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ジェームズ・キャメロンと、4番目の妻リンダ・ハミルトン。30年以上にわたる波乱万丈の関係

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「ターミネーター2」のたくましいボディで世界を圧倒したリンダ・ハミルトンも60歳(写真:Splash/アフロ)

「I’ll be Back!」。

 この名せりふを、書いた本人がつぶやく時が来た。次の「ターミネーター」には、なんと、シリーズの生みの親ジェームズ・キャメロンが戻ってくるのだ。

 1作目を作った時、まだ無名の監督だったキャメロンは、この映画を実現させるために、映画の権利をたった1ドルで製作会社に売っている。「ターミネーター2」を大成功させた後、3作目を作るつもりだったが、脚本は完成しないまま、権利をもっていた会社が倒産。権利はまた別の人たちの手に移り、キャメロンが関わらない形で、3、4、5作目が作られることになった。それら3作は、批評面でも、興行面でも、ぱっとしないで終わっている。

 最初の2作を愛するファンにとって、またキャメロンの「ターミネーター」を見られるというのは、最高のニュースだ。もちろん、アーノルド・シュワルツェネッガーも出演する。「アバター」続編4作で忙しいキャメロンは、 監督こそしないものの(監督には『デッドプール』のティム・ミラーが決まっている)、ストーリーは彼が作り、脚本もミラーと共同執筆するという。

 さらに驚くことに、今作には、リンダ・ハミルトンがサラ・コナー役で戻ってくるというのだ。逃げまどうばかりだった1作目から豹変し、息子を守るために鍛え上げた体で登場した2作目のハミルトンは、当時、新しい女性像を打ち立てている。

 60歳になった彼女がどんなふうに暴れ回るのか楽しみだが、このふたりがどのように仕事をしていくことになるのかも、同じくらい気になるところだ。ハミルトンは、キャメロンの4番目の妻。5番目にして現在の妻であるスージー・エイミスと天秤にかけられていた時期もあり、キャメロンとは複雑な関係を築いてきたのである。

交際歴は長いが、結婚生活は8ヶ月で破綻

「ターミネーター」(84)の製作が始まった時、キャメロンは、トラック運転手だった18歳の時に出会ったウエイトレス、シャロン・ウィリアムズと結婚していた。夫妻は製作中に破局、キャメロンは映画のプロデューサーだったゲイル・アン・ハードと85年に結婚する。

 キャメロンとハードのコンビはその後、「エイリアン2」(86)「アビス」(89)を作るが、「アビス」製作中に不仲になり、89年に離婚。同年、キャメロンはキャスリン・ビグローと結婚した。出会いのきっかけは、映画に出す俳優を探すために、キャメロンがビグローの撮影現場を訪れたことだ。

 しかし、この3度目の結婚も長続きしなかった。最終的に離婚に至った原因には、キャメロンが、「ターミネーター2」(91)の撮影中にハミルトンと親密な関係になったこともあると言われる。実際、夫妻が91年に離婚すると、ハミルトンはすぐにキャメロンの家で同棲を始めている。93年には、長女も誕生した。

 1作目の撮影で、キャメロンとハミルトンは喧嘩ばかりしており、最終的につきあうようになったことには自分でも驚いたと、ハミルトンはメディアに対して語ったことがある。同棲を始めてからも、ふたりの関係は波乱万丈で、何度かくっついたり、離れたりした。ハミルトンは結婚を望んだのだが、すでに3度離婚歴があるキャメロンが渋ったのも衝突の原因だったようだ。

  キャメロンが「タイタニック」の現場で女優のスージー・エイミスと親密になったのは、ふたりが別れていた時。結局キャメロンはハミルトンに戻ることを決め、97年、ようやく結婚する。だが、その8ヶ月後には別居し、「タイタニック」(97)がオスカーを取ってまもなく、ふたりは離婚を発表した。

「タイタニック」公開時に正式に夫婦だったことから、ハミルトンは離婚でキャメロンから5,000万ドル(約56 億円)を手にしている。離婚が正式に成立したのは99年。翌年、キャメロンはエイミスと結婚した。ふたりは今年、結婚17年目を迎える。最初の結婚が16年だったので、これはキャメロンにとって最長記録だ。

彼との結婚はすべての面で辛かった

 自分と離婚するやいなや、すぐ次の相手と結婚するようなことをしてきたにも関わらず、キャメロンは、元妻たちと、基本的に良い関係にあるようだ。 ビグローは、「ハート・ロッカー」を監督するかどうか決める前に脚本をキャメロンに見せたそうだし、彼女がすばらしい映画にしてみせたせいで自分の『アバター』がオスカーを逃した時にも、彼は彼女に祝福の言葉を贈った。

 離婚時にはキャメロンのことを悪く言っていたハミルトンも、時間が経ってからは、「彼との結婚生活はすべての面で辛かったけれど、あれほど愛せる人には、その後、出会えなかった」と語っている。そんな人生における特別の人が、また自分のためにキャラクターを書いてくれることになったとは、なんとなくロマンチックではないか。

 この映画が成功すれば、あと2作が作られ、三部作になるという。今回、キャメロンは監督ではないので、現場でぶつかることも、そんなにないだろう。いろいろなことを乗り越え、共に60代になったキャメロンとハミルトンは、シリーズの新たな門出をきっかけに、新しい大人の関係を築いていくのかもしれない。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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