「将軍様の生誕イベント」地球温暖化で中止の危機
将軍様の威光も地球温暖化には勝てないようだ。
今月16日は北朝鮮の故金正日総書記の生誕記念日の「光明星節」だった。北朝鮮各地では様々な祝賀イベントが行われているが、その一つが、金正日氏の生誕の地とされる極寒の山間都市、三池淵(サムジヨン)の氷の彫刻祭典だ。
ところが、今年は開催中止の危機に直面した。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
両江道(リャンガンド)の情報筋は、三池淵で今月8日、光明星節氷の彫刻祭典の開幕式が行われたと伝えた。しかし、開催にこぎつけるまでは苦労の連続だったようだ。その理由は、例年より高い気温だ。
氷像は、雪で全体像を固めて一部のパーツだけ氷を使用する。形が出来上がれば色を塗り、水をかけて夜の間に凍らせる。ところが、今年は昼間の気温が高く、せっかくできた氷像が溶けてしまうのだという。
情報筋は、朝鮮労働党両江道委員会(道党)の幹部から聞いた話として、氷の彫刻祭典は当初、今月1日から20日まで行われる予定だったが、今月に入ってから最高気温がプラスになり、一時は開催期間の途中での取りやめが危ぶまれることもあった。
しかし、道党は祝典の継続を指示し、三池淵市内の工場、企業所は白頭山と正日峰関連の氷像を制作した。しかし、暖冬により上手く作れず、出来栄えは例年のものとは比較にならないほどだという。
別の情報筋は、道党から祝典に参加せよとの指示があったことから、普天(ポチョン)から三池淵を結ぶ旅客列車が毎日運行されていると伝えた。これは、旅行証(国内用パスポート)の発行が制限されている中で、他地域からの訪問が難しいため、開場に閑古鳥が鳴く状況を避けたかったためのようだ。
客は多く来場しているものの、氷像は溶け続け、雪もあまり降らないため、補修作業が難航している。
氷像の多くは動物や草花を形どったものだが、肝心の白頭山と正日峰の氷像ですら光明星節当日まで維持できるか際どい状況だ。もし溶けてしまい、みすぼらしい姿を晒すことにでもなれば、「最高指導者の権威をおとしめた」として道党幹部のクビが飛びかねない。
(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命)
道党は、毎夜のように住民を動員して氷像の補修をさせているが、直しても直しても昼間の日差しで溶けてしまう。道党の強引な進め方に住民から怨嗟の声が上がっていると、情報筋は伝えた。