新聞を読まない理由、最多意見は「テレビやネットで十分」
メディアの多様化に伴い、紙媒体の新聞の相対的な優先順位は低下しつつある。現在新聞を読んでいない人は、どのような理由でその選択をしたのだろうか。財団法人新聞通信調査会が2016年10月に発表した「2016年メディアに関する世論調査結果」(2016年8月19日から9月6日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法で実施。有効回答数は3308人。有効回答者の属性は男性1568人・女性1740人、18~19歳70人・20代306人・30代460人・40代539人・50代524人・60代696人・70代以上713人)から、確認していく。
今調査対象母集団において頻度は問わず、朝刊・夕刊まで含めた新聞を読んでいる人は70.9%。さらに無回答者をのぞくと28.8%が新聞を読んでいない計算になる。
その新聞非閲読者に、なぜ新聞を読まないかに関して尋ねたところ、直近の2016年度では「テレビやインターネットなど他の情報(源)で十分だから」とする意見がもっとも大きく、74.5%に達することとなった。
次いで多いのはそもそも論として「新聞を取っていない」で41.5%。もちろん自宅で新聞を定期購読契約していなくても、通勤や通学中に購入したり、会社内や学校、図書館などで読む機会は得られるが、元々読む気概がさほどなく、積極的に行動して読む気が起きないといったところか(「新聞を読みたい」との心持ちが多分にあれば、新聞を購読している人も少なからずいるはず)。
次いで「新聞は高い・お金がかかる」が入っているが、元々新聞は有料で購読するものであることを考えると、自分が支払っても良いと考えている対価以上の価格である、読みたい気持ちはあるが支払う金額分ほどの価値は見いだせないなどが、具体的な理由だろう。
単純比較できる期間内で経年動向を見ると、唯一漸増しているように見えるのが「テレビやインターネットなど他の情報で十分」(直近年度はやや減少したが)。代替されうるメディアの有益性が漸次増加し、新聞離れが進んでいる。
もっとも、例えば「新聞を読む習慣が無い」ので「新聞を取っていない」、「新聞は高い・お金がかかる」から「新聞を取っていない」、元々「新聞を取っていない」ので「新聞を読む習慣が無い」など、複数の項目が重なって新聞非閲読者になっている可能性は多分にある。例えば「テレビやインターネットなど他の情報で十分」情報は取得できるので、新聞から得られる情報に価値を見いだせず、相対的に「新聞は高い・お金がかかる」と判断せざるを得ない。また、テレビやネットで時間を取られて「新聞を読む時間が無い」ので「新聞を取っていない」から新聞を読まない、といったパターンの人も多数いるに違いない。この辺りの連動性が多分にある問題は、複数回答形式の結果でも、推測以上の精度を持つ実情を見出すことは難しい。
回答項目のうち上位回答率を示したものについて、直近年度分に関して属性別で仕切り分けした結果が次のグラフ。
若年層はテレビやインターネットなど他メディアからの情報取得で十分であり、新聞をわざわざ読む必要が無いと考えている人が多く、新聞を取っていない・費用対効果が悪いなどの理由はそれほど多くない。しかし歳を重ねるにつれ、新聞そのものを取っていない人(=購読していない人、大よそ月極で契約していない人)が漸増する。70歳以上になると「テレビやネット情報での満足」と肩を並べてしまう。
一度新聞の契約を解除する、あるいは保護者の下から離れる際に契約しなければ、余程の機会が無い限り、新規に新聞を定期購読する機会は無い。かつての景品付きによる勧誘も今ではさほど魅力的なアプローチではなくなっている。そして年上の人ほど、新聞を定期購読している状態で「新聞はもう要らないから解約しようか」と考える機会は増えることから、歳を経るに従い「新聞を取っていない」の回答率が高まるのは当然かもしれない(60代以降はやや値を落とすが、高水準には違いない)。
現時点では新聞を閲読しない人のうち、60代までは主にテレビやインターネットの情報で十分で新聞を読む必要が無いとする人が過半数を占めている。50代以下に限れば3/4を超えている。今後さらにインターネットを利用する人が増えるに連れて、テレビやインターネットの情報で十分だから、紙媒体の新聞を取らない人も増えていくと考えられる。
もっともインターネット経由の情報は多分に、新聞社自身も配信しており、内容的に「紙の上に刷られたもの」か「インターネット経由で見る」かの違いでしかないとの考え方もある。是が非でも紙媒体としての新聞を売り続けたいのなら話は別だが、情報そのものの対価を新聞社が求めたいのであれば、テレビやインターネット経由で「紙媒体としての新聞」ならぬ「新聞に掲載されている情報をインターネット経由で」売る施策、一番の具体例かつ現時点ですでに複数社が実施している有料の電子版の展開を、これまで以上に積極化する必要があるのかもしれない。
もちろんインターネットを用いて情報を取得する人たちは、無料で情報の提供を受けるスタイルに慣れている。紙媒体の新聞読者以上に、情報に求める対価の判断基準はシビア。紙媒体の新聞と同じような路線、発想、方針、品質で同等の対価をインターネット経由の読者に求めていたのでは、多くの人が見向きもしない。
実際、多くの新聞社において、有料電子版の読者増加分では、紙媒体版の減少分を補えていない。より厳しい品質チェックと自らを律する心構え、さらには価値を見出してもらえるような仕組み・工夫・努力が求められよう。
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