コロナ禍のお盆はおうちでできる避難所までのルート確認 夏休みの自由研究にも活用可
小・中学生の夏休みも中盤に差し掛かってきました。地域によっては、台風や緊急事態宣言などの影響で、なかなか野外での自由研究ができず困っておられる方も多いと思います。
さて、直近3年間でも、台風など記憶に新しい自然災害は多くあり、また今現在も、大雨が各所で発生しています。九州の所々で「観測史上1位」となっており、また九州以外でも広島県や、富山県などで、同じように雨量が過去最大の値となっている場所があります。こうした状況を踏まえ、普段から自宅で災害時の対応を考えておくことが大切です。
自然災害は、いつ発生するかわからないものも多いですが、それに備えることはできます。そこで今回は、様々な研究機関などがインターネットで公開しているデータを使い、自宅でできる自由研究で防災についても考えることのできるテーマをご紹介したいと思います。
1.自宅周辺の地形を見てみよう
皆さんの自宅の近くには川が流れているでしょうか?あるいは川から少し離れた高い場所にあるでしょうか。それとももっと高い山の近くにあるでしょうか?
まずは国土地理院の陰影起伏図で、自宅周辺の凸凹ぐあいを見てみましょう。リンク先のページにある「地理院地図で見る」という緑色のボタンをクリックすると表示されます。
日本の地形は、高さや凸凹、そして地形ができた時代などにより、「山地」、「丘陵」、「台地」、「低地」に分けられます。山地や丘陵は、地面が動く地殻変動の力と、風や雨による浸食によって作られた地形です。丘陵は山地に比べて、凸凹がゆるやかで高さも数百m以下であることが多いです。
山地・丘陵に対して、台地と低地は低い場所にあります。低地は河川敷や海沿いなどと高さが同じ平らな場所で、洪水や高潮が起きると浸水して大きな被害が起きることもあります。一方、台地は低地よりも少し高い場所にある平らな場所のことを指します。つまり、普段から地形について知っておくことは、防災を知ることにも繋がるのです。
2.ハザードマップを調べてみよう
では皆さんが住んでいる場所のハザードマップを見てみましょう。ハザードマップとは、洪水や高潮、土砂災害、地震、火山噴火などがもたらす被害とその範囲を予測した地図です。自分が住んでいる地域のハザードマップを普段から読んでおくことで、こうした災害に備えることができます。国土交通省が公開しているハザードマップを見てみましょう。
例えばリンク先の画面にある「洪水(想定最大規模)」というアイコンをクリックすると、想定される洪水の場所と予測範囲が表示されます。スマートフォンでアクセスして、画面右下の現在地アイコンをクリックすれば、自分がいる場所の周辺の情報が表示されます。
同じように、土砂災害や津波、さらには災害によって通行規制がかかることが予想される道路の位置も表示することが可能です。
これらの情報を生かし、下の漫画にあるように、近所のどこが浸水しやすいか、土砂災害が起こりやすいかを把握し、自宅周辺にある避難所のルートをイメージするとよいでしょう。
また時間のある時に、実際に避難所までのルートを歩いてみて、周辺の地形なども併せて調査するとよいかもしれません。
*現在、都道府県によっては新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言等が出ていますので、外出や施設の利用に際しては各自治体からの情報を参照してください。
上の図は、Yahoo! 避難場所マップの表示例です。自宅や現在位置を入力すると、周辺の避難場所の位置、およびどのような災害に対応した避難場所であるかが表示されます。
こうした地図をプリントアウトし、あるいはタブレットで表示し、自宅から避難所までのルートを確認しながら、実際に避難所までの道のりと災害に発生時に通行することができるかなどルートチェックをするとよいでしょう(上の図で引いた赤線は飽くまでイメージです。実際に自分で避難ルートを考えてみましょう)。
◆ルートチェック時のポイント(例)
・川沿い・海沿いの土地の人→過去の浸水や高潮の記録、あるいは今後の予想が立てられているかどうか。
・山間部の土地の人→地震の際に崩れが発生しないかどうか。
◆準備物
・スマホ、タブレット
上記を元に災害時に心配な地形を撮影し、位置を記録する。→それを元にハザードマップ上で過去に災害が起きていないかどうか確認する。
ハザードマップは2011年の東日本大震災を機に一般的にも浸透してきていますが、その歴史はまだ浅いといえます。ここで一つ、興味深いデータを見てみましょう。
Yahoo!が提供するサービス「みんなの意見」の中で、「風水害への備えを見直しましたか?」というアンケートが2021年の9月30日まで実施されています。これは過去5年間、日本で大きな災害が毎年のように発生しているため、みんながどのような災害への備えをしているかを調べるためのものです。
約12万人の回答者(8月11日現在)のなかで、約43%の方は「特になにもしていない」と回答しました。そして次に多かったのが「ハザードマップを確認した」という回答(約22%)です。まだまだ割合は少ないですが、ハザードマップを利用する方が増えているのは喜ばしいことと思います。
さらに近年、東京23区の地下にある地層や岩盤の分布を立体的に把握できる三次元地質地盤図が公開されました。こうした最新技術も、東京の地震ハザードマップや都市インフラ整備などで活用されることが期待されています。
3.研究者に質問できる!「つくばクエスチョンオンライン」
つくば市では昨年から、全国の小中学生向けに「つくばこどもクエスチョンオンライン」を実施しています。新型コロナウイルスの影響で博物館や科学館がお休みになっても、研究者がオンラインで皆さんの疑問にお答えするために始まった試みです。私、芝原もメンバーとして参加しています。
「つくばこどもクエスチョンオンライン」では、全国の小中学生の皆さんから研究計画書を送っていただき、それに研究者がコメントします。さらに応募された研究計画書の中から「つくば科学教育マイスター賞」を発表します。
自由研究をレベルアップしたい皆さん、将来研究者になってみたい皆さんの応募をお待ちしております。
・2021.8.18 誤字・脱字を修正しました。