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結婚相談所で切りつけ事件……婚活ブームのウラで見極めが重要な時代に?

植草美幸結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸
(提供:juritakai/イメージマート)

■結婚相談所で経営者が襲われる事件に、業界震撼

先日、神奈川県茅ケ崎市で結婚相談所を経営する70代のご夫婦が襲われる事件がありました。殺人未遂で逮捕されたのは、66歳の自称・建設業の男。予約をして結婚相談所の客として訪れたものの、まったく別の話になったため、被害者夫婦が「帰ってください」と伝えると、一度立ち去り、数分後に戻ってきて夫婦をカッターのようなもので切りつけたと報じられています。

結婚相談所を現場とした事件は数少ないので、業界を震撼させました。同じ仲人業をする者として、被害者夫婦が1日もはやく回復されることを祈っています。

今回はこの事件を受け、結婚相談所のウラ話と、結婚相談所を選ぶ時のポイントについてお伝えします。

■自称・建設業……結婚相談所の「連盟」の重要性

逮捕された男の目的は報道で明らかになっておらず、「婚活がうまくいかない腹いせや逆恨みか?」 という憶測も呼んでいるようです。しかし、「自称・建設業」と報じられている点から、入会前の方であることがわかります。

現場映像の店頭の看板には、日本仲人連盟(NNR)、良縁ネット(R-NET)、日本ブライダル連盟(BIU)という3つの結婚相談所の連盟に加盟していることが書かれていました。連盟に加入している結婚相談所に入会する場合、連盟の規則に則った、身分証明書等が必要ですから、入会していた場合は被害夫婦がお相手のプロフィールを把握しているはず、ということです。被害夫婦は大変な思いをされましたが、直接お会いしてのカウンセリングや書類提出によって、不安要素のある人物を入会前にブロックすることにもつながります。ですから、連盟に所属している相談所の会員さんは、安心して婚活が出来ているのです。

ちなみに、連盟に加入している結婚相談所は、同じ連盟同士のネットワークでつながることができ、ビッグデータを活用したマッチングやお見合いが可能になります。自社の会員が少なく小規模であっても、多くの会員とマッチングできます。そのためにも、お互いの基準を合わせるために共通の規則やルールが存在しています。

逆に言えば、その結婚相談所の自社の会員が0人でも、連盟に認定されさえすれば、連盟のネットワークを使って結婚相談所を始められます。最初は、家族や友人に入会してもらい入会金や月会費無料にして人集めをし、登録者を増やし、なんとか連盟に入ろうとするところもあるようです。

連盟によっては加入条件が厳しいところもありますので、個人的にはまず3大大手の連盟に加入している結婚相談所を選ぶことは一定の安全性の担保につながると考えます。私の結婚相談所は、日本ブライダル連盟(BIU)と日本結婚相談所連盟(IBJ)に加入しています。

とはいえ、1ヶ所づつ規模感が大きく違い、婚活アドバイザー(仲人)のスキルによって成果はかなり異なってしまうのが現実です。未経験の新入社員がアドバイザーになるケースやアドバイザーが外注の個人事業主という所も多くあり、ー今後はアドバイザーのスキルをユーザーが選ぶ時代になっていくことでしょう。

■困惑……格安の結婚相談所で連絡が取れない事例も

最近は、婚活の種類も多種多様となっていて、登録して出会いの提供をするだけのマッチングサービスや、個人間でやり取りするマッチングアプリなども増えてきました。結婚相談所もその流れを受けて、「入会金無料」や「月会費無料」という価格競争の波が来ています。

そのためか、最近は副業や週末ビジネスとして一時的に稼働していたり、サロンやオフィスを持たずスタッフはすべて外注やリモートで業務を行う結婚相談所もあるようです。無料でスタッフの労力を割くことはできませんから、そうでないと採算が取れないからです。

私の結婚相談所の会員と、そういった相談所の会員とでお見合いをする機会があり、日程を変更したかったのですが何度電話してもなかなか連絡が取れず、「土日しか稼働していない」と言われて対応に苦心したことがあります。また、お相手の人柄についてお聞きしたら「登録時に一度しかあったことがないので、わからない」と言われたことも……。

2020年の婚姻数自体は減っているのですが、コロナ以降の婚活需要は日に日に高まっています。情勢や景気の不安定、老後への不安を背景に、「安心安全に、すぐ結婚したい」という真剣度が増している印象を受けます。需要が高まれば、ビジネスとして着目する人も増えますが、サイドビジネスや儲け重視で実績を上げることは非常に難しいのです。

■玉石混交で見極めが重要に……結婚相談所を選ぶポイント

事件を受けての不安要素をお伝えしてしまいましたが、世の中にはきちんとサポートしている結婚相談所や、ルールを守って活動している会員の方も多くいらっしゃいます。そこで、人生を委ねる結婚相談所を選ぶ時のポイントをお伝えします。

婚活アドバイザーや代表者が「顔が見える」活動をしている結婚相談所は、それだけ実績やスキルに自信があり、責任を持っているということになります。書籍やセミナーが確実ですが、最近は無料の動画やWebコンテンツも充実しているので、まずは一通りチェックしてみてください。

実際、お見合いや両家顔合わせには冠婚葬祭やマナーの知識が必要ですし、細かくマッチングを見極める際には、会社や実家の財産などを推し量るために住宅や経済の知識も必要です。人柄だけでなく、知識やノウハウを見極めることができるでしょう。

良いアドバイザー(仲人)が見つかったら、実際に問い合わせて、カウンセリングに行きましょう。いくら実績があっても雰囲気や方針との相性はあるので、自分の感覚で確認することが重要です。現場の担当者が自分に寄り添ったカウンセリングをしてくれるか、親身になって一緒に考えてくれるかどうか、実際に話しながら見極めていきましょう。

結婚相談業というのは、人の人生を左右する仕事。AI婚活などで一部デジタルに頼ることはできても、相談者の気持ちを推し量って対応するマンパワーがどうしても必要です。あらゆるトラブル防止の観点でも、ユーザー側が結婚相談所を見極める目が必要になってきているのでしょう。

結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸

千葉県出身。青山学院大学卒業。結婚相談所マリーミー代表、恋愛・婚活アドバイザー。1995年に、アパレル業界に特化した人材派遣会社、株式会社エムエスピーを創業。そこで培ったコーディネート力を活かし、2009年、結婚相談所マリーミーをスタート。以後10年以上にわたり年間約1,000組の恋愛・結婚に対するアドバイスを行い、業界平均15%と言われる成婚率において、約80%の成婚率(※)を記録している。『結婚の技術』『婚活リベンジ!』など、著書は計14冊。メディア出演の他、地方自治体をはじめとした講演依頼も多数。(※) 成婚退会者数÷全体退会者数で算出。

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