歩道に「自転車通行可」の標識 その意味を知っていますか?
先日、歩道上での衝突事故で自転車側が亡くなるというケースを取り上げました。
『歩行者に衝突した自転車女性が死亡 歩行者の責任は、刑事罰は受けるのか?』(2020.1.24)
身近な場所で予期せず起こる重大事故ということもあり、多くの方に関心をお寄せいただいたようです。
自転車は基本的に車道の左端を走行することになっていますが、例外として、歩道を走ってもよい場合があります。
上記記事では、以下の項目を紹介しました。
<自転車が歩道を走ることが許される場合>(「交通の方法に関する教則」より)
1) 歩道に「普通自転車歩道通行可」の標識等があるとき。
2) 13歳未満の子供や70歳以上の高齢者、身体の不自由な人が普通自転車を運転しているとき。
3) 道路工事や連続した駐車車両などのために車道の左側部分を通行することが困難な場合や、自動車などの交通量が大変多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などの接触事故の危険がある場合など、自転車の通行の安全を確保するためやむを得ないと認められるとき
では、この1番目に登場する「普通自転車歩道通行可」の標識とは? また、その意味について、皆さんはご存知でしょうか。
今回は「普通自転車歩道通行可」のルールについて、取り上げてみたいと思います。
■「普通自転車歩道通行可」の歩道を走行するときのルールとは??
「普通自転車歩道通行可」の標識は、大人と子供が手をつないでいるシルエットの下に、自転車の姿が描かれています。
ひとことで言えば、「この標識のある区間では、自転車が歩道を走っても構わないよ」という意味です。
では、この標識のある歩道で、自転車は何に気をつけながら、何キロくらいの速度で走ればよいのでしょうか……。
「実は、『交通規制基準』を一読すると、『普通自転車歩道通行可』の標識のある歩道では、自転車に『徐行義務』は課されていないようにみえます。しかし、自転車が歩行者のいる歩道を走るときは、基本的に安全な速度と方法で進行しなければならないことを知っていただきたいですね』
先日の記事を読み、このようなコメントを寄せてくださったのは、「命と安全を守る歩車分離信号普及全国連絡会」群馬事務局の黒崎陽子さんです。
たしかに、警察が出している『交通規制基準』を確認したところ、以下のように書かれていました。
■「普通自転車歩道通行可」の標識、自転車は何キロで走るべき?
自転車に「徐行義務がない」という文言があるのは意外でしたが、これはあくまでも全く同じ標識で規制されている「専用道路」のことをさしているそうで、車道の横に設置されている歩道を走行する場合は、当然のことながら、歩行者に対して細心の注意を払わなければなりません。
つまり、すぐに止まれる安全な速度で走行する必要があるのです。
ちなみに、大前提となっている「道路交通法63条の4 第2項」には、自転車が歩道を通行する場合について以下のように規定されています。
では、自転車にとっての『徐行』とは、具体的にどのくらいの速度のことをさすのでしょうか?
黒崎さんはこう語ります。
「日本の普通自転車は10km/h走行でブレーキかけて、3メートル先で止まれなければ販売できないことになっています。でも、3メートル先で止まれたとしても、2メートル先の人には衝突してしまいますよね。正確に言うと、それは『徐行(直ちに止まれる速度』ではありません。自転車が直ちに止まるには、乾いて平らなアスファルトを前提にした場合、時速8km以下に落とさなければならないと思われます」
■自転車事故で息子を亡くした母親からのメッセージ
実は、黒崎さんは交通事故遺族です。
ひとり息子の涼太さん(当時13歳・中2)は、平成27年7月、自転車に乗って青信号で交差点を横断中、左折してきた10トンダンプに轢かれ、事故の翌日、亡くなりました。
黒崎さんは語ります。
「涼太は、事故現場の交差点まで『普通自転車歩道通行可』の標識がある歩道を通り、交差点を横断するときにはきちんと『自転車横断帯』を走行していました。自転車の通行ルールをきちんと守って、青信号で走行していたのに、安全確認を怠ったドライバーの過失で命を奪われてしまったのです」
なぜ、ルールを守っていたのに、交通事故の犠牲になったのか……。
現在、黒崎さんは、こうした事故の被害を防ぐため、歩車分離信号(歩行者や自転車側が青信号のとき、車を赤信号で止めるパターンの信号サイクル)の普及促進活動に力を入れています。
また、自転車通学をしている子どもたちが正しく安全に走行できるよう、自転車に関する交通ルールを細かく調査し、解りやすく伝える活動を行っています。
「自転車を取り巻く法規制は本当に複雑で、運転免許を持っているドライバーでも標識や表示を正しく理解している人は少ないのが現実です。また、地域によっても道路状況や規制方法に格差があり、改正すべき点も多く見られます。公共交通の少ないい地域の子どもたちにとって、自転車は必要な通学の移動手段です。まずは被害者にも加害者にもならないよう、基本的なルールを、学校や地域で、そして親子で確認していただきたいですね」(黒崎さん)
以下の図は、 2013 年の道路交通法改正に伴う自転車の通行方法について、警察がまとめたものです。
今一度、家族でチェックしてみてはいかがでしょうか。