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中日 落合博満退団に見るGM制度の崩壊「ポスト作って魂入れず」

豊浦彰太郎Baseball Writer
名選手名監督になるも名GMとはならず。そもそもポストに実態はあったのか?(写真:ロイター/アフロ)

中日の落合博満GMが退団した。このことは驚くに値しない。そのような噂が飛び交っていたからだ。しかし、奇妙なことに後任は置かないという。結局、GMというポストに実態はなく、必要でもなかったということか。

落合は、現役時代は三冠王3度の稀代の大打者で、監督としても8年間でリーグ優勝4回、日本一1回としっかり結果を残した。そして、2013年オフ、球団史上初のGMポストに就いた。ここでも成果を挙げれば、選手、指導者、フロントと野球人としてのグランドスラムとなるところだったが、名選手は名監督になり得たが、名GMとは行かなかった。

彼の在位中、チームは3年連続Bクラスで、しかも年々順位も勝率も低下した。しかし、このことで彼の手腕を評価するのはフェアではないと思う。就任時、チームは史上例がないほど高齢者が多く、なによりも彼に期待されたのは人件費の削減だった。そのことではしっかり結果を残した。ただし、その代償として戦力がダウンするのは致し方ない。急に「やっぱり勝てるチームにして」と言われても、すぐに結果が出るものではない。

それよりも気になったのは、GM職にあった後半はほとんど表に出ず、自らのビジョンや構想をファンに語りかけるところがなかったことだ。GMとはビジネスマンである。オーナーから与えられた与件の中で、戦略を立案し周囲を納得させ、ガンガン実行して行かなばならない。野球人たる落合GMの胸の中には思うところがあったのだと思うが、それを周囲に分からしめ困難に立ち向かうところは伝わって来なかった。プレゼンテーション能力、実行力、調整力に関しては、残念ながら畑違いだったということだろう。

一方で、そもそもGMというポストを設定した時点で、白井オーナーを中心とするフロント幹部の中で、その職務内容や権限と責任に関し、明確な定義が共有されていなかったのではないかという疑問は残る。おそらく、古い企業体質(だと思う)の同球団の中で、ジョブディスクリプションなどを議論するムードすらなかったのではないか。

結局、GMなどというメジャーリーグにかぶれた実態のないポストだけ設定し、役割も責任も権限も曖昧のままでGM制度は瓦解したのだとぼくは思っている。それを何よりも象徴しているのが「後任は置かない」という事実だ。これが監督なら、後任なしはあり得ない。結局、実態のないポストだったと考えるのが自然だろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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