沖縄警察暴動のきっかけとなった高校生失明事件の真相が1カ月経ても明らかにならないのはどうしたことか
沖縄県議会での県警本部長の答弁
2022年1月28日未明に沖縄県警沖縄署に400人余と言われる若者らが集まり、停めてあった車の破壊や投石などを行って暴動と化したことはニュースで大きく報じられた。
きっかけは27日未明に17歳の高校生が警官の暴行を受けて失明したという話がSNSで拡散したことだという。右目から大量出血している高校生の動画が流れたことで衝撃を受けた友人らを含む若者が警察署前に集まり、同じくSNSを見た人たちが加わってたちまち膨れ上がったらしい。暴動に発展するほどの事態に至った要因が、SNS動画の衝撃性にあったことは明らかだ。
不思議なのは、それから約1カ月たった2月末になっても、現場で高校生と警官の間に何があったのか、真相が明らかになっていないことだ。
報道によると、負傷した高校生は27日未明、友人たちとコンビニの駐車場に集まっていたところ、暴走族取り締まりを行っていたらしいパトカーが来たのでバイクでその場から離れた。しかし、誤って友人の荷物を持ってきてしまったことに気づき、コンビニに戻ったところ、待ち構えていた警察官と遭遇。高校生は「警察官に棒のようなもので右目を殴られた」と語っているが、警官の方は、バイクが来たため停止させようとしたら突っ込んできたので「警棒を持っている手がはじかれた」と話しているようだ。当初、現場ではその警官が「これは単独事故だ」と言い張っていたという。
沖縄県警は所轄署でなく県警本部に捜査本部を置き、捜査を進めている。少年にも事情聴取を行い、警官が所持していた警棒や着衣の鑑定も行ったようだ。捜査の結論発表はなされていないが、県警はその進捗状況については随時明らかにするとしている。2月22日の沖縄県議会で日下真一県警本部長は、これまでの経緯を説明し、捜査によって明らかになった事実関係を発信をしていくと答えた。
誤った情報が流れて高校生バッシングも
事件をめぐってもうひとつ問題になったのは、高校生が暴走族だといった誤った情報がSNSに流れ、高校生を特定しバッシングしようとする動きがあったことだ。地元紙の沖縄タイムスはツイッター投稿のファクトチェックを行い、「暴走族の高校生」「ノーヘルでバイク」「盗難車・無免許」という、SNSで広がっている3点はいずれも誤りだと指摘している。
情報の混乱が、県警が迅速に捜査結果を発表していないせいであるのは明らかだ。現場での警官の行為が具体的にどうだったのか、その対応をどう見るかということと関わっているだけに、県警としても苦慮しているのかもしれない。
写真週刊誌『フラッシュ』の報道
そんななかで写真週刊誌の存在意義を知らしめたのが『フラッシュ』2月22日号だ。見出しは〈被害者母親が涙で単独告白「罪なく失明させられた息子は『お母さん、ごめんね』と…」〉。高校生の母親にインタビューを行ったものだが、こういうまとまった形で母親のインタビューが報じられたのはこれが初めてという。また同誌は、高校生の右目から大量の出血がある現場写真も載せている。
同様の写真は既に文春オンラインを始めネットでも公開されていたが、高校生が特定されないようボカシが入るなどしており、いまひとつわかりにくかった。『フラッシュ』も目の部分にボカシを入れ、配慮ゆえかカラーでなくモノクロ写真なのだが、右目から大量の出血があったことがよくわかる写真だ。百聞は一見に如かずと言われるが、その大量の出血や、眼球破裂だけでなく頬骨の骨折といった状況を考えると、警棒がたまたま当たったという警官の証言には疑問が残る。
警察の対応に大きな疑問
母親は『フラッシュ』のインタビューの最後にこう語っている。
「警察は当初、たんなる単独事故だと発表していました。その次は、警察官と接触はしたけど警棒は持っていなかったと発表するなど、二転三転しているんです。しかも、交通課の警察官が私の番号を聞いていきながら、今日まで一度も私に電話をかけてきていません。事実を明らかにするつもりがあるのでしょうか」
現場での警官の対応に問題があったとすれば警察の不祥事になるわけで、それゆえに県警の捜査が及び腰になるようなことがあってはいけない。それを監視しチェックするのはメディアの役割とも言える。
地元のメディア、特に沖縄タイムスや琉球新報はこれまでもジャーナリズム精神あふれる報道姿勢で知られてきた。ぜひ真相究明が早期になされてほしいと思う。