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新手のサイン盗み?!レイズのケビン・キアマイヤーがとった行動が不正行為として疑われる事態に

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
自身の行動が不正行為として疑われてしまったケビン・キアマイヤー選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【レイズ選手がとった行動が騒動に発展】

 現地時間の9月20日に行われたレイズ対ブルージェイズ戦で、レイズのケビン・キアマイヤー選手が試合中にとった行動が不正行為ではないかとの疑問をもたれ、MLB公式サイトでトップニュースとして取り上げられるほどの騒動になっている。

 まずは発端となった、キアマイヤー選手の行動について紹介したい。

 それは、3対2とレイズ1点リードで迎えた6回裏レイズの攻撃中に起こった。2死二塁の場面で打席に立ったキアマイヤー選手は、三塁方向に大きく弾むゴロを放ったことから始まる。

 ゴロを捕球したブルージェイズのジェイク・ラム選手はすぐさま一塁に送球したものの、これが悪送球となりボールは右翼線横のブルペンまで転がっていった。この間に二塁走者が生還すると、打ったキアマイヤー選手も激走を見せ一気に本塁を狙ったが、返球の方が早くアウトになってしまった。

 この時の本塁ベース上のクロスプレーの後、ベースに滑り込んだキアマイヤー選手の脇に紙片が落ちていたのだが、彼がこれを拾ってベンチに下がったことをメディアが発見し、騒ぎになってしまったのだ。

【紙片はブルージェイズ捕手が使っていた作戦カード】

 この一件を最初に発見したのが、スポーツ専門サイト『Sportsnet』のアラシュ・マディニ記者だ。彼は動画付きでTwitter上に投稿している。

 マディニ記者が確認したところでは、キアマイヤー選手が拾った紙片はブルージェイズのアレハンドロ・カーク捕手がリストバンドの中に入れていた作戦カードだったのだ。

 キアマイヤー選手との接触プレーの際にリストバンドからこぼれ落ち、それをキアマイヤー選手が発見し、勝手に持ち帰ってしまったというわけだ。そしてその作戦カードにはレイズ打者対策のゲームプランが書かれていたというのだから、決して穏やかな話ではないのだ。

 しかもブルージェイズは試合中にカードを返却するよう求めたが、レイズはこれを拒絶。また試合中継の映像によれば、キアマイヤー選手はそのカードをチームスタッフに手渡していることが判明しており、サイン盗みの不正行為が行われているとの疑念を持たれてしまったのだ。

【キアマイヤー選手は無実を釈明】

 この一件が大きく報じられたことにより、21日になってキアマイヤー選手はマディニ記者に対し、以下のように釈明している。

 「あの場面で紙片が目に入った。ただあの場面はプレーが迅速に進み、まさに一瞬の出来事だった。自分はそれを拾ったが、それが何なのか、自分のものかどうかも分からなかった。(自分が使っているカードと)似たかたちをしているからね。それを拾った後で、それが何かを理解できた。

 (紙片の)中身までは見ていない。確かにそれをグラウンドに戻さなかったし、相手に手渡そうともしていない。それを(ブルージェイズが)どう思っているかは知らないが、深く考えることもなく、グラウンドに落ちているものを発見し、それを何気なく拾っただけだ。その後もその紙片について何も聞いていない。本当にすべてが一瞬の出来事だった」

【現時点でMLBは反応無し】

 マディニ記者によれば、今回の一件を受け、レイズのケビン・キャッシュ監督は試合後にブルージェイズのチャーリー・モントーヨ監督に謝罪したとしている。また21日の試合前にも、両監督はグラウンド上で話し合いを行ったようだ。ただ両チームの間で和解が成立したのかまでは明らかになっていない。

 また現時点ではMLBは何の公式見解も出しておらず、今後この件について調査を行うかどうかも定かではない。

 ただ各選手が作戦カードを持つのが当たり前になった現在のMLBでは、水面下で激しい情報戦が繰り広げられていることだけは確かなことだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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