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規模は3.3兆円…日本のお菓子業界の現状を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 多彩なパッケージによるお菓子が並ぶ。それはまるで宝石箱のようでもあり…

2015年は3兆3254億円、日本のお菓子業界の現状

お菓子は老若男女を問わず食生活に彩りを添え、憩いのひと時を与えてくれる、憧れのアイテムに他ならない。そのお菓子の業界規模は、全国菓子卸商業組合連合会と全日本菓子協会が共同で設立したe-お菓子ねっと製販代表会議運営による「e-お菓子ねっと」が発表している年次レポートによれば、2015年時点で3兆3254億円(小売りベース)に達している。今回はこのレポートをベースに、複数面から日本のお菓子業界の現状を確認していくことにする。

まず都合7年間における主要区分別のお菓子の販売動向を記したのが次のグラフ。

↑ 菓子小売金額の構成比率(2009年~2015年)
↑ 菓子小売金額の構成比率(2009年~2015年)
↑ 菓子小売金額(2009~2015年、億円)
↑ 菓子小売金額(2009~2015年、億円)
↑ 菓子小売金額(2015年、億円)
↑ 菓子小売金額(2015年、億円)

昨今の高齢化を受けて米菓のシェア・売上高は伸びを示している。一方で意外にも和生菓子の伸び悩みが目立つ。また洋系の菓子ではチョコレートが堅調、スナックも順調だが、ビスケットやチューイングガムは厳しい。特にチューイングガムは元々小さめだったシェアがさらに縮小している。

意外といえばコンビニの独自ブランドによる積極展開で一見順調そうに見える洋生菓子も、継続的に売り上げが落ちている実態が確認できる。もっともその分チョコレートが伸びていることから、消費者サイドとしては広い範囲での洋菓子の中で、洋生菓子からチョコレートへのシフトが起きているだけなのかもしれない。

直近となる2015年に限った動きを見ると、大よそ昨年までの流れを踏襲しているように見えるが、チョコレートの継続的な飛躍とビスケットのトレンド転換の確証が見受けられる。チョコレートは健康ブームによる機能性をアピールした商品がヒットしたのが貢献しており、また冷夏で夏の需要の落ち具合が最小限に留まったのが幸いしたのだろう(夏はチョコレートが溶けやすいことから、気温が上がるとセールスが落ちる)。ビスケットも前年比で増加しているが、対観光客需要の増加、イベントものの展開の堅調さ、加えて前年同様にシニア層への受けによるものと考えられるソフトビスケットの人気ぶりが要因。

各項目のすう勢が良くわかるように、直近3年分に限定した売上高前年比を算出した結果が次のグラフ。

↑ 菓子小売金額前年比(2013~2015年)
↑ 菓子小売金額前年比(2013~2015年)

米菓、チョコレート、ビスケットは概して堅調、和生菓子は地味ながらも良い動き、飴菓子は大きく復調の動き(グミが好調となり全体をけん引した)、油菓子やせんべいは軟調さが続いていたが2015年は復調に転じる、チューインガムは勢いを減じているものの、下落基調に変わりはないことなどが分かる。チューイングガムは年ベースで2011年以降毎年5%以上の前年比マイナスを計上していた2014年までと比べればまだ大人しめだが、主要項目区分別ではもっとも下げ率が大きいことに変わりは無く、抜本的な対策が求められる状態となっている。

今世紀に入ってからの売上推移を見比べる

チョコや米菓の堅調さ、ガムの軟調さが目に留まるが(お菓子コーナーや新作動向を見るに、大体イメージと一致する)、その動きはいつごろからのものなのか、もう少し過去にさかのぼり、確認していくことにする。

2001年以降の各種類別売上高を逐次抽出し、21世紀のはじめの年として区切りが良い2001年の値を基準値100.0%と設定。2002年以降ではその基準値と比較してどれだけ増えたか減ったかの割合を示したのがを算出し、グラフ化したのが次の図。個々の大本の売れ行きに左右されず、種類別の動向が良くわかる。

↑ 種類別・お菓子の小売金額推移(2001年の額を100%とした時の推移)
↑ 種類別・お菓子の小売金額推移(2001年の額を100%とした時の推移)

「せんべい」は一様に下げ続けているが、類似品ともいえる「米菓」は年々順調な伸びを示している。シンプルな「せんべい」から、より変化の富んだ「米菓」へと趣向がシフトしている可能性が見えてくる。

事象の単純化と割り切り、プラス圏とマイナス圏で区分すると、「飴菓子」「チョコレート」「ビスケット」「米菓」「スナック菓子」「油菓子」はプラス圏、「チューイングガム」「せんべい」「洋生菓子」「和生菓子」はマイナス圏での推移となる。さらに2007年の景気後退開始以降、「ビスケット」「油菓子」のトレンドが下げに転じた雰囲気を見せ、「チョコレート」は逆にプラスに動きの方向を変えている。2014年以降はそれらのトレンドがいくつかの種類で加速化、あるいは転換した動きを見せており、大きな消費の変化が起きていることも見受けられる。中でも「和生菓子」や「飴菓子」、そして「ビスケット」の復調は注目に値する。

「せんべい」「チューイングガム」の下落傾向は深刻で、特に「チューイングガム」は10年強の間に売り上げを3割強も落としてしまっている。消費性向の大規模な変化も一因だが、幼少期の子供達の間にもガム離れが生じており、原因は年齢構成の変化のみに留まらない。昨今のガム業界ではしきりに大きなプロモーションを実施したり、奇抜な発想の新商品が送り出されているが、その理由の一端がこのグラフに表れている。

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単価が安くて容易に心の安らぎを得られるお菓子類は、比較的不景気の影響を受けにくい。砂糖をはじめとする原材料の高騰の影響は避けられないが、それでも他の小売商品と比べれば、景気による売り上げ減は最小限のものに留まっている。むしろ売り上げを地道に伸ばす種類もある。

企業としては利益を得なければならず、売り上げだけで万事OKではない。しかしまずは売れなければ話にすらならず、売り上げを伸ばすのが成長には欠かせないのもまた事実。その観点から見れば、もちろん努力は重ねた結果であるとはいえ、「総額」の値がほぼ100%を維持しているお菓子業界は、比較的手堅い業界といえよう。同時に、ここ2、3年の上昇は原材料の高騰化や消費税率の引き上げも一因なため、市場規模の金額的拡大は果たしても、収益状況の改善が成されたかについては分からない。

他方、チューイングガムのように、時代の移り変わりと共に危機的な状況を迎えている種類があるのも事実。お店に並ぶ多様な彩りのお菓子を眺めながら、個々の種類のすう勢を思い起こせば、今までとは違った感想を抱くこともできよう。

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ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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