「アベコベ」になった「アベノミクス」=安倍政権、デフレに向かって逆走中!?
デフレからの早期脱却を目指していた安倍政権だが、最近はむしろ物価を押し下げる方策が目立ってきた。代表的な事例は、携帯料金の値下げだ。その影響の度合いによっては「物価はマイナスに落ち込むかもしれない」(証券会社アナリスト)という。市場では「物価を上げるはずの『アベノミクス』はアベコベになり、デフレに向かって逆走するかのようだ」(銀行系証券アナリスト)と指摘されている。
携帯大手に値下げを求める菅官房長官だが…
NTTドコモは先月31日、携帯電話料金を2019年4~6月に2~4割引き下げると発表した。これは菅義偉官房長官が8月に「4割程度下げる余地がある」と述べ、携帯料金引き下げを求める考えを受けたものだ。NTTドコモの値下げ表明を受けて菅官房長官は「納得できる料金でのサービス提供を早く実現してほしいとの思いに変わりはない」と改めて携帯大手の各社に値下げを求める考えを示した。
もとより、携帯値下げは、消費者には朗報だ。ただし、消費者物価には押し下げ方向に働く。携帯料金の消費者物価における比重が大きいこともあり、「4割の値下げが短期間に実現すると、物価はマイナス圏に落ち込む恐れがある」(先の証券会社アナリスト)との分析も聞かれる。物価を押し上げてデフレ脱却を図るはずの「アベノミクス」が、今や物価押し下げにまい進する、というアベコベが生じている。
消費税上げや外国人労働者受け入れもデフレ圧力
このほかデフレ脱却に逆行するのが、消費税の再引き上げだ。財政健全化のためにはやむを得ない措置だが、14年4月の消費増税が「景気を減速させ、物価の下押し圧力になった」(日銀幹部)のは記憶に新しい。安倍政権は今度の増税では景気に配慮する構えだが、それでも「増税で消費は落ち込み、物価にはマイナスだろう」(大手邦銀)とみられる。再度の消費増税もアベノミクスのアベコベ化だ。
さらに外国人労働者の受け入れ拡大もデフレ脱却に逆行する。日銀は、賃金上昇が続いてデフレから脱却する、とのシナリオを描く。賃金が上がる最大の要因は人手不足だ。ところが、企業にとって人件費増大は経営の圧迫要因。人手不足による人件費増大を恐れた企業の要望を受けて、安倍政権は外国人労働者の受け入れ拡大に踏み切った。「企業には朗報だが、賃金上昇は鈍くなり、デフレ脱却は進みにくい」(同)と考えられる。
デフレに向けて逆走するアベコベノミクスに
政府と日銀は13年1月の共同声明で「デフレからの早期脱却に取り組む」ことを公約した。残念ながら、日銀の大規模緩和は「2年で物価2%を達成する」ことに失敗し、その後の緩和努力は虚しく空回りしている。一方、政府側は消費税の再引き上げでデフレ圧力を加え、携帯料金値下げや外国人労働者の受け入れ拡大でさらにデフレ圧力を促進している。デフレから抜け出すのではなく、実はデフレに向かって逆走している、という「アベコベノミクス」になったのが現状だ。