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北朝鮮の女子大生「ズタボロ」で吊し上げ…仲間と重ねた禁断の行為

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の公開裁判(デイリーNK)

 北朝鮮で、覚せい剤を密売していた大学生のグループが摘発された。北朝鮮では「ピンドゥ」と呼ばれる覚せい剤の乱用がはびこっており、汚染は小中学生にまで及んでいるとされる。

 今回、逮捕された女子大生(3年生)も大学1年生から密売に携わっていたというから、それ以前に覚せい剤の使用経験があったのかもしれない。

 女子大生は、首都・平壌の近くにある平城(ピョンソン)獣医畜産大学に通っていた。同じ大学生の運び屋から覚せい剤を受け取り、小分けして、客に販売していた。平城は北朝鮮最大の流通センターであり、金持ちも多い。彼女はそうした人脈に、巧みに食い込んでいたと見られる。

(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為

 また、彼女が密売を行っていた時期は、北朝鮮で厳しすぎるコロナ対策が実施されていたときと重なる。閉塞した状況下で鬱屈し、あるいは自暴自棄になった人々に薬物を売りまくっていたのかもしれない。

 摘発の端緒は、運び屋の1人が今年6月中旬、1キロもの覚せい剤を干し魚に隠し、咸興(ハムン)から平城まで運んでいるときに哨所(検問所)で摘発されたことだった。

 北朝鮮の司法当局の取り調べに耐え、仲間の秘密を守ることなどほぼ不可能だ。運び屋からシンジケートの情報を聞き出した当局のタスクフォース「反社会主義・非社会主義打撃隊」は、一味の間で「サムチョン(叔父)」と呼ばれていたブローカー宅を張り込みし、他の運び屋もろとも逮捕した。

 女子大生が捕まるのも時間の問題だった。その間の取り調べで大学生の運び屋たちは、「単に金儲けがしたかった」と犯行の動機を語った。

 本来、北朝鮮ではすべての教育が無料で受けられることになっているが、それはあくまでもタテマエだ。実際には、入試に始まり卒業論文に至るまで、様々な過程でワイロが要求される。そのため、大学生たちは休みともなれば家庭教師などのバイトに精を出すが、おそらく学費や生活費に加え、遊ぶカネ欲しさに犯行を続けたのだろう。

 そして遂に、女子大生も逮捕された。先月末、公開闘争会議(吊し上げ)に引き出された彼女は、顔や体が傷だらけで、ひどい拷問にかけられたことがひと目でわかる状態だったという。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

 その場では、罪状が次のように読み上げられた。

「ピンドゥが万能薬であるかのごとく宣伝し、嘘の情報を流したことは、わが国を内部から瓦解させようとする敵どもの計略であり、わが国の青年たちの革命意識を蝕もうとする敵対勢力の行為である」

 これは、覚せい剤の密売が単なる刑事事件としてだけでなく、国家に対する反逆という、政治的事件として裁かれることを意味する。彼女はまず間違いなく、極刑を免れないだろう。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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