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元広報部長の有罪判決では終わらない!別裁判で暴かれることになりそうなエンジェルスの深い闇

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
更なる裁判でエンジェルスの闇があばかれていきそうだ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【違法薬物供与でエンジェルス元広報部長に有罪判決】

 すでに日本でも大きく報じられているように、2019年にエンジェルスのタイラー・スカッグス投手が遠征先のホテルで死亡した件で、同投手の死因に繋がった違法薬物を供与した容疑で審議されていた元広報部長エリック・ケイ氏の裁判で、同氏の有罪判決が決まった。

 最終的に刑が確定するのは6月28日だが、禁固20年以上だと予想される重刑となった。

 この裁判には当時スカッグスの同僚だった5人の選手たちが証人として出廷し、その全員がケイ氏から違法薬物を受け取り、使用していた過去を明らかにしている。

 中でもマット・ハービー投手は2019年にエンジェルス入りする前からコカイン常用者で、エンジェルスではケイ氏以外からも違法薬物を入手し、スカッグス氏に供与するとともに、クラブハウスやベンチなどで使用していたことを供述し、人々に衝撃をもたらしている。

【遺族がエンジェルスを不当死で提訴】

 だが今回の裁判はあくまでケイ氏の罪を問うためのものであり、その一環として当時のエンジェルス内部の違法薬物使用状況が明るみになったに過ぎない。すでに本欄でも予想しているように、今後この問題はエンジェルスやMLBにも波及していくことになるだろう。

 そして近々エンジェルスの闇が、再び法廷の場で暴かれることになりそうだ。ロサンゼルス・タイムズ紙のビル・シャルキン記者が報じたところによると、スカッグス投手の遺族がテキサス州とカリフォルニア州の2箇所で、同投手の不当死を巡ってエンジェルスを提訴したようだ。

 もちろんこの裁判では、スカッグス投手の死を巡ってエンジェルスの責任が問わるかどうか審議されるわけで、さらにエンジェルスの選手や球団職員たちが法廷の場で証言することになる。

 ケイ氏の裁判で証言に立った5選手の供述を聞く限り、当時のチーム内では複数選手の間で禁止薬物の使用がほぼ常態化していたことが理解できる。

 にもかかわらずエンジェルスはスカッグス投手死亡後の調査で、チーム内での禁止薬物の供与は確認できなかったとの調査報告を発表していたのだ。エンジェルスの球団体質そのものも、問われることになりそうだ。

 今後はどのレベルの人たちが正確なチーム状況を把握し、どの程度の情報を共有していたのかなどが、審議されることになるだろう。

【大谷翔平選手ら現所属選手にも悪影響が…】

 この裁判が進展していけば、また新たな事実が公になる可能性もあり、エンジェルスは当面の間、このスキャンダルと向き合い続けざるを得なくなる。

 もちろん現在所属している選手たちにも周囲から疑義の目が向けられるだろうし、悪影響を及ぼすことになるだろう。いずれにせよ今シーズンのエンジェルスは、野球に集中しにくいシーズンを過ごす可能性が高い。

 昨シーズンは大谷翔平選手の歴史的な活躍で沸き返ったエンジェルスだったが、今後チームを待ち受けているのは間違いなく茨の道だ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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