国連制裁も「どこ吹く風」、北朝鮮が加速させる“アフリカ・ビジネス”
日本政府が、北朝鮮による拉致再調査の期限として設定した7月4日が迫っているが、いまのところ新たな展開が生まれる様子はうかがえない。
こうした現状を受け、自民党の拉致問題対策本部は6月25日、北朝鮮への制裁強化を求める提言をまとめ、古屋圭司本部長が安倍晋三首相に手渡した。
ただ、日本の「制裁カード」の中には北朝鮮に実質的なダメージを与え得るものは見当たらず、現状では拉致再調査に突き動かす効果は期待薄と言わざるを得ない。
その一方、北朝鮮はアフリカを舞台に、外貨獲得ビジネスを活発に展開している。とくに驚かされたのが、北朝鮮が赤道ギニアから30億ドル規模のIT事業を受注したというニュースだ。
赤道ギニアはアフリカ第3の産油国であり、資金は豊富だ。この事業はテオドロ・オビアン・ンゲマ・ンバソゴ大統領が直接推進しており、同大統領は将来的に、アフリカを網羅するネットワークの構築を目指しているという。
アフリカでは現在、北朝鮮の李スヨン外相が友好国を歴訪中であり、これまでに赤道ギニアとナミビアを訪れた。ナミビアには北朝鮮の武器商社の要員が常駐しており、「秘密裏に弾薬工場を建設している」との情報もある。
このようにアフリカには、北朝鮮と軍事的に深く結びついた国が多く、国連の制裁決議も「どこ吹く風」だ。第4次中東戦争の際に北朝鮮が空軍パイロットの「助っ人」を送ったエジプトも、国連制裁に協力的とは言えない。
北朝鮮とアフリカ諸国の関係の深さをうかがい知るエピソードがある。ある韓国人がビジネスでアフリカ某国を訪れたところ、相手のアフリカ人から「金日成(キム・イルソン)将軍」について聞かれた。アフリカ人からすれば、南北朝鮮の違いもわからず「コリア(korea)といえば金日成」という強烈なイメージを持っており、そのことに当の韓国人はショックを受けたという。
それにしても、北朝鮮のアフリカ・ビジネスと言えば、従来は武器取引や、独裁者のための豪華な宮殿や銅像の建設と相場が決まっていた。
北朝鮮が赤道ギニアを足場に、今後どのようなITビジネスを展開するのかが気になる。
日本ではこうした情報を主要メディアがまったく報じず、日米韓が対北制裁を行えば北朝鮮がいずれ音を上げるかのようにミスリードしがちだが、実態は大きく異なる。北朝鮮に圧力を効果的に加えたいのなら、中東やアフリカでの動向に関する情報の精査も必要だろう。