英国、ホットドッグの名前「アンネ・フランクフルター」に"アンネ・フランクを侮辱"とネット炎上・謝罪
英国のキッチンカーを運営する会社が提供するホットドッグを「アンネ・フランクフルター」(The ANNE FRANKFURTER」と名付けて7ポンド(約1100円)でバーミンガムで販売していた。フランクフルトソーセージを使用したホットドッグで、「フランクフルト」と「アンネ・フランク」をかけたネーミングだった。
このホットドッグの名称「アンネ・フランクフルター」に、ホロコーストのアイコン的存在でもある「アンネ・フランクに対して失礼だ」「アンネ・フランクとホロコーストを侮辱している」「不謹慎だ」とネットで炎上していた。キッチンカーを運営している会社では、すぐに謝罪して名称を取り消していた。
第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスからの迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版し、現在でも世界中で多くの人に読まれている。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われることが多く、小学生の必読書にもなっている。世界中から多くの観光客がアムステルダムの「アンネの家」を訪れている。
欧米ではホロコースト教育が学校で行われることが多く、その中でもアンネ・フランクの「アンネの日記」はよく使われる。そのためアンネ・フランクは誰もが知っている存在である。そのためアンネ・フランクの名前をつけたりデザインした商品がよく登場している。そして、そのたびに「アンネ・フランクに失礼だ。ホロコーストを軽視している」とネットで炎上して販売中止や謝罪している。今回のホットドッグが初めてではない。
▼アンネ・フランクフルターのメニューを掲げたキッチンカ―
英国ホロコースト教育財団「ホロコーストの犠牲者をマーケティングに使用するのは決して適切なことではありません」
アンネ・フランクだけでなく、ホロコーストやナチスドイツに関してのマーケティングは必ず炎上する。ユダヤ人が収容所で着ていた囚人服に似ていたり、ユダヤ人が差別されるために着用を義務付けられた黄色のダビデの星をつけた服など露骨なファッションもある。そのようなファッションは「ホロコーストの犠牲者に対する敬意がない」「生存者や家族が見たら、どのような思いをするのか考えよう」と毎回炎上する。また囚人服やダビデの星など露骨な反ユダヤ的なファッションについては世界中のユダヤ団体やホロコースト博物館、著名人らも反対や商品の撤収をSNSで呼びかけることから、いっそう話題になる。またニュースになって報じられることも多い。今回の英国のホットドッグの名前についても英国だけでなく、米国、イスラエルでニュースになっていた。
このように毎回ネットで炎上する。だが、それでも懲りずにマーケティング目的で利用されることが多い。そして毎回「ホロコースト関連の商品を販売する」→「ネットで炎上し、拡散される」→「商品を撤収したり、謝罪する」の繰り返しで欧米では過去に何回もあった。一方で、ホロコーストをテーマにした商品は、必ず炎上するので、それによって拡散され、話題になるので知名度を高めたり、サイト内の他の商品を見てもらおうとマーケティング目的で販売されるケースもある。
今回も英国のホロコースト教育財団が公式SNSで「アンネ・フランクは2年間隠れ家に隠れて、アウシュビッツ絶滅収容所に移送されて、ベルゲン・ベルゼン強制収容所で死亡した若いユダヤ人の少女です。ホロコーストの犠牲者をマーケティングに使用するのは決して適切なことではありません」と呼びかけていた。
対岸の火事ではないホロコーストの炎上
ナチスドイツによって600万人のユダヤ人が殺害されたホロコーストの問題は今でも世界中でセンシティブである。「知らなかった」ではすまされない。日本でも2021年7月に開催された東京オリンピックの開会式で関係者が過去にホロコーストを揶揄したパフォーマンスをしていたことから、サイモン・ウィーゼンタール・センターが全世界に向けて抗議文を発表していた。そして、外務省も外務大臣談話として「極めて不適切であり、受け入れられるものではありません。深くお詫びする」と即座に謝罪文(英語版)を全世界に向けて発表して、関係者も即解任されていた。ウィーゼンタール・センターのリリースなので、世界中でも報道されていた。欧米やイスラエルでは「日本人は反ユダヤ主義なのか」「日本ではホロコースト教育が行われていないのか」といったコメントが散見され炎上していた。
2016年10月に日本のアイドル欅坂46がナチス風の衣装を着てコンサートを行った際にもプロデューサー秋元康氏とソニー・ミュージックに対して強い怒りを露わにし、謝罪を要求していた。当時も英国BBCやデイリーメール、ザ・ガーディアン、フランスのル・フィガロ、TVQC、ドイツのベルリナー・モルゲンポスト、シュツットガルト・ナッハリヒテン、米国のTIME(タイム)、CBSニュース、イスラエルのタイムズ・オブ・イスラエルなどで多く報道されて海外からも「まるでナチスドイツの親衛隊で、常識を逸脱したコスチュームだ」と非難されていた。
また2018年11月には、韓国の男性タレントグループ「BTS(防弾少年団)」がナチスドイツ時代のナチス親衛隊(SS)のシンボルマークがついた帽子をかぶっていたり、コンサートでナチス親衛隊を想起させる旗を掲げていたとして抗議文を発表していたのも同センターである。
▼英国教育ホロコースト財団「ホロコーストの犠牲者をマーケティングに使用するのは決して適切なことではありません」