【ケニー佐川の私的バイク考察(1)】ビッグシングルの魅力、なぜ単気筒は楽しいのか!?
バイク本来の楽しさに開眼
最近、たまたま単気筒エンジンのバイクに続けて乗る機会があったのだが、これが楽しくて仕方なかった。大ヒット中のGB350シリーズや惜しまれつつファイナルを迎えたSR400、海外勢ではファンティックのスクランブラー500等々、最近では珍しくなったビッグシングルたち。心地よい鼓動とシンプルで軽快な乗り味など、バイクが本来持っている親しみやすさや操る楽しさなど、プリミティブな魅力に今更ながら開眼した気がしたのだ。
最新バイクは便利だがストレスも
仕事柄、いろいろな最新モデルに試乗するが、特に最近のバイクは国内外を問わず高性能化が著しく、電子デバイスが当たり前のように入ってきて強大なパワーを自動的に制御してくれるようになってきた。ライドモードやコーナリング対応のABS&トラコン、エンジンブレーキコントロールに電子制御サスペンション、さらにはスマホとつないで色々できるコネクティッド機能まで……。高性能マシンを安全に乗りこなせて、ハイテク機器を使いこなせれば便利なことこの上ない。ただ、ライダー全員がそれを求めているわけでもなく、また、その膨大な“便利な機能”がかえってストレスになってしまう場合もある。とりわけ、IT時代になる前からバイクに乗っているアナログ世代の旧い人間にとってはなおさらだろう。かくいう私もそのひとりだ。もちろん、仕事だから必死に自分を再教育しているが(笑)。
話を戻して、ではなぜ単気筒マシンは楽しいのか。その理由をもう少しかみ砕いて考えてみた。
① 鼓動感が気持ちいい
鼓動感とは何だろう。ドコドコする感じなのだが、それはエンジンが発する「振動」と「サウンド」の合わせ技ということになるだろう。4気筒の滑らかな回転フィールや甲高いハーモニーも好きだが、それもいつもだと疲れることも。一方、単気筒サウンドは素朴だが安心感があって急かされない感じがいい。人間は一定のリズムを好む傾向があり、それが心臓の鼓動に近いほど安心するという。なんとなく自分でもそう思う。
② 路面をつかむ感覚
トラクションとも言う。等間隔爆発ではあるが「ドッドッドッ」とその間隔が長いため、タイヤが路面をつかんでいく感じが濃厚。特にビッグシングルは鼓動が明確で、自分の足で蹴っていくようなイメージがある。2気筒以上のマルチエンジンでも最近はあえて不等間隔爆発とすることで同様の効果を狙ったり、とパワーそのものより路面に伝えるリズムでトラクションを稼ぐのが現代の主流。その意味でも単気筒はナチュラルなのだ。
③ 軽量が故の軽快な走り
単気筒はシリンダーがひとつなので当然構造もシンブルでエンジン自体を軽く作れる。バイクにとって「軽さ」に勝る善はなし。パワーを上げるより車体を軽くしたほうがハンドリングに効果的なのはセオリーで、バイクを構成するパーツの中で最も重いのがエンジンなのでその影響は思いのほか大きい。例えばホンダの4気筒ネイキッドCB400SFの車重201kgに対してGB350Sは178kgとだいぶ軽い。前述のバイクたちもパワーこそ大したことないが、軽快なフットワークと自在感は本当に気持ちが良かった。
④ シンプルが故の美しさ
何の世界でもシンプル・イズ・ベストと言われるが、それはバイクにも当てはまるかも。
ごちゃごちゃした補器もカウルも持たない剥き出しの単気筒エンジン、横から見て反対側の景色が見えるのが正統派だ。特に空冷独特のシリンダーフィンが規則正しく並ぶ様子は機械的な美しさに満ちている。熱膨張したシリンダーが冷えて収縮するときに出す「キン、キン」という澄んだ音色もまたオツなもの。そもそもバイクは「単車」なのだから。
⑤ サイフに優しい
これも大事な要素、というよりは実際に購入する段になれば決定的ともいえるファクターだ。一般的に多気筒のマルチエンジンほど高性能だが、一方では小さく複雑な部品を精巧に組み上げる必要があり、開発コストも上がって最終的には価格に跳ね返ってくる。
例えば4気筒ならピストンもプラグも4本ずつ、バルブも16本など高性能と引き換えにメンテコストも高くつく。その点、単気筒はシンプルなぶん車両価格も維持費も安く、腕に自信があればセルフメンテもしやすいなど利点も多い。
というように、単気筒エンジンとその魅力を存分に味わえるビッグシングルたちは走ってよし眺めてよしの逸材。いろいろな楽しさと実際的なメリットをたくさん持ち合わせた優良バイクなのだ。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。