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来年の総選挙は与党よりも野党の勝利に期待! 意外な韓国の世論調査結果 原因は尹大統領の「不人気」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
尹錫悦大統領(JPニュースから)

 韓国は来年4月10日に総選挙(国会議員選挙)を迎える。

 韓国の国会勢力(300議席)は与党・自民党が安定多数を占めている日本とは異なり、「与小野大」で、与党「国民の力」の115議席に対して最大野党の「共に民主党」は169議席と、54議席も上回っている。(※その他の野党及び無所属は除く)

 「共に民主党」出身の文在寅(ムン・ジェイン)前政権下で2020年4月に行われた前回の選挙(投票率66.2%)では当時与党だった「共に民主党」が180議席(地域区163議席、比例代表17議席)を占め、「国民の力」の前身「未来統合党」の103議席(地域区84議席、比例代表19議席)を圧倒し、大勝を収めた。

 昨年3月の大統領選挙で「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補を破り、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を誕生させ、政権を奪還した「国民の力」は尹政権の安定と保守政権継承のためにも来年の総選挙では最低でも過半数(151議席)を獲得しなければならない。

 「国民の力」は大統領選挙に続いて行われた全国地方自治体選挙(6月1日)でもソウル、釜山市を含む大都市の首長選(17市)は12対5,その他の市長選(226市)は146対63と、「共に民主党」を大きく上回り、自治体議員の数も大都市(872人)で540人対323人,全国地方(2988人)で1435人対1384人と圧勝した。(※その他の野党及び無所属は除く)

 党員の数でも1月1日基準で約490万人対485万人と上回っている「国民の力」にとって総選挙で負ける要素は何一つないはずなのに不思議なことに世論調査の結果はどうにも芳しくない。

 来年の総選挙まで1年を切ったこともあって韓国の最大手世論調査会社「韓国ギャラップ」が4月4日から6日にかけて世論調査を実施し、その結果を8日に公表したが、「政権安定のため与党候補が多く当選すべき」が36.0%、「政府を牽制するため野党候補が多く当選すべき」が50.0%という意外な結果が出た。

 「韓国ギャラップ」の前回(2月)の調査では与野党は42%対44%と拮抗していたが、なんとその差が14%も開いてしまった。

 また、8日から9日までの間に共同で行われたSBSテレビと「ネクストリサーチ社」の世論調査でも「国政安定のため与党候補を選ぶ」が36.9%、「政権牽制のため野党候補を選ぶ」が49.9%と、ここでも与党は野党に13ポイントも差を付けられていた。

 世代別でみると、60代以上が「政権安定のため与党」、50代以下が「政権牽制のため野党」と分かれていたが、大統領選挙の得票率では45.5%対47.8%と拮抗していた20代と、48.1%対46.3% と上回っていた30代はそれぞれ26%対54%、23%対64%と、「野党勝利待望」が2倍以上もあった。この原因は、ひとえに尹政権の不人気、尹大統領の支持率の低迷にある。

 尹大統領の支持率は「韓国ギャラップ」では31.0%、もう一つの大手世論調査会社「リアルメータ」の4月第1週の調査でも36.4%。「支持」は3月第1週の42.9%をピークに下降線を辿っている。不支持は「韓国ギャラップ」「リアルメータ」ともに60%台に達している。国民の10人中、6人は尹大統領に不満なのである。

 尹大統領を「評価しない」理由として常に上位に挙げられているのが「(大統領としての)資質がない」「無能である」そして「独断的である」の3点である。

 「失言王」と揶揄されるほど問題発言を乱発したり、国民との意思疎通を図るとして取り入れたぶら下がり会見も失言を恐れ、いつの間にか止めてしまうなど打ち出す政策や方針に一貫性がなく、即効的だったり、大統領当選の最大の功労者だった30代の若き党首をウマが合わないのか、追い出し、イエスマンや検察総長時代に部下だった検察官らで固める偏重人事、さらには「元徴用工問題」への対応など「失点」が重なって支持率の下落となっているようだ。

 それでも尹大統領自身は本心はわからないが、支持率をさほど気にしていないと言われている。

 今回の世論調査の結果についても大統領室は「支持率については一喜一憂していない」とコメントしていたが、「一生懸命やっていれば、そのうち上がるだろう」との楽観論と野党への支持は「政府に対してしっかりやってもらいたい」との牽制の意味合いで、「国民は政権交代までは望んでいない」とする安心感のようなものがあるようだ。

 どちらにしても来年の総選挙で与党が過半数を制すれば、尹大統領は公約である「労働改革」「教育改革」そして「年金改革」など大胆な政策を抵抗なく推し進めることができるが、仮に負ければ、逆にレームダック化することになりかねないだけに支持率の低迷が現状のままで良いはずはない。

 その意味では尹大統領にとっては今月末に予定されている国賓待遇による訪米が反転攻勢の機会となりそうだ。保守支持層からは「勇断」と評価されたものの支持率の下落を招いた訪日とは逆に訪米で成果を上げ、支持率の上昇に繋がれば、総選挙の展望も開けてくる。

(参考資料:「WBCフィーバー」で影が薄れた尹大統領の訪日)

 訪米は尹政権の今後を占う上で一つのポイントになりそうだ。

(参考資料:支持率の低い尹大統領への日本の不安 約束は守られるのか?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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