二重責任の原則って? 公認会計士監査と受ける側の心構えについて
■ 公認会計士の監査と二重責任の原則
公認会計士が行う監査は、会計監査・財務諸表監査であり決算書の適正性について監査意見を表明することとなります。
ここで多くの方が誤解しているのが「公認会計士は会計の専門家。自らクライアントの決算書を作成しているのでは」というものです。
公認会計士はあくまでも企業から独立した外部の専門家として、監査に臨みます。
ここに「二重責任の原則」と呼ばれるものが働いています。
二重責任の原則とは財務諸表を作る責任は経営者にあり、公認会計士はその決算書に対して監査を実施する責任がある、という原則です。
これは決算書を作成する責任と決算書を監査する責任を明確に区分する、監査の前提となる重要な原則であります。
この二重責任の原則については公認会計士が監査意見を表明する監査報告書においても「財務諸表に対する経営者の責任」と「財務諸表監査に対する監査人の責任」として明確に記載されています。
■ 公認会計士が実施する監査手続について
では、公認会計士が監査意見を表明するために実施する監査の手続にはどのようなものがあるのでしょうか。
公認会計士が監査意見のために実施する手続は「監査手続」と呼ばれます。この「監査手続」は公認会計士が監査意見を表明するために必要な監査証拠を得るための手続を言います。
なお、監査証拠とは監査意見のための合理的な基礎(根拠)を形成するための数々の情報や記録となります。
この監査手続にはいわゆる会計帳簿を閲覧したり、決算書や財務データ、時には非財務データを用いて分析的手続と呼ばれる分析を実施したり、現物資産を確認する実査、書面をもって取引先に取引金額などを確認、会社の実地たな卸に立会うなど様々なものがあります。
会社が期末日に実施する倉庫の実地たな卸に公認会計士が同席するのは、まさにこの立会です。
金庫の中を見て、自ら小口現金を数えるのは実査であり、売掛金や買掛金、借入金に対して書面を送付する手続が確認です。
また経理の方に例えば店舗データや人員推移データなどを依頼しているのは、分析的手続のためのデータを入手するためです。
決算書への監査というと貸借対照表や損益計算だけを見るという印象かもしれませんが、監査では決算書につながる様々な情報に対して監査手続を実施して、監査意見を形成する合理的な基礎を得るための監査証拠を集めているのです。
決算書を作成する部署は経理部かもしれませんが、監査の過程では様々な部署に対して公認会計士からの依頼やインタビューがあると思いますが、監査のための監査手続とご理解ください。
■ 監査を受ける側の心構え
会社に監査法人がくる、自分の部署・自分にもヒアリング依頼がある、となると身構える方も多いですが、身構える必要はまったくありません。
監査法人からも「今回は内部統制ヒアリングでお伺いします」「在庫関連についてインタビューをさせてください」など往査目的が事前に告げられますし、事前に用意すべき資料なども依頼があることでしょう。
その際も、「どのようなことを具体的に聞きたいのか、どのような資料なら良いのか」などしっかりと監査法人の往査目的を確認し、誠実に対応していきましょう。
筆者も以前「内部統制ヒアリングにお伺いさせてください」と情報システム部門の方に連絡したところ「内部統制って何ですか?そもそも監査法人さんって何なのでしょうか?」と聞かれたこともあります。
監査法人側は監査や公認会計士業務が一般的にはなじみが薄いものであることを理解しておりますので、会社側としても身構えることなく対応していきましょう。
*もう一歩踏み込んで、監査とは何かについて解説したのが、下記のコラムになりますので、ご参照ください。
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