参院選東京選挙区・激戦の10候補を市区別得票数でグラフ可視化してわかった地域別の傾向(市部)
参院選・東京選挙区の振り返り記事として公開した「参院選東京選挙区・激戦の10候補を市区別得票数でグラフ可視化してわかった地域別の傾向(23区)」に多くの反響をいただきました。前回と同様、当落問わず全体順位上位10人の市部での傾向についてもみていきたいと思います。
得票総数上位10名の自治体別順位
上記のグラフは、東京都選挙区の全体順位1位〜10位(うち6位までが当選)の候補者が、市部の各区で何位だったかを表した図表です。市によって候補者の順位が大きく異なることがわかります。前回同様、このグラフですと、各候補者の特徴までは掴みきれないと思いますので、各候補者の特徴をみていきたいと思います。
得票総数上位10名の候補者別解説
それでは、全体順位の高い順に、候補者別の地域傾向についてみていきます。
1位 朝日健太郎(自民党)
市部でも1位をキープしたのは、朝日健太郎氏でした。23区と同様、すべての市で1位もしくは2位と圧倒的な差をつけています。2位となったのは八王子、青梅、小平、東村山、福生、東大和、清瀬、武蔵村山、多摩、あきる野であり、西武戦沿いなど都北部に多い印象です。23区の節でも触れましたが、特定の市で順位を大きく落とすようなことがなかったことから、やはり地域による「区割り」などが行われた形跡は見当たりません。
2位 竹谷とし子(公明党)
市部でも2位は、公明党公認の竹谷とし子氏でした。23区と同様、市部でも得票傾向は大きくバラツキがあり、創価大学などがある八王子のほか、青梅、小平、東村山、福生、東大和、武蔵村山、あきる野で1位をとっており、朝日健太郎氏が1位を取れなかったところの多くを竹谷氏がとっていることがわかります。
一方、東京18区を構成する武蔵野市や小金井市では当選圏外の7位以下に大きく沈みました。また、国立市、狛江市、多摩市などでも5位となるなど、地域差がしっかり出る傾向にあるといえます。
※3位 蓮舫氏(立憲民主党)
東京都選挙区のうち、市部の得票数では、立憲民主党公認の蓮舫氏が3位となりました。全体の順位では4位ですが、日本共産党公認の山添拓氏と市部の得票数では逆転したことになります。蓮舫氏の支持が23区よりも市部の方が強いとの見方もできます。23区では1位となる区が無かったものの、市部では多摩市で1位をとったほか、東京18区を構成する武蔵野市や府中市、また大票田である町田市などで2位をとりました。
※4位 山添拓氏(日本共産党)
日本共産党の山添氏は、市部では4位でした。清瀬市では1位をとったほか、複数の市で2位となりましたが、大票田である八王子市や町田市では4〜5位となっています。中央線沿線や多摩東部では強いものの、多摩西部などでは比較的弱い構図がわかります。
5位 生稲晃子氏(自民党)
東京都選挙区5位当選の生稲晃子氏は、市部でも5位でした。グラフからわかるように、1〜4位の候補と異なり、市部では1位も2位も取れていません。また、大票田である町田市では当選圏外である7位に沈む結果となりました。多摩地区でも精力的に活動をしていましたが、結果として上位(3位)となったのは比較的人口の少ない市に限ったことも、5位となった結果の要因とみられます。ただし、23区と同じく3〜7位におさまっていることからも、一定の平均的な票は取れているともいえます。
6位 山本太郎氏(れいわ新選組)
山本太郎氏は、市部でも平均的に6位の票を取りました。特に三鷹市では市部唯一となる4位をとったほか、調布市や武蔵野市、小金井市で5位を取ったのは同等所属の櫛渕万里氏の影響があると考えられます。大票田である町田市でも5位を確保したのが総得票数にも影響しているでしょう。一方、多摩西部にいくと全体的に6位の市が多く、支持層に東高西低のゆるやかなグラデーションがみられます。
7位 海老沢由紀氏(日本維新の会)
次点の海老沢由紀氏は、市部の多くで7位でした。23区では都心3区で2位を確保するなど善戦していた一方、稲城市で特出して4位となったほかは、大多数の市部で7位だったことからも、日本維新の会の東京における人気が23区に極端に集中していることがわかります。市部での人気をどのように上げていくかが今後の課題となるでしょう。
8位 松尾明弘氏(立憲民主党)
全体では8位だった松尾氏ですが、武蔵野市で4位と検討したのは党最高顧問の菅直人氏のバックアップがあったからでしょう。選挙期間中も何度も応援に入っていたことなどの影響が、小金井市(6位)などにもみられます。一方、その他の選挙区では大多数が8位だったことなどから、菅直人氏のバックアップも限定的な効果しかなかったようです。
9位 乙武洋匡氏(無所属)
全体9位の乙武洋匡氏ですが、わずかに調布市で8位だったほかは、市部では9位もしくは10位と低迷しました。都心3区や渋谷区などで7〜8位を確保していましたが、市部まで支持を広げられなかったことが得票数を伸ばしきれなかった要因といえます。短期間での選挙戦となると、候補者や陣営が区部にリソースを傾注する傾向がみられ、乙武氏に関してもそれがいえるでしょう。
10位 荒木千陽氏(ファーストの会)
最後に、全体10位の荒木氏です。都議選で定数1を都民ファーストが制した青梅市や昭島市で7〜8位を確保するなど、都民ファーストが強いと呼ばれる「青梅線沿線」では得票を伸ばしていますが、一方多くの市部で10位となったことからも、人気を浸透させることが難しかったことがわかります。地元選出の(都民ファースト所属)都議会議員との連携もあったはずですが、多摩地区でも厳しい結果となりました。
ここまで、市部における1〜10位の候補者の得票傾向をみてきました。多摩地区でも東西でゆるやかなグラデーションがあるほか、大票田である町田や八王子で票を伸ばせたかどうかが全体の得票にも影響を与えたことが分かります。「参院選東京選挙区・激戦の10候補を市区別得票数でグラフ可視化してわかった地域別の傾向(23区)」と比較して、各政党や候補の地域別特徴をさらに分析してみても面白いかもしれません。
本文中の図表については、東京都選挙管理委員会のホームページにて公開されている情報をもとに、ジャッグジャパン株式会社で制作を行った。なお、図表の制作にあたっては、Flourishを利用した。動的なグラフはFlourishのサイトで確認することができる。