事故後のコンビニ直行は「ひき逃げ」か否か? 最高裁弁論までに9年9カ月も要した理由 #専門家のまとめ
2015年3月、長野県佐久市で和田樹生さん(当時15)が横断歩道を横断中、酒気帯び運転の車にはねられて死亡した事故。発生直後の被告の行為がひき逃げ(救護義務違反)にあたるか否かが争われている本裁判では、一審が懲役6月の実刑判決でしたが、二審で無罪となり、2024年12月13日、最高裁で弁論が開かれました。
事件発生からすでに9年9カ月、なぜこれほど長い時間が経過しているのか。本件の経緯と問題点をまとめました。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
今回の最高裁弁論、筆者も傍聴し遺族の会見を取材しました。本件は被告が衝突直後「人をはねた」ことを認識していながらコンビニへ行き、飲酒を隠すために口臭防止タブレットを購入して大量に口に入れ、約10分後に被害者のもとへ行って救護活動をしたというものです。当初、この行為は「ひき逃げ」とみなされず、救護義務違反には問われませんでしたが、遺族の懸命の調査と訴えによってひき逃げの公訴時効である7年を目前に地検が起訴するという経緯がありました。10年近い歳月が経過した大きな理由はこの点にあります。
最高裁の弁論で検察側は「ひき逃げ」を認めた一審判決の成立を求め、高裁の無罪判決破棄を求めました。
一方、弁護側は「救済義務を行っていないとは言えない」と述べ無罪を主張しました。
道路交通法では「直ちに車を停めての救護」が義務付けられていますが、数分から数十分後に現場に戻るという事案は全国各地で発生しており、「直ちに」という解釈の判断が分かれています。しかし、「たとえ数分であってもすぐに救護し、通報してくれていれば助かったかもしれない……」という遺族の悔しさは共通しています。
最高裁の判断に注目したいと思います。