて、謝り方が問われることになった2016年の芸能界。2017年も、謝罪の良し悪しがあらゆる分岐点を生むことになりそうだ。